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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.11
- 出版社: 岩波書店
- サイズ:20cm/264,23p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-00-002393-4
- 国内送料無料
紙の本
ヨーロッパ覇権以前 もうひとつの世界システム 上
著者 ジャネット・L.アブー=ルゴド (著),佐藤 次高 (ほか訳)
近代成立のはるか以前、ヨーロッパから中東、中国に至るユーラシアの陸海は、すでにひとつの世界システムをつくりあげていた。西洋中心史観を覆し、広い視野と豊かな筆致で描き出す新...
ヨーロッパ覇権以前 もうひとつの世界システム 上
紙の本 |
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- 税込価格:6,160円(56pt)
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商品説明
近代成立のはるか以前、ヨーロッパから中東、中国に至るユーラシアの陸海は、すでにひとつの世界システムをつくりあげていた。西洋中心史観を覆し、広い視野と豊かな筆致で描き出す新しい全体史、待望の邦訳。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ジャネット・L.アブー=ルゴド
- 略歴
- 〈アブー=ルゴド〉1928年ニューヨーク生まれ。ノースウェスタン大学および新社会研究学院名誉教授。専門は都市社会学・都市史。
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紙の本
スケールの大きな見方
2002/01/25 23:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MF - この投稿者のレビュー一覧を見る
西洋諸国がアメリカ新大陸やアジアに進出する前の世界の状況を、従来のヨーロッパ中心史観を排して描いた作品。東西の当時の主要都市を個別に選び、その盛衰を通して、背後にある世界的な動きを浮き彫りにするという手法は、都市社会学・都市史専攻の著者ならではである。
話は西から東に向かい、上巻ではシャンパーニュの諸都市、ブリュージュ、ヘント、ジェノバ、ベネチア、サマルカンドなど中央アジア諸都市、バクダッドを扱う。
紙の本
紙を切ったのは上の刃か下の刃か?
2002/06/24 17:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
「16世紀以降の近代世界システムの成立は、「西欧の興隆」なのか、「東洋の没落」なのか」。
従来(といってもタイムスパンをどれくらいにするかで変わるかもしれないが)、この問いに対しては、西欧の興隆であるとする見方が太宗をしめていたことになるのだろうか。近時では、西欧中心史観、要は「西ヨーロッパは偉かった」という歴史観を超克しようとする論考が盛んであるが、本書『覇権以前』もその列席に連なることになろう。本書『覇権以前』では、あえて言えば、東洋の没落であったという立場にたっていることになる。要は、ユーラシア大陸に当時成立していたいくつかの経済システムが機能不全に至り、その隙間を埋めたのがポルトガルであったということになる。
とすると、次に解明すべきは、なぜ「隙間」ができたのかということになる。
本書では、13世紀から14世紀の世界システムの一翼を形成した中国を起点とする内陸アジアルートと東南アジアの航海ルートが衰弱したことが、このヨーロッパ覇権以前に存在していた『世界システム』を退行させた理由だとされている。
しかし、内陸アジアルートが、モンゴル・ウルスによる緩やかな統一の消滅後、明と北元の対立により途絶したという歴史の流れはある程度理解できるものの、南方の航海、明帝国海軍が縮小・撤退してしまった「理由」は不明瞭になっている。全般的な中国経済の停滞(その原因の一端は内陸ルートの途絶にもとめられる)のせいであるとされているようであるが、些か腑に落ちない。
東洋史学の泰斗、宮崎市定は、その著書『大唐帝国』において、中国経済の大きな景気循環を指摘している。その中では、明朝期を経済の停滞期であると指摘している。その原因は、貨幣流通量の急激な減少であるとし、その理由は大規模な銅銭の流出と「紙幣」制度の衰退に求めている。この論の当否は別にして、このような中国経済衰退の根本原因のようなものを期待するのは、要求水準が高すぎるのだろうか。
ただ、その原因論は色々あるかもしれないが、最終的には15世紀初頭の「世界交易システム」に空虚ができ、そこを埋めたのがポルトガルであるとするならば、やっぱりそれをアジア諸国は奪還できなかった(現在奪還しつつあるのかもしれないが)のであるから、西欧諸国は偉かったのではないだろうか。そう考えると、西欧中心史観を脱却するというのは、どういうことなのだろうかと思ってしまう。
「紙を切ったのは、ハサミの上の刃か下の刃か」この問いは、良く愚問の代表例として引き合いに出されるが、冒頭の問いも同じ類のものかも知れない。とてつもなく興味深い著述ではあるのだが、何となく疑問がさらに深くなってしまうというのが、本書の読後感である。
紙の本
「大航海時代」以前、13,14世紀ユーラシアの世界システムを再構成する
2002/02/04 18:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西欧の覇権によるグローバリゼーションは、15世紀のポルトガルによる大航海時代の幕開きに始まる。が、それ以前のユーラシア大陸は、けっして西欧を中心に動いていたわけではない。ヨーロッパ人は、確かにモンゴルの政治的侵攻に恐怖していたのだし、科学でもイスラーム文化に圧倒されており、技術面でも中国に遅れをとっていた。それでは、どうして西欧世界が世界の覇権を掌握するようになったのか? そもそも大航海時代以前の世界システムはどうなっていたのか? この問題に挑戦したのが本書にほかならない。ブローデルの16世紀地中海世界に関する大著、ウォーラーステインによる近代資本主義世界システムの誕生に関する種々の著作に劣らぬ本格的著書がここにあるのである。
本書が歴史的探究の俎上に上せようとするのは、地中海世界、イスラーム世界、インド、元・明時代の中国というように極めて広範である。モンゴル族が支配していたユーラシア大陸だけではなく、インド洋、東南アジアを取り巻く海をも、考察の射程に収めている。著者の結論は、西欧人が優れた航海術を我がものとして、アフリカ、インド、大西洋に乗り出す以前に、ユーラシアの南方の大洋を独占的に支配する文明共同体はすでに存在せず、その空白地を埋めるかのように、ポルトガルやスペインは易々とこの大洋へと乗り出して行けたというものである。とくに、元の後を継いだ明朝中国は、疫病禍と経済的困難で南の海へ乗り出すどころではなかったのだという。
世界史記述のヨーロッパ中心主義がよく指弾の的になる。しかし、本書ほど具体的に西欧覇権以前の歴史の実像を明確に描き出した書物は稀である。本書の著者が利用している中国史の史料は原典からのものではないので、「極東」の島国にいるわれわれが同様の歴史の再構成に挑み、成功できる可能性は高い。グローバリゼーションの世界史的意味を占うには、欧米中心主義史観では不十分である。刺激的な本格的歴史書の登場として、多くの読書子に本書を薦めたい。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2002.02.02)