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紙の本
私は敗北主義者です
2002/07/12 21:44
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投稿者:marilyn_hanson.com - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔は自分は大した努力もしないでのうのうと生きて行けると思っていた。しかし、案外、必死でしがみついていなければ振り落とされる側、淘汰される側なんだと気が付いたのはいつだったか。
住田は父親を殺すことで今まで守り続けてきた普通、を捨てた。そのときの解放感。一旦堕ちきった底から這い上がる、もともとゼロなのだから何でもできる、というモチベーションの向上を見せるが、結局それもかなわず二重に挫折しているのが救われない。「悪いやつを殺す」という住田の目的に対しては感情移入できないが、強迫観念が強まりすぎて何がしたいのが分からなくなってゆく(そして金も尽きていく)、ところに個人的な体験からも共感した。夢でのみその目的を果たしているのが悲しい。
友人は、刃物で首をかっさばいて死ぬという住田の願いがかなわず、資金が尽きるという事態で夢を放棄し、死に方も怪物に運命を委ねるという形になったのが現実的だと言っていた。きわめて現実的な敗北。人は行為に意味をつけなければやってゆけない。悪事をまったく犯さないで生きるという「特別な」ことや、悪人を殺すための旅をすることも、ネット上で猫の公開処刑をすることも結局は同じで、意味を喪失したとき人は消滅して、現実の敗北を知るのだろう。
紙の本
お前がクズなのは、全部お前のせいだ。
2002/12/13 01:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鳥居くろーん - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は皆、自分のダメさ加減を知っている。本当の自分が、救いようもないゴミであることを知っている。
にもかかわらず、人はそれに気付かないふりをする。
当然だ。不快なものには、ふたをしてしまうに限るからだ。
物欲。性欲。支配欲。あるいは、才能。プライド。小さな家族。
未来への希望。夢。
すべては、自分という小さな器からあふれ出してくる嫌なにおいを押さえこむためにある。でも、ふたがあるからこそ、こんな情けない器でも、何とかカタチを保っていられる……。
どうしようもない人間というのは、実際にいる。私も今までに何人か見た。偏見とか好き嫌いとかを抜きにしても、本当にダメなのだ。ことばは悪いが、正真正銘の「クズ」。
この話は、そんなクズたちの物語だ。
クズたちには、なんの価値もない。生きている甲斐もない。存在自体が破綻している。
「はやく死ね、クズ」。
だが、奴らは、そんな親切な忠告を聞かされても、まだ、のた打ち回りながら生きている。情けない姿をさらしながら、死にきれないでいる。
いったい、おまえらは、なんなのだ。いったい、おまえらは、なんなのだ。
かすかな希望が見えるような気がするだけなのに、どうしてそれだけで生き延びられるのか。よけいに切ないだけではないか。だから、とっとと死んでくれ。
それでも、苦しみにひきつるその顔が、急に真顔に戻って、本当のことを告げてくれる瞬間がある。そんな時私は思う。ああ、世の中は大うそつきだって。ああ、おまえは世界一偉大だって。だからこの世もクズなのだな。きっと。
自分もクズなのだと気づいたとき、とても安らいだ気持ちになれた。