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紙の本
天地人、丸ごと飲みこめ
2002/05/16 21:33
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鳥居くろーん - この投稿者のレビュー一覧を見る
かの有名な三国志。しかし、ねじまげられた歴史物語である三国志演義とは対称的に、ダイナミックにそして時に残酷に、野暮ったい倫理などとは無関係に生き抜く英雄たちの姿を描きだす。主役は魏をうちたてた曹操。彼は古い体制や価値観を破壊しつくし、その屍の上に新時代を築いていく。
今までの固定された観点から見た三国志に見慣れたものにとって、新鮮味がある。特に、演義では悪役だった曹操の生き様。ある時は苛烈に、残酷に、またある時は優雅に、艶めかしく、乱世を彩っていくその英雄の生き様は、まさに破天荒であり、日本では織田信長に通じるものがある。
人物をキャラクター化しつつも、それを一個の人間として巧みに表現しているのも見事。器がでかい以外は役立たずの劉備、曹操の右腕・夏侯惇、生粋の軍師・郭嘉、あるいは純粋戦士の呂布、淫猥な孔明、などなど。それぞれの生き様に、つい憧れてしまう(ただし孔明は除外)。
「曹操が途中で変化し、それに多少の違和感がある」との声も聞くが、そんなことは無視。そういうチマチマした事を言っていては乱世では生き残れない。とにかくこの雄大さだけをひたすらに飲み込め。曹操のように、劉備のように、丸ごとたいらげてしまえ。……問題はこのマンガがどうであるかではなく、あなたが何者であるか、なのだ。
紙の本
歴史を駆けた龍達を壮大なスケールで書いた傑作
2002/07/30 11:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イスタンブール - この投稿者のレビュー一覧を見る
これまで多く漫画化されてきた三国志である。が、なんとこの作品は多くーあるいは全てーの作品で暴虐の王、悪、と称されてきた曹操孟徳の話である。
本作は例えば横山光輝の三国志のように一つ一つの小さな出来事まで追ってゆくのとは異なり、黄巾の乱、泗水関、官都大戦等の代表的な事件でもって時代を生きた龍達を書いている。
さて、曹操の話と書いたが曹操個人を描いた話かと言うとそうではなく彼と共に生きた多くの豪勇達のうえに立つ人物としての曹操孟徳のスケールー時代にとって曹操とはなんだったのかーとゆう問いそのものを書いた作品と言える。
この作品のもう一つの魅力はマンガとゆう媒体を最大限にいかしたあまりに豪快かつ爽快な描写の数々である。例えば十巻では曹操と絶世の美女雛氏とのセックスシーンが書かれるのだがその描写たるやただ単に股を重ね合わせるだけでなく雄大な宇宙の海を泳ぎながら時に赤子に返り時に一つに溶け合い時に孟徳が黒い風となり雛氏の膣に吹きこんでゆく等一つ間違えば下品になるところを下品どころか果てしもない爽快感でみせるのも本作の大きな魅力である。ただ官都大戦の後は相棒イハギンさんの死もあってかアクションマンガのようになってきた感がありまた死にゆくもの達を書かなければならないためか作品全体の流れが薄れてきたのが残念ではある。
決して歴史を正確に書いたものではないが三国時代にいきた多くの龍達のスケールを味わいたいなら本作は最高の作品である。
紙の本
破格
2002/03/10 00:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エリック@ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までアフタヌーンなどでも活躍していた著者だが、歴史ものは今回が初の試みではないだろうか。
最近はあまりに日本人にも馴染み深い「三国志」であるが、本作では今までとは違った感覚で描かれている。漫画の三国志というと、横山光輝三国志が有名であるが、実は他にも少年誌などで度々連載されている。「タイムトラベラー・SFモノ」「読み切り」などなど、皆さんも目にした事があるだろう。それぞれの作品で、オリジナルの三国志演義をモチーフにオリジナリティを出そうと奮闘しているのであるが、形が既に出来上がっているためか、少なくとも少年誌ではなかなか上手くいっていないようだ。
蒼天航路が他の作品と最も違うところはなにか。第1巻を読めば一目瞭然なのだが、主人公に曹操を据えているところに最も差異があるといえるだろう。勿論、三国志自体、「物語の主人公は曹操なのではないか」という程、元々物語の大きな要ではあるのだが、大抵の作品は「劉備正義・曹操悪」の如き勧善懲悪な作品に仕上がっているため、読み手の意識もその様に固定しがちだ。蒼天航路は、今までの常識にとらわれないという意味で「破格」な作品といえるだろう。
ただ、本作品は現在も刊行されつづけており、主人公・曹操が既に壮年の域を出ているのだが、流石に後半の話からはパワーダウンを感じる。個人的には、「天子の奉戴」までが話としてのピークで、袁家が滅びた後の話は、かなり読みづらい印象を受ける。上手く表現できないのだが、「曹操らしからぬ曹操」のような人物になっていて、物語の序盤とずいぶん異なっている気がする。面白いには面白いのだが、その質がずいぶんと変容しているのではないか、とも感じた。
ともあれ、良作ではあるので、出来るだけ長く、それこそこの際曹操が死ぬまで物語を綴って欲しいものだが、なんだか著者からはそろそろ終わらせるかのようなことを匂わす発言も…。打ち切り漫画が後を絶たないご時世ではあるが、面白い作品はなるべく続いて欲しいと思う。たまに、人気のせいで惰性的に物語を繋げる作品もあるが、蒼天航路はそうはならないだけの魅力を持っているのだから。
三国志が好きな人に、特に曹操好きの人には蒼天航路はたまらないのではないだろうか。また、「三国志」に食い飽きている人も、たまにこんな三国志もあるんだなぁ、くらいの気分で読んでいただければ、楽しめるのではないだろうか。相当に個性の強い人物達が、作品の中で待ちうけている事は間違いない。