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商品説明
目覚めた巨人・赤い資本主義がアジアを襲う。中国は本格的に変わった。繁栄の法則を摑んだ中国を読み解くキーワードは「中華連邦」。成長する6大地域を中心に現状と今後を分析、日本経済のとるべき道を探る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
大前 研一
- 略歴
- 〈大前研一〉1943年福岡県生まれ。マサチューセッツ工科大学大学院で博士号を取得。現在、UCLA政策学部教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ代表取締役。著書に「新・資本論」など多数。
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紙の本
費用の比較だけやればいいなんてお気楽なもんだ
2002/08/02 05:11
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る
いや、わけのわかんないオヤジと話をあわせるために読まなきゃいけない本ってのが世間にはあるらしくて。まあでもなんにも知らない人が表面だけをざっと触れるだけで、ヒマなら(かなりね)読んでみてもいいかもしれない。
とにかく底が浅い。いくつか実例を挙げましょう。
引用)アメリカは、ことあるごとに中国に対して民主主義の不備や人権意識の不十分さをあげつらっている。しかしこれらはいずれも富を配分する際の論理だ。私にいわせれば、中国はまだそうしたことを論じる段階には至ってない。
さすが経済人。人権問題と経済問題の見事な一体化ぶり。貧乏人には人権はないといわんばかりの論旨はすがすがしすぎる。
引用)こういう具合に、書類上の輸出入をものすごい勢いで繰り返しているため、貿易統計の数字を見ただけではその実体はよくわからないのだ。
香港との貿易の話だが、なんでここからほんの少し健全な批判精神を発揮して、中国全体の貿易統計やひいては経済統計の話へ結びついていかないんでしょう? それらの数字をたっぷり引用した最後にこの話をつけ加える確信犯ぶりも笑える。
最後には昨今話題の中国野菜について。一ヘクタールのねぎの値段は、中国は日本の17%なんだって。書いてあるのは正真正銘これだけ。費用の比較だけならコンサルなんていらないって。生産や輸送プロセス(それにかかわる安全性)なんかの話はいっさいなし。
こんなところで題名をだすのもはばかられるけど『世界の工場/中国華南と日本企業』関満博をお奨めする。比較するとくだらないものってよくわかるんだ。
紙の本
「地域国家論」は正しい!?
2002/07/08 02:47
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:梶谷 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今、とにかく巷には中国経済に関する書籍が山のようにあふれていて、一体どれから読んでいいのか大いに迷うような状況だ。その中で、この本は著者のネームバリューと大々的な広告の効果もあってかなり売れたようである。「中国経済の読み方を根底から覆す衝撃の書」っていう帯のキャッチコピーは本当なのか、気になってちょっと手にとってみた。
さて、まず全体としての印象だが、現在の中国における高いレベルのものづくりの実態が地域ごとにきちんと紹介されているほか、中国の社会・政治面における基本的な情報も押さえられているし、それほど悪くない本であることは確かだ。だけど、どうも中国経済の現実をダシにして自説を雄弁に語ろうという姿勢が濃厚で、そこが少しうさん臭い。
この本の中で大前さんは、現在の中国の成功は地方主導によるものだ、ということを繰り返し述べている。特に、珠江デルタ(広東省)・上海周辺・東北三省、といったいくつかの省にまたがった地域(大前さんはメガリージョンと呼んでいる)が、お互いに刺激を与えながらそれぞれの特徴を生かして成長をとげてきたことを非常に評価していて、日本もそれに見習うべきだ、という主張までしているほどだ。つまり、各地方が自立した経済圏を作り、お互いに競いあいながら発展した方がいい、という、かねてからの彼の主張である「地域国家論」を補強する材料として中国の現実が捉えられているのだ。
だけどこの議論は前提にちょっと疑問がある。例えば、中国が国有企業の管理などの面で地方政府への大幅な権限委譲を行ったのは主に80年代の話だ。その頃から中国経済は高い成長率を記録し始めていたが、それは主に農業や繊維製品の加工貿易などの軽工業を中心としたもので、現在のように機械産業におけるものづくりの質の高さが評価されたというわけじゃなかった。
そして、大前さんが中国のものづくりの実力を見直したという90年代後半は、実は行き過ぎた「地方分権」が一種のバブル経済化をもたらしたとして批判の対象になり、中央政府が地方に対するマクロコントロールの力を強めようとした時期にあたる。その後中国は、発展の遅れた西部の内陸地域に集中的に財政資金を投下しインフラ建設を行う「西部大開発」という国家プロジェクトを推し進めている。つまり、大前さんが批判してやまない、かつての日本のような「均衡ある国土の発展」の道を歩み始めているともとれるのだ。
こういった事実を踏まえれば、現在の中国の現状から「日本も地域が独立してお互いに競争すればうまくいくのだ!」っていう結論を導きだすのはちょっと一面的すぎると思う。それに、そもそも国土とか、国の成り立ちとか、民族構成とか、初期条件がぜんぜん違うんだから、「中国が地方分権でうまくいったんだから、日本も地方同士自由に競争させよう」というのは、議論の運び方としてはかなり乱暴なんじゃないだろうか。
というわけで、一部の「中国は共産主義の独裁国家だ、だから必ず崩壊するんだ」と吼えてるだけのどうしようもない本に比べればずっとマシなんだけど、特にこの本から「衝撃」を受けるということもない、というのが僕の正直な感想だ。同じ中国経済の現場レポートとしては、僕は黒田篤郎さんの『メイド・イン・チャイナ』(東洋経済新報社)の方を断然お薦めする。
紙の本
中国の経済政策のベクトルを知る。
2003/10/18 11:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:aguni - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本が書かれてから1年半。中国の市場経済は本物か、とか、いつか中国の崩壊が始まる、型の論調は一段落してしまい、強力すぎる元のレートをドルペッグにしておくのはいかがなものか、とか、SARSが復活したら世界経済に影響が大きいのでは、とか、そういう話題が出てくるようになった。
新聞やメディアを見れば、W杯後の韓国のように、中国の話題が多く出てくるようになった。日本企業が中国に進出を決めると株価は上がり、証券会社ではチャイナ・ファンドをしきりに進める。日本は国を挙げて新幹線を売り込む。レアル・マドリードは中国でキャンプをし、いつのまにか中国人が宇宙に進出している。女子十二楽坊は紅白への出場が内定しているとか。
しかし、人口十二億の中国が、いったいどんな風に発展を遂げているのか、その方向性について理解するには、あまりに日本の新聞・TVの報道は薄っぺら過ぎてわからない。それは中国の政治や政策はあいかわらず共産党の一党独裁なので、メディア戦略を行う必要がないからだろう。政党に広告代理店がべったりのどこかのに国とは違い、中国の政策の方向性を対立の構図によって判断することが、報道メディア越しだけではできないのだ。
この本は大前研一氏が、自らの経験した中国を彼なりに捉え、その成長と発展の構造をわかりやすく解説した一冊である。もちろん彼はいつものように自分の自慢話や予言めいた発言も織り交ぜつつ、それでも中国という国家の雰囲気というものがよくわかる。
彼は中国を、政治的にはまだ北京の中央集権国家なのだが、経済的には、地方に権限が委譲された実質的には連邦制の統治機構になってしまった、という。彼は中国全体、そして6つの地域に分けてその発展のベクトルを説明している。合わせて国有企業の民営化・廃業、小さな政府へのためのリストラなどの大胆な改革をたった3年で達成。これが今の中国発展の基礎になっている。
驚いたのは、地方自治について、経済活性化のために各市長には成長の数値目標が課せられているというのだ。もちろん、達成できなければクビ。このあたりはさすが中央集権国家だが、いやでも経済発展は促進される。
全編に渡って大前氏の向こうに見えてくる中国は、その人口のパワーに支えられた、若さ、元気さ、エネルギーといったものである。高齢化はなはだしい日本から見ると、そのエネルギーは羨望と嫉妬の対象になるのだろう。それがメディアで中国が断片的にしか報じられない理由なのかもしれない。
紙の本
中国の活力を日本の復活の原動力に。ハードルは高いがその処方が明確に示されている。
2003/11/17 01:52
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良書普及人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国の今後の成長は疑うべくも無く、大きな脅威に感じているのが一般の日本人であると思う。私のその1人である。
大前研一氏は、中国が沿岸部の東北3省、北京天津回廊、山東半島、長江デルタ、福建省、珠江デルタの6地域を中心に発展し、これらの地域は、メガリージョンとして、一つの国家の規模で大きく発展すると予想している。中国が朱容基改革で、一挙に世界の最先端産業を手に入れるに至った様子が、ドラマティックに描かれている。
例えば、珠江デルタには部品業者が5万社、長江デルタには6万社あり、しかも必要なものは最先端のものまで何でも生産できる体制にあり、欧州からもアルカテルやノキアなどの先端産業が進出している理由はここにあると。日本一の産業クラスターを形成しているといわれる東京都大田区ではこの数が8000社なのだそうだ。しかも、勤勉で頭脳明晰、賃金が安い中国人が億人単位でごろごろしている。
これにどのように対抗していったら良いのか。シンガポールはどう転んでも中国とは勝負にならないということで、中国と競争するのではなく、中国の発展に投資し、そのリターンで300万の人口を養っていこうという戦略に切り替えたのだそうだ。前首相のリー・クワンユーはシンガポール最大の機関投資家の年金基金会長に就任したのだそうだ。
では、日本はどうするか。放置すれば、やがて一人当たりのGDPが同じになり、人口比で中国の10%国家に転落してしまうと警告する。
大前氏は、日本としては、中国を一つの国家としてとらえず、地域国家の固まりとしてとらえ、日本も首都圏、関西圏、九州といった大きな固まりで、中国の各地域と戦略的に深く結びつくことを薦める。中国のメガリージョンごととの緊密な相互依存関係を日本の道州別に作ることを薦めている。まだ日本の各地域の経済力が上回っている今のうちに、と。そのためには、日本自身が今の中央集権体制を打ち破らなければならないと主張している。そして、そのことはEUや米国のアメリカ大陸全土を視野に入れた大経済圏思想と並ぶアジア全体の経済圏の形成に行き着くとしている。
国民国家が突出していたのでは、地域共通の通貨までも視野に入れた経済圏の形成は無理である、とも主張する。
大前氏の本を読むと、何時もの事ながら、視座の高さに圧倒される。そして、それ故に、その処方箋が、今の日本の統治制度の中では実現しにくい状態になっていることを痛切に感じる。
その中国も、一人っ子政策で大事に育てられた子供達が10年後に社会を支える時の事を心配し出しているようである。過保護で甘やかされた子供はハングリーではないというで。興味深いのは、中国人がそのことを日本を見て他山の石と自らを戒めているということだ。「成功するとあそこまで駄目になるかといういい例だ。今の日本を見ていると、何故あんなに成功したのか分からないですね」と日本人を前に平気で言うのだそうだ。これには苦笑せざるを得ない。ゆとり教育の文部科学省さん、よく噛みしめて聞いてくださいね。
最早、ボーダレス経済化におけるチャイナ・インパクトを日本の産業、社会の復活の原動力に使うしかないようである。日本には柔道というお家芸のスポーツがあるが、相手の力を利用して一本を取れるようにしていくということであろうか。これは、しかし、極めて高度な業になることは必定である。