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結婚式 | 11-28 | |
---|---|---|
ノー・ユニヴァース | 29-58 | |
ドラッグとあなた | 59-82 |
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紙の本
いつかあなたに必ず会いたい
2002/04/21 18:06
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投稿者:ジュン・N - この投稿者のレビュー一覧を見る
若いときはまだ自分が何者にもなっていないから、可能性充分、未来はばら色と思ってしまう。だが、残酷にも時が“実はそうではないんだよ、そんな可能性はあっという間に夢と消え去ってしまう”ことを教えられてしまう。わかったときはもう遅い。焦る。非常に焦る。男とうまくいかない。仕事が面白くない。人生ままならない。人生やり直せないの! でも、そんなの当たり前じゃない、苦い涙も人生のエキス、焦って悩めば人間的には若いときよりグーンと魅力的になる、とエリカ・クラウスはときにやさししく、ときにシビアな友として読者に語りかけてくれるようだ。往年の大女優メイ・ウエストの名台詞は、ひとりの女性の真実の生き方が50年以上の時を経て、現代のぼくらの心に新鮮に響いてくる。
紙の本
独身女性の、自由と孤独と切なさと
2002/02/19 10:55
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投稿者:青月にじむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いわゆる、適齢期、及びそれ以降の女性たちを、シニカルな視点で描いた短編集。おかしみの裏に悲しみが隠されていたりして、登場人物たちも他人を揶揄しながら泣きそうな顔をしている、そんな描写がとても多い。
多分、ターゲットとするのはヘレン・フィールディング著『ブリジット・ジョーンズの日記』(ソニーマガジンズ) にかなり近いんじゃないかと思うのだけれど、おそらくわたしはこちらの方が断然好きだろうな(実は、『ブリジッドジョーンズの日記』は積読中)。
文章もかなり洗練されていて、無駄なものは全く無い。むしろ物足りなさを感じるほどで、余韻がいつまでも残る。何度も読み返した くなってしまう。ストーリーもかなり洒脱で、読んでいてどんな結末になるのかワクワクするし、その期待も決して裏切らない。
これを読むと、アメリカでもやっぱり結婚適齢期の問題や他人との距離のとり方など、悩みは尽きず、また、苦しむところは似てるんだなあ、と世界共通の悩みなんだと少し安心するような、暗い気持ちになるような。
裏表紙で紹介されていた「他人の夫」や「女装するもの」が、とても面白かったし印象に残った。しかし、その短編作家としての威力は、「初めての地震」で顕著だと思う。今は長編を執筆中だということで、とても楽しみ。切れのある文章と展開が、長編ではどう変わってくるのだろうか。
並みいる大作家・名著がラインナップされるハヤカワepi文庫で、日本では無名な彼女が紹介される訳も、読んで納得できる。いい作品であれば古いもの、新しいものを問わない姿勢も評価に値するんではないだろうか。
訳者の古屋美登里氏による解説は、各短篇の冒頭に引用されているメイ・ウエストの紹介と絡めて著者の趣向分析がされており、 非常に興味深いものとなっている。文句無くお勧め。
紙の本
疲れも吹き飛ばすしたたかさを味わってください。
2002/02/25 00:51
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投稿者:早川書房編集部 鹿児島有里 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本に出会ったときわたしはとても疲れていたのですが、ひとたび頁をめくったらやめられなくなってしまい、数分後にはクラウスのウィットに富んだ言葉にくすくす笑っていました。読む者を夢中にさせるパワーが、この短篇集にはあります。
どの作品も30歳前後の女性たちが、恋や仕事や家族関係で壁にぶつかりながらも、自分らしさと自由を求めていく姿を等身大に描いています。堅実な妹を小ばかにしていたのに意外な事実に目覚める奔放な姉、変わり者の女性の同僚としだいに親密になって困惑する派遣社員、義父の葬儀で出会ったパイロットとの恋に身を投じる飛行機恐怖症の女性……。
もう若さを武器にできる年齢ではないし、期待されてもなんでもうまくこなせるほど熟達していない、かといって諦めの境地にはなれない……そんな微妙な年齢の女性たちが現実に立ち向かう姿は、ときに滑稽で笑わせ、ときに切なく心に突き刺さり、おおいに共感することでしょう。
また、注目していただきたいのは、各短篇のはじめに引用されている女優メイ・ウェストの台詞。「大切なのは人生で出会った男の数じゃないの——出会った男たちの人生よ」なんて含蓄のある言葉が、つづくストーリーとぴったりマッチして効いています。そして、各短篇の終わり方がまた鮮やかで、深い余韻を残しています。笑ったり涙ぐんだりした後には、壁に直面しても負けずにしたたかにやっていこうという気にさせてくれる、元気の出る作品です。
紙の本
恋と人生につまずいたあなたは最適
2002/02/25 22:16
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投稿者:櫻井秀勳 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本でも30歳前後の女たちを描いた小説やエッセイが売れている。中でも江國香織や島村洋子、唯川恵のものがおもしろいが、この唯川恵が今回直木賞をとったのも、単なるOLの物語というより、家族をテーマにした問題提起と評価されたからだった。
『いつかわたしに会いにきて』を読むと、アメリカでもまったく同じ年頃の女たちが、恋や仕事、あるいは家族関係の壁にぶつかりながら、それでも自分を大切に生きていることや様子がよくわかる。著者のエリカ・クラウスもまったく同年代の一人だけに、この短編集の中の主人公「わたし」なのかもしれない。
最近の小説の傾向は、主人公の背景が描かれていないことだ。「わたし」がどこに住んで、どこに勤め、いくら収入があるかも、わかっていない。そんなことはどうでもいいのである。その代わり「わたし」の悩みや考え方、あるいは男と女の会話が、溢れんばかりに書かれている。
この短編集『いつかわたしに会いにきて』の主人公13人の「わたし」も、人生のもっとも深刻な時間だけが切りとられて、鮮やかに人間関係が展開されている。だから、主人公の物語というより、読者自身のいまの生活が描かれているように思えるだろう。
この種の物語は長編である必要はない。長編小説は主人公の物語であって、多くの場合、読者の生活と遠くかけ離れている。ところが近頃は、読者自身が「あっ、これは私の恋愛とそっくり」「これはいまの私の立場そのものだわ」と思うものでなければ、読む気がしない。そこで短編集のほうが、モデリングをさがしやすいのだ。
その意味で、この短編集には、何人もの「あなた自身」が描かれている。それもユーモラスで正直な、ときには辛らつなウイットで男を責めるあなたが、そこにいる。
この作者はこれがデビュー短編集だという。私は長年、小説担当編集者をつとめていたが、デビュー作ほど目のつまった作品集は、その後なかなか見当たらない。悪くいえばつめすぎてしまうくらいだが、それを欠点と捉えるのは文芸評論家であって、読者には願ってもないサービスとなっているものなのだ。
また30歳前後を扱った日本の女流作家の作品は、どちらかというとウエットで、いじましいOL風景が描かれているものが多い。自分のみじめな体験を下敷きにしているからなのだが、このエリカ・クラウスの筆致は、さわやかに乾いて楽しい。主人公の深刻な話も、ときとしておかしみさえ感じるほどなのだ。
日本の作家の小説やエッセイに物足りないあなただったら、たちまちファンになるに違いない。それに一読したら、男との生き方にも、賢く身を処することのできる大人になれることだろう。
(評論家 櫻井秀勳)