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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2002.3
- 出版社: 朝日新聞社
- サイズ:20cm/262p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-02-257721-5
読割 50
紙の本
白光
著者 連城 三紀彦 (著)
なぜ人は人を殺してしまうのか? これほどまでに人間とは罪深いものなのか? 失われた幼い命、二転三転する真相。家族の交錯する思惑と悪意が招いた「救いなき物語」。【「TRC ...
白光
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商品説明
なぜ人は人を殺してしまうのか? これほどまでに人間とは罪深いものなのか? 失われた幼い命、二転三転する真相。家族の交錯する思惑と悪意が招いた「救いなき物語」。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
連城 三紀彦
- 略歴
- 〈連城三紀彦〉1948年愛知県生まれ。早稲田大学卒業。78年「変調二人羽織」で幻影城新人賞入選。「戻り川心中」で日本推理作家協会賞、「宵待草夜情」で吉川英治文学新人賞、「恋文」で直木賞受賞。
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紙の本
連城の美文で、ごく普通の人々のドラマを読んでみたい、そう思いました。人は心に闇を抱えてはいますが、それがあまりに深く誰もが、となると却って嘘っぽい
2005/10/25 20:22
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「カルチャーにかよい始めた妹から、姪を預かった姉の聡子。娘を歯科医に連れて行っている間に、姪と舅が残った家では悲劇が」推理小説。
一見技巧的な小説という印象を与えるのですが、展開にパターンがあるので、むしろ流れを楽しむ小説といったほうがいいかもしれません。人間関係のロンド、っていえば近いかな。
舅の桂造は75歳。70歳のころから痴呆が進み、戦争中のことばかり語りるようになっています。そんな舅と暮らす聡子は、6歳になる娘の佳代と歯科医に行く予定でした。そんなとき、最近カルチャーに通い始めた妹の幸子から、彼女の4歳になる娘の直子を預かって欲しいと電話が入ります。身勝手な妹の願いを、しぶしぶ引き受けたものの、どこかすっきりしないものが。
そんな折りも折り、幸子の夫の武彦から、妹の浮気の話が持ち出されました。それは彼らの新婚時代から何度もあったことだというのです。歯科医に佳代を連れて行く聡子は、少しの間だけ直子を舅に預けます。午後2時41分、家に戻った彼女は直子が姿を消していることに気付き、あわてて義弟の武彦電話をします。それが家族を巻き込んだ悲劇の始まりでした。
聡子の夫でいつも冷たい表情の立介。戦災で妻子を失い、教師であった昭代と再婚した桂造。南方の島で事件を起こしたことのある夫を見守りながら一昨年に無くなった姑の昭代。6年前の結婚式の時から妻の幸子の浮気に気付き、自殺未遂をしたこともある地味な武彦、女としての魅力を振り撒き遊びつづける幸子。最近、彼女と付き合い始めた大学生の平田。現場から立ち去った若い男。
少女の死が暴き出す、家族の心の闇。過去が甦り、愛と憎しみが交差します。憎悪の連鎖、ざわめく血。男と女の心の裏。告白が、新たな告白を生み、事件の様相は変化し、人々の心は二転三転する。その流れは音楽を聴くようで、技巧的な印象が当初はしますが、スタイルと思えば自然と心に同調することができまする。事件を追うよりは、その千変万化する人の心を読む本といえるでしょう。
いかにも連城らしい作品ですが、なにも心に闇ばかりあるのが人間ではないでしょう。たまには、普通の人のさりげない一生を、あるいは人生の一断面を、彼の美文で読んでみたいと思うのはわたしだけでしょうか。技に溺れてしまっては、話はすこしも面白くありません。そのバランスが少し崩れた印象の一冊でした。
紙の本
類型的な人間関係に期待はずれ
2002/04/21 23:11
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
連城三紀彦の作品をはじめて読んだ。実はもっと若い世代の方と勘違いしていました。
4歳の娘を嫁ぎ先の姉にあずけ、学生の彼とホテルで夢中になる好色な人妻(日活ロマンポルノ的なセンスである)。妹とは正反対でしっかりものとして成長し、物分りのよい母親になっている姉(人間関係が類型的である)はあずけられた子をボケの進みつつある舅にまかせて、自分の同じ年頃の娘を歯医者に連れていくために外出する。そしてこの留守中に幼児は殺害される。不倫の母親、相手の学生、彼女の夫、彼女の姉夫婦家族(姉、その夫、被害者と同じ年頃の娘、舅)のそれぞれがこの事件について虚実、妄想をまじえて語り継いでいく。独白のなかに叙述のトリックがある。センスが古いなと思いながら読んで、あとで昭和23年生まれと私とほぼ同世代であると知りました。それならこのクラシックな女性観もわかるというものだ。不倫の最中に子供が誘拐される、同様の設定で描かれたサスペンスに桐野夏生、直木賞を受賞した「柔らかな頬」がある。男女差をまったく意識しないで描かれた不倫するこのヒロイン。この個性はあまりにも新鮮すぎてビックリさせられるが、さすが新世代の女性作家の手による魅力的個性の誕生であった。
ところで「白光」であるが登場人物が少なくて多くを語るとネタバラシになるから控えるが、、お互いに母となった姉妹間の隠された憎悪、痴呆症の舅の心の闇、その他登場する家族のそれぞれの屈折した心理を微細に描いているが、全員が病的であり、その分、気色悪くなるストーリーである。犯人あての面白さもいまいちであった。
紙の本
連城作品では久しぶりの本格的長編ミステリ。語りの魔術を存分に楽しめる
2002/03/27 22:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:葉山響 - この投稿者のレビュー一覧を見る
連城三紀彦の小説には独白が非常に多い。登場人物たちは過剰なほど能弁に自己の心情を語る。だが、言葉を尽くして語りながらも、その独白は真実の周囲を回り続け、なかなか中心に行き着くことがない。話者が嘘をついている場合もあれば、話の核心を語り落としている場合もあり、あるいは自らの心中においての「真実」——それは客観的な「事実」と異なる場合が多々ある——を敢えて語っている場合もある。連城三紀彦が書く小説はすべからくこのような語りの魔術で成り立っている。
だから恋愛小説として出版された作品であろうと、連城三紀彦の作品は殆ど全てがミステリと呼べる内容を持つ。複雑な、奇怪ですらある人間関係、登場人物の(一筋縄ではいかない)謎めいた心情、そして連城三紀彦の幻惑的な語りが重なり合って、たとえ作品の舞台設定は平凡なものであろうとも、読み進めるうちにやがて何重もの迷宮が目の前に現出したような錯覚を覚えるのだ。
本書は連城作品では久しぶりの、殺人事件の顛末が描かれた本格的な長編ミステリであり、いつも以上に語りの魔術を存分に楽しめる、見事な作品に仕上がっている。
娘の通院の付き添いから帰ってくると、義父と留守番をしている筈の姪の姿は忽然と消えていた。数時間後、庭のノウゼンカズラの下に埋められた彼女の死体が発見される。真犯人は果たして誰なのか?
全編に亙り巧みに仕掛けられたドンデン返しの鮮やかさもさることながら、最後に明かされる真実はあまりに衝撃的なものだ。迷宮的な語りの果てに用意された最後のモノローグは、どのミステリの結末よりも凄味が感じられる。そして考えようによっては、(明言は避けるが)連城三紀彦は本書において、呆然とするような離れ業を達成していると言えるのではないか。まさに本書は連城三紀彦にしか書き得ない傑作であり、本年度を代表する作品となることだろう。 (bk1ブックナビゲーター:葉山響/ライター)