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紙の本
高梨先生のご冥福をお祈りします。
2010/04/30 09:53
14人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:白みそ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「総解英文法」、「基礎からの英語」、「英語の構文150」などの著者である高梨健吉氏が今年(2010年)3月20日になくなられたとのことである。
大学受験時代、偏差値が40点台と、英語が大の苦手だった私は、「総解英文法」に取り組んだものの、その質と量に圧倒され挫折した。その代わり、「基礎からの英語」に繰り返し取り組んだ。五文型についておおよそ理解できるようになった時点で、偏差値が60点台を下ることはなくなっていた。私の英語力の基礎は、氏の参考書によって養われたといっていい。
氏の著作は、いずれも文章が簡潔でわかりやすく、説明が理解しやすい。そのため、一時期は受験生の間で非常に人気が高かった。
現在では、「基礎からの英語」は絶版となり、「英語の構文150」は他の著者が引き継いだ形であるため、高梨健吉著の英語参考書のうち、現行の出版物は「総解英文法」のみとなってしまった。
「総解英文法」は網羅性が高いだけでなく、著者の他の著作同様に説明がわかりやすい。あまり見やすいレイアウトではないが、本書が出版されたのは1970年だから、現在の文法書と比較するのは酷というものだ。文句なしの名著といってよい。
ところが、ネットを検索すると、本書への厳しい批判を多く目にする。インターネットの普及した現代は、名著には厳しい時代なのかも知れない。名著だからこそ人々の注目をあび、批判の対象にもなりやすいのだろう。
本書については、英文法の体系が時代遅れとの批判が目立つ。アカデミックな観点からは重要な批判だろう。ただ、純粋に受験参考書として見た場合、学習効率に文法理論の古さがどれだけ影響するものだろうか?実際に他の文法書と読み比べて本書の説明のほうがしっくりくるなら、受験生レベルでは、文法理論の古さはあまり気にする必要はないだろう。本書を選択肢から排除する必要はないと思う。
そのほか、本書に関しては、根拠のない批判も目につく。亡くなられた著者はもはや反論することもできない。そこで、最後に僭越ながら著者に代わって反論させていただくことにする。
本書の書名で検索すると、「この本の中で、おかしな例文が多数挙げられている」と批判する、あるサイトがかなり上位にくる。そのサイトでは具体例がひとつだけ挙げられているのだが、それは次のとおりである。
「I like a boy who works hard.
私はよく勉強する少年が好きだ。
において、"who works hard"という限定用法の関係詞節がついているもの、少年全般を指すのであれば"a boy"とは普通言わない。"boys"と複数形にすべきであろう。」
この例などは完全な誤解である。例文において"a boy"は少年全般を指しているのではない。後ろから形容詞節が"boy"を修飾し、「少年」に限定を加えているのに、少年全般を指すはずがない。「限定用法」という言葉が何を意味しているのか考えてみてほしい。
不定冠詞の"a"には、"a kind of"と同じようなニュアンスもあり、この例文は「私はよく勉強する(タイプの)少年が好きだ。」という趣旨なのだから、"a boy"で文法上なんらおかしくはないのだ。
著者が亡くなられた後も、本書が末永く読者に愛され続けることを願ってやまない。