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紙の本
サッカーの面白さ・厳しさを丁寧に描いた良作
2003/11/05 04:12
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投稿者:徹志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
浦和レッズが優勝した。Jリーグ創設から11年目にしての初のタイトル獲得に、多くのファンが酔いしれた。会場でその瞬間を目の当たりにした私自身、熱いものがこみ上げてきて、どうしようもなかった。
と同時に、最下位争いや残留争いの主役だったチームの初めての栄冠に、日本サッカーのレベルの底上げを実感した。「日本にプロサッカーを根付かせる」というJリーグ開始当初の理念の結実した瞬間とも、言えるかもしれない。
この漫画の主人公・赤星鷹の所属チームも、浦和レッズだ。彼を中心に、Jリーグ創設時の日本サッカーの状況が描かれている。過度な脚色はなく、あくまでリアルなその描写は、時としてそのリアルさ故に、派手な必殺技等の演出が出てくるサッカー漫画よりも、心に迫ってくるものがある。
成長著しい若手に対するベテランの嫉妬、何としてでもピッチに立ちたいという想い、自分のエゴを確認した時の葛藤。技術描写もさる事ながら、選手心理を描ききる塀内夏子の表現力は、圧巻の一言に尽きる。そして何より、その‘泣かせ’の手腕が巧みなのだ。
『完全燃焼編』の最後にこんなシーンがある。仏W杯出場を決め、ベテラン三人が言う。「でも、やっぱり俺達にとって、ワールドカップは夢だったんだよ」と。同大会出場を夢ではなく、あくまで実現可能な目標と口にしていた若手に対しての台詞だ。
夢があるから、現実で頑張れる。実現可能だから夢を追う事ができる。W杯出場、タイトル獲得という夢にあと一歩手が届かなかった福田正博に、この文を捧げたい。