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紙の本
バラバラ、突然…不思議
2001/03/31 00:32
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投稿者:Mihi - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひな菊という名の主人公。ダリアという幼友達。ひな菊は会いたくなったら、たて笛を吹いてダリアを呼んでいた。母は事故で死んだ。共に遭遇したその事故の描写。それが影響を及ぼしているであろう、「ひな菊」のどこか冷めた感じのする語り口ー「乾いた」感じがする。
一方、「日常」の空気もある。育ててくれたおじ、おばとのやりとり、生活、仕事の場であるお好み焼き屋での風景、あるいは、同棲している彼とのやりとり。この2つの空気が混ざって、というか混ざらっておらず、バラバラな空気を作っている。その感じをさらに煽るのが、本のレイアウトだ。1ページに2段あったり、真ん中に1段だけっだったり。まさにバラバラなのだ。そうして「バラバラ感」をもったまま、話は進む。最近よく見る、長い間会っていないダリアの夢をベースにして。
だが、最後になってこの「バラバラ感」は一気に崩された。遠い地でのダリアの死を知ったひな菊。幼い頃の思い出の林で、ひな菊はダリアのために涙を流し、自分の人生について1つの「定義」を与えた。そう、「ひな菊の人生」ー一気に空気が壊された気がした。
「バラバラ」が急速にまとまってしまった。
不思議な本だった。
紙の本
いつかどこかで脳裡に刻んだ光が、この本を開くとよみがえってくる
2001/01/12 18:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:井上真希 - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳裡に焼きつけられた光景は、現実に目にしたものなのか、それとも夢のなかで見たものなのか、あるいは、自分の体験であるとないとにかかわらず、頭のなかにある光や音、空気、匂い、感触などのさまざまな記憶の断片が合成されてできたものかもしれない。いつかどこかで見たもの(デジャ・ヴュ)が、他人の頭のなかの世界からやってきた可能性は十分にある。
この小説の主人公、ひな菊には、やはりダリアという花の名前をもつ幼なじみがいた。母親を亡くしたひな菊が引き取られて行ったおじ夫婦の家の裏に広がる雑木林の向こう側に、ダリアは住んでいた。出張で留守がちな父親と年下の恋人のいる母親をもつダリアは、ひな菊の吹くたて笛が聞こえると、どんな時も、たとえ夜中だろうと、すぐに林を抜けてひな菊のもとへやって来た。たて笛がダリアを呼び出す合図だった。
秋になると枯れ葉が厚くふり積もり、林は夜の冷気のなかでも芳しい匂いに包まれる。木々の間から差し込む月明かりは白く冴えわたり、寒ければ寒いほど、星も空に凍りついた宝石のようにいっそう輝きを増す。ふたりは林のなかで遊んだあと、ダリアの母親のスナックか、ひな菊のおじ夫婦のお好み焼き屋へ行き、大人に交じって夜の時間をやり過ごした。
こうした情景はひな菊とダリアだけのものではなく、誰もが脳の奥深くにある箱をどれか開けると、そこから同じ光が漏れ出てくることだろう。枯れ葉の匂いにお好み焼きと焼きそばのソースのこげる匂いが加わって、さらに香ばしい空気に満たされる。鉄板の上のソース焼きそばには格別のノスタルジーを感じる。
物語の現在のひな菊は25歳で、おじ夫婦のお好み焼き屋で働いている。おじの家は10年前に出て、住処を次々に替えている。ダリアが再婚した母親と11歳の時にブラジルへ行って以来、ふたりは一度も会っていない。一緒に遊んだ雑木林も今はすっかり住宅地になった。しかし、どうやらふたりは、別れた後も時空を超えて行き来をし、夢の世界を共有していたのだった——。
この本の青いケースのなかには、ひな菊とダリアが寄り添うように、黄色い表紙の吉本ばなな氏の小説と、赤い表紙の奈良美智氏のドローイング集(15点収録)とが入っている。小説のほうをぱらぱらめくると、ひな菊の心を映して、中島英樹氏の装幀はページによってさまざまな形に文字組を変化させている。画集に最初に収められた絵は、ダリアを想ってたて笛を吹く幼いひな菊だ。
開いただけでまわりの空気の色が違って見える作品である。去年の春に読んだ同じ著者・装画・装幀の小説『ハードボイルド/ハードラック』(ロッキング・オン刊)のなかで出合った光も脳裡に一気によみがえってきた。 (bk1ブックナビゲーター:井上真希/翻訳・評論 2001.01.13)
紙の本
ベスト・コラボレーション
2002/05/28 18:57
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投稿者:hanako - この投稿者のレビュー一覧を見る
画家・奈良美智さんとのコラボレ−ション作品で、文章と絵に分かれた二冊セット。
主人公・ひな菊の、小さい頃の友人ダリアとの思い出を軸に、物語が紡がれている。
奈良美智さんの絵は、まるで夢で見た風景のようで、暗くて暖かい場所にいるような安心感を感じた。
そしてそれは、吉本ばななさんの文章と、同じにおいである。
二冊同時でも、一冊づつでも楽しめる、ベスト・コラボレーション。