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商品説明
多種多様なレンズには、人類と同じような民族性や地域性、果ては製造番号ごとの個性すら感じられる。すべてのレンズに神は宿り賜う、という著者が作品を多数交えつつレンズの世界を紹介。『日本カメラ』連載を中心にまとめる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
飯田 鉄
- 略歴
- 〈飯田鉄〉1948年東京都生まれ。写真家。87年度日本写真協会新人賞受賞。歴史的建築や都市環境の撮影を主とする。カメラとレンズに関する著作も多い。著書に「横浜建築百景」「神奈川の橋」など。
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紙の本
悪いレンズは良いレンズ?写真表現が解放された時代のカメラレンズ論
2002/01/23 18:15
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投稿者:中川道夫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カメラブームの熱はまだ冷めそうにない。中古カメラの人気にも根づよいものがある。写真撮影のノウハウ本やメカ中心の多くの関連書がそれらを支えている。
「すべてのレンズに神は宿りたもう」というこの本はそのなかでもユニークなもの。
著者は街や建物を得意とする写真家で、いっぽう「東京カメラ倶楽部」の中心メンバーとしてアンティークカメラとレンズの効能を啓蒙してきた。この本では、じぶんの駆け出し時代からプロへと至る道中で出会ったレンズたち、それは古今東西の35ミリカメラ用レンズから、ブローニー、4×5、8×10、ハーフサイズカメラ、はてはレンズとしての虫メガネまでを、ときにはユーザーの視点だけでなくレンズメーカーの設計者の意図や苦心談をはさみ、寄席芸のような通好みの作例写真をそえて解説する。また、カメラの「ミランダ」はシェークスピアの『あらし』にでてくる魔法使いプロスペローの娘の名、子ども用カメラ「フジペット」で撮った亡き、たこ八郎のエピソードなどがさりげなく味付けされている。著者は団塊の世代であり、ここにでてくるそのレンズ遍歴史は日本のカメラレンズメーカーの戦後史でもあるのだ。
「あのレンズは良い、あのレンズは悪いという判断のほかに、あのレンズの悪さが良いという考え方もあって」と、光学上問題のあるレンズも、相応に味わいのある写真が撮れるという。著者は人類が研鑚してきた、ものをより正確に視たいという〈レンズの進化論〉を否定はしない。ただ被写体のディテールが鮮明に写り、色が忠実に再現されるレンズは良いレンズという、不可侵の進歩思想に疑義をはさむのだ。
「どこか懐かしい親和の関係を被写体と結べるようにいつも感じていた」と著者はいう。カメラレンズがより正確に写し撮るというドグマから、写真表現が解放された時代にたっている。そんなことをこの本はおしえてくれる。 (中川道夫/写真家)