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紙の本
ますますマッド!
2006/02/28 01:41
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kokusuda - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ウェア」シリーズの3作目です。
デタラメぶりに磨きがかかってきたラッカー氏の「良いのかなぁ、、、?」的な
読後感が何とも言えずマッドにステキ!です。
解説に登場するモールディは導電性樹脂(演算素子入り)と考えるカビ
(というかプログラムを内包した演算素子に 感染する新生命)が
くっついて誕生した知的生命です。
故・黒丸尚氏はカビから生まれた「カビィ」なんて名前を付けていたんですが、
原語通りモールド(カビ)から生まれた「モールディ」にしたほうが日本人には
インパクトが強い気がします。
解説を読んだだけではモールディのモニクが主役かな?」と思っていたのですが、
読んでビックリ!
中身は史劇のような構成になっています。
何人かの登場人物が入れ替わり登場し2031年から
2053年までの事件を色々な視点から描いています。
巻末の訳者あとがきに引用されている作者自身の作品紹介は
作品と同じくらい面白いのですが、(言い過ぎかなぁ?)
ネタバレするので詳しく書けません(ヲイ!)
題名の「フリーウェア」はインターネットで一般化した感がありますが、
無料のソフトウェアのこと。
この作品で何がフリー(無料)なのか?を書いてしまうと一気にネタバレしてしまいますが、
面白いアイデアです。
無料ってことは良いことばかりじゃ無いんですよね、、、。
以前の2作と違って物語の展開は理路整然としています。
飽くまでも展開だけですが、、、(笑
アイデアや登場人物たちの言動はとてもマッドでポップです。
演算素子に感染し成長する考えるカビによって通信、電気、家電製品から自動車に至るまで
すべての制御システムが潰滅してしまったり、考えるカビに対抗するため、
それらを再プログラミングするための考えるカビとか、
再プログラミング用神経接続式通信電話(非接触式)とか、
人間とモールディとの異種族性交とか、モールディの生殖方法とか、
モールディを変形させた自律型ボードでサーフィンとか、
コギャルやモーゼのような言葉遣いのモールディとか、、、。
ラッカー氏いわく
「SF作品の本質は抽象的な発想をイカした事実へ変貌させること」
他のインタビューでも
「こう思い返すと幸せな気持ちになれるんだ。 宇宙が単一の有機連続体だってね」
なんて真面目に語ってしまいます。
変人という理由で大学をクビになったり数学理論(仮説ね)が実体化した山を
登る作品を書いたり、本人のマッドな話題に事欠かないところもマッドです。
作品も小説としての完成度よりアイデアやテーマを優先させ、
ディック氏の後継者と呼ばれたりするのも少し分かります。
娘さんに、日本の有名な俳句だよって
「古池や 蛙殺して ああ静か」
なんて教えてたりして、、、。
このシリーズで次の作品もすでに発表済みですが、翻訳はまだでしょうか?
「ソフト」「ウェット」「フリー」ときて次は「リアルウェア」という題のようです。
楽しみにしているんですが、、、(笑
紙の本
最高に“浮かした”サイバーパンク
2003/02/18 23:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
人工生命の研究者でもある著者による、情報テクノロジーとバイオテクノロジーを融合させたバッパー・シリーズ(小説)の「ソフトウェア」「ウェットウェア」に続く第三弾。
そもそもネーミングがイかしている。「フリーウェア」はもち最近のIT業界で注目されているLinuxを始めとする無償配布ソフト群の用語から取ってきている。「ソフトウェア」の原義は言わずもがなですが、女優の菊川怜さんも卒論にしたという遺伝的アルゴリズムによって生まれた、人間と同様の「意識=ソフトウェア」をもつ「バッパ−=ヒューマノイド態な人工生命」の物語、「ウェットウェア」ではそれが機械でない生体を持つように進化するってわけ。たしかにこれらの用語を素直に解釈するとそーゆー意味になるよなあ(そんなことはない)。
そして本作では、バッパーの新しい形態である、黴とプラスチックから成る体を持つ「モールディー」の家族の暮らしに、女性形モールディーが大好きなチーズボール君(人間)やら、かつての英雄だった上院議院やらが入り乱れ、たくさんのモールディーが居住する月と地球をめぐるなにやら陰謀めいた騒動に発展していく。
そしてこの作品の中でのフリーウェアとは、これは凄いです。もともとスラップスティックめいて語られていたこの物語ですが、さらなるスタイルの徹底とともに、飛躍した想像力の、想像力の、想像力の、なんでこんなすごい、というかお馬鹿なフリーウェアを思いつきますか、この人は。
いくらネットが発達したって、こんなもんをダウンロードしちゃったらヤダなあ。
真面目な技術者、研究者の皆さん、こんなマッドな話あるわけがないとしかめ面なさるな。一見無理そうなアイデアでも、論理的に追求してみれば実現可能かもしれない、そんな夢の続きに現在のハイテク社会があるのではないですか。これに登場するようなカッ飛んだプログラマー、というよりハッカー、皆さんのまわりにも結構いるんではないでしょうか。
アイデアはぶっ飛んでても、現場感覚にはけっこうリアリティがあるところが、ラッカーの特質でしょう。ハイテクをめぐるワールドワイドな政治的動向も妙にキャッチ−で、兵器転用技術がどうたらむずかしいご時世、説得力ありすぎ。
前作まではそれでもバッパー達の悲しみがしんみり伝わって来るものでしたが、もう今作はぶっちしてナミナミでふわりんなのです。