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- カテゴリ:一般
- 発売日:2001/11/30
- 出版社: 新潮社
- レーベル: CREST BOOKS
- サイズ:20cm/318p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-10-590027-7
紙の本
パリ左岸のピアノ工房 (Crest books)
魔法のようにピアノを再生する若き職人。工房の扉から垣間見える、深い深いピアノの世界。その工房には、人とピアノの不思議に懐かしい出会いがあった…。鍵盤の感触が甦る、ちょっと...
パリ左岸のピアノ工房 (Crest books)
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商品説明
魔法のようにピアノを再生する若き職人。工房の扉から垣間見える、深い深いピアノの世界。その工房には、人とピアノの不思議に懐かしい出会いがあった…。鍵盤の感触が甦る、ちょっと切ないノンフィクション。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
T.E.カーハート
- 略歴
- 〈T.E.カーハート〉アイルランドとアメリカ二つの国籍を保有。イエール大、スタンフォード大で学ぶ。大手コンピュータ会社勤務等を経て、50歳を期にフリーライター・ジャーナリストへ転身。
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著者/著名人のレビュー
ピアノと、音楽と、自...
ジュンク堂
ピアノと、音楽と、自分自身への飽くなき好奇心が生んだ、まるで音楽の
ような物語。
友情を育む中で、著者は自分のピアノを探す難しさと素晴らしさを知って
しまいます。奏後に弦が滅茶苦茶に絡むほどピアノが楽器として未完成だった
時代の話、創造の魔法がどのように伝達されるかが垣間見れるレッスンの話・・。
村松潔氏の翻訳も素晴らしい。
紙の本
250キロのピアノをたった一人の男が背中に括りつけ、階段を上っていく。盛り上がる筋肉、食い込むストラップ、充血する顔。作業が終ったところでは、読んでいるこちらまで一息つきたくなる。
2003/11/09 19:21
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回はピアノを扱った二つの話について書く。初めは、パリを舞台にしたノンフィクション。もう一つが、19世紀末のビルマを舞台にした物語だ。で、実はこの二つを並べて語ろうとは、あまり考えていなかった。確かに、どちらにも同じピアノが出てくる。エラールである。といっても、私はこれらの本を通じてはじめて知った名前で、以前から知っているのはスタンウェイかベーゼンドルファー、そして日本のヤマハくらいのものだから、これを論じようなどという気はさらさらなかった。
結局、私を踏み切らせたのは装丁である。今回取り上げる本は、ある意味日本の海外小説の叢書として質量そしてデザイン共に最高のクレストブック。そして、次回取り上げるのが、そのデザインをパクッたとしか思えない、他社の本だからだ。いやそれは外観だけではない。小説の質の高さも、本家を凌ごうかというレベルの高さなのだ。しかたない、お得意の連続書評でいくか、そうしよう、ということになった(夢枕獏風で)。
何がと言って、ピアノほど好きなものはない。そこから生み出される音の響きもだが、ピアノそのもののスタイルが好きだ。あの女性の身体を思わせるなんともいえない曲線、ましてそれが木目を見せるような、たとえばチェンバロふうなものとなったら、その美しいこと。勿論、演奏するピアニストにも憬れる。だから、就職して貯金が出来た時、何も考えずに木目の美しい新品のピアノを買いに行った。当然というか、今では実家で机替わりになっている。
この『パリ左岸のピアノ工房』、英語の副題は、パリのアトリエの隠れた世界。ピアノを愛する著者が出会ったフランスの職人との心の交流を描く身辺雑記とでもいうのだろうか。サド・カーハートはアメリカ人、コンセルヴァトワール音楽学校の地区から遠く離れたカルティエに住むフリーランスの物書きである。
幼稚園への子供の送り迎えのときに〈デフォルジュ・ピアノ 工具と部品〉という店を見つけたことが始まりだった。近所の人も知らないような小さな店。そんなところに何度か通ううちに職人リュックが案内してくれた奥の部屋。そこは世界各地で造られた何十台もの古いピアノが解体され、再生を待つ工房だった。
スタンウェイ、ベーゼンドルファー、プレイエル、メイソン・アンド・ハムリン、イバッハ、ベヒシュタイン、ガヴォー、エラール、スピネット、ヤマハといった有名な製品から、ザウター、フォック、フリンケン、リス、シンドラー、クリーゲルシュタインといった無名の会社のものまでがひっそりと出番を待つ様子は、いかにも文化を大切にするヨーロッパだ。
店を引き継いだリュックが「あなたにふさわしいピアノがやっときた」と見せてくれたシュティングルのベビー・グランド。アップライトを探していたカーハートが、30年代に作られたピアノに触れているうちに、惹かれ、欲しくなっていく様子が手にとるように分る。そのピアノが彼の家に運び込まれるところが圧巻だ。250キロのピアノをたった一人の男が背中に括りつけ、階段を上っていく。盛り上がる筋肉、食い込むストラップ、充血する顔。作業が終ったところでは、読んでいるこちらまで一息つきたくなる。
パリでは住宅事情の関係でアップライトの方が、人気があり値段も高く、新品のスタンウェイのライバルは20〜30年代の黄金時代に作られたスタンウェイの再生品であるという事情、ピアノの構造から、世界最高のピアノと言われるイタリアのファツィオーリ、その工場見学の様子とあふれる音、オランダの調律師ジョスとの付き合いまで、ピアノに纏わる話が満載。
タニヤワ アヤコのシンプルなイラストを配した新潮社装丁室のブックデザインが抜群である。ピアノだけではなく、パリに生きる人々の生活を読む本かもしれない。
紙の本
美しい夢のような物語と思って読み進めていたら、途中でノンフィクションだと知ってびっくり。弾く人、教える人、集める人、調律する人、修理する人、運ぶ人——それぞれにとってのピアノとの情交。
2002/05/23 10:37
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
奇人が好きなので、中村紘子さんのエッセイ『ピアニストという蛮族がいる』にある通り、変人の宝庫であるピアニストという種族に惹かれる。だから、ピアノ曲をよく聴いている。
父親を違えて何人もの子を成すアルゲリッチ、演奏会をやめて録音だけに集中したグールド、花束を受け取ってもニコリともしない厳格なバックハウス、ジャズメンとの共演や平服での演奏会で有名なグルダ、飛行機嫌いで日本まで列車と船でやってきたリヒテルなど、その強烈で魅力的な個性のありようは、演奏を越えてファンを楽しませてくれる。
この本に登場するピアニストたちは、そのような高名なプレーヤーたちとは異なり、家庭にピアノを持ち込み、生活を音楽で豊かに満たそうという市井の人びとである。著者のカーハート自身もそんななかのひとり。カリフォルニアでメディアコンサルタントとして活躍したのち渡欧、コンピュータ関係の仕事をした後、ジャーナリストに転身したという経歴をもつ。セーヌ左岸で暮らし、その場所に魅せられながらピアノに再会するのだ。
このカルチェ(地区)がどれだけ多くの作家や芸術家をひきつけ、フランスの政治を動かす原動力になったかということは、ロットマンの著書『セーヌ左岸』に詳しい。エルスケンの写真集、犬養道子氏のエッセイなどでも知られている。だから、『パリ左岸の〜』より『セーヌ左岸の〜』というタイトルの方がよかったという気もしないではないのだけれど…。
話が「個性」からだいぶズレてきてしまったが、これはある意味、市井のピアニストたちによる自分の個性に似合ったピアノさがしの記録とも言える。
子供たちの幼稚園の送り迎えの途中で目に留めた<デフォルジュ・ピアノ——工具と部品>という訳のわからない小さな店が、幼いころにレッスンを少し受けただけの著者を、ピアノと再会させる入り口となる。
何種類かの木管楽器を扱ったことがありながら、楽器がもつ個性ということについて私は深く考えるに至ったことがなかったけれど、この店の奥、立ち入りを許された者だけに広がる、各々に美しいフォルムと響きをもつピアノたちが立ち並ぶ姿の描写にはただ、ただ圧倒される。
演奏家同様、あるいはそれ以上の個性をもつ楽器たち。リュックという、若くも奇跡的な腕や耳をもつ修理職人の店に集められては、売られていくピアノたちの運命の物語にも読める。
弾く人ではなく、ピアノに関わるあらゆる人びとが登場することがまた、この記録の大いなる滋味である。新田次郎の『強力伝』よろしくピアノをひとりで担ぎ上げて階段をのぼる運搬人のわざに驚かされたり、世界最高のピアノを作り出すために技術や美学や木材さがしを究めたファツィオーリ氏など。
そう、人もこえて、森で何百年か過ごしたのちにピアノに生まれ変わる樹木にまで話は及び、ピアノの内部に密かに刻まれた文字の不思議や調律というものの奥義にも触れられる。ピアノを中心に据えた、もうひとつの宇宙の物語にも読める。
この流れだけでも素晴らしいのに、いくつかの夢のピアノが出現したあと、ピアノが愛のシンボルとして幸せなカップルを生み出すラストも用意されている。やはり、これが半分だって、ノンフィクションだとは思えないのだけれど…。
紙の本
ノンフィクションだが小説の世界へ
2017/02/27 12:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kobugi - この投稿者のレビュー一覧を見る
工房に並ぶビアノの描写がリアルで、音の響きが伝わってくるようだ。その人にふさわしいピアノとは、まるで『風の影の谷』の図書館の本のごとく、モノが人を選ぶ、そんな気持ちになった。自分のピアノが一層愛おしく思われ、きっちりレッスンしよう、読後、心からそう思われた。
紙の本
面白い
2015/08/31 19:47
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Renato - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピアノを愛する作者の心情が綴られ、色々なピアノに纏わるエピソードが大変興味深かった。
紙の本
ピアノは家族の一員
2002/02/16 01:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mau - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分のピアノを手に入れる、というのは、新しい家族を迎え入れるのと同じことなのかもしれない。ピアノが家族になる、というのは、思い出がいつだって音楽と一緒になって立ち上ってくることなのかもしれない。そんな気持ちにさせてくれる、心温まる話。
パリに居を構え、妻子との生活も落ち着き、昔好きだったピアノをもう一度習おうかと考えていた著者の前で開かれた、小さく謎めいた工房の扉。そこで出会った若き職人リュックに導かれて知るピアノの、そして音楽の新しい世界。
年代ものの高価な楽器でなくても、一台一台に個性があり、物語がある。工房へやって来るのは、何らかの理由で持ち主が手離さざるを得なかったピアノ達だ。そこには悲しい別れがあり、また著者のように喜ばしい出会いもある。
「時は流れ、ピアノもわたしたちと同様にすり減っていき、ときには運命の渦に巻き込まれて破壊される。わたしたちはやりなおしができるし、いい楽器さえ見つかれば、音楽の世界への道はふたたびひらかれるだろう。けれども、この巨大な木と鉄の塊がわたしたちにさまざまな思いを呼び起こす力は、ひとつひとつの楽器の中に宿っているのである。」(p.194)
楽器という「うつわ」に託して語られる音楽への愛情は、具体的で気取りがない。工房に集まってくる人達も、なんとも個性的で良い感じだ。今宵も修理中のピアノの山を肴に、密めやかな会合が開かれているのだろう。
紙の本
編集者コメント
2001/12/27 13:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:北本壮 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は昨年カナダの出版社より刊行されたノンフィクション作品です。パリに住みついたアメリカ人の著者が、再びピアノを弾いてみようと入っていった街角の小さなピアノ店(実はその店の奥には広大なアトリエがあり、そこでは中古ピアノの再生が行われているのですが)で、ひとりの若い職人に出会い、交流を深めていく中で、忘れかけていた音楽への愛情を取り戻していく体験をつづっています。閉鎖的なパリの地元会社に徐々に溶け込んでいきながら、ピアノへの愛情に溢れた「哲学者」にして「商売人」のピアノ職人、リュックとの友情を育んでいく様子を描く著者の筆致は、ノンフィクションといいながらも小説のような詩情を湛え、独特のノスタルジックな雰囲気を醸し出しています。
スタインウェイ、エラール、ベヒシュタイン、ベーゼンドルファー、ヤマハ、ファツィオーリ……などなどの名器が次々に登場し、その魅力が紹介されるとともに、家にあった無名の、思い出のピアノがどのような運命をたどるのか、或いはピアノに関わるパリの職人たちの様子や調律の繊細さについて、音楽教育のありかたやピアノそのものの歴史にいたるまで、著者のピアノへの興味が導くままに、次々と紹介されるエピソードの数々は著者のピアノへの愛情がひしひしと伝わってきます。ピアノを弾いたことがある人はもちろんのこと、ピアノに触れたことがない人にも「ピアノを弾きたい!」と思わせるだけの力がある作品と信じております。
わたくしごとですが、担当編集者である私もピアノを習っていたことがあったのですが、本書を初めて読んだときは、いてもたってもいられずに、今や写真立て置き場と化した実家のアップライト・ピアノの前に座り、一時間ほどピアノの音と感触に没頭してしまいました。習い事の一環として、ひと通りのレッスンしか受けてこなかった私であっても、これほどまでに音楽のある生活、ピアノの音色というものが、自分にとって重要な「一部」だったのか……と不思議な、深い驚きにうたれた思い出深い作品でもあります。
紙の本
パリ左岸のピアノ工房
2002/02/19 22:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:伊藤竜太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ピアノと言えば、思い浮かぶのは黒い物体。グランドか家庭用アップライトの2種類。それがふつうだ。メーカーは国産ならヤマハかカワイ、輸入ならスタインウェイ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインなど、数えても両手の指では余る。
でも、ほんの100年前には状況はまったく違った。スタインウェイよりも軽いタッチで繊細な表現を得意とするプレイエルやエラールといったフランスのメーカーが健在で、コルトーもそういう楽器を弾いていた。フランス・イギリス・アメリカ・ドイツなど各国の様々なメーカーがそれぞれに個性を持って、美しい木目に彩られた魅力的なボディと独特の音世界を人々に与えてくれていたのである。だが時代は画一化の一途をたどり、心のひだを映し出す繊細さが求められなくなった結果、コンサートホールで見かけるピアノの種類は著しくバリエーションに欠くのが現状だ。
しかし、ヨーロッパには今でも伝統の息吹が残っていて、アンティーク家具のように、19世紀の終わりに作られたスクエアピアノ(テーブル型の小型ピアノ)に出会うことが多い。そしてさらにその世界に踏み込んでみると、ありとあらゆる色のあらゆる形の個性豊かな、日本では名も聞いたことのないようなメーカーのピアノの数々が、街角の小さな店のアトリエで人知れず誰かを待っている。そんな素敵な楽器たちの呟きやら嘆きやら、あるいは叫びや歌声が溢れ出て来るような本書からぜひ、文化の息吹を感じ取ってほしい。
(伊藤竜太/フリーライター)