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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2002.4
- 出版社: マガジンハウス
- サイズ:20cm/430p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-8387-1367-3
紙の本
非道、行ずべからず
著者 松井 今朝子 (著)
文化六年元旦、江戸最大の劇場、中村座が火事に襲われた。焼け跡から出た屍体は、芸道に生きる男たちを修羅地獄に陥れた…。『鳩よ!』連載に加筆した長編時代ミステリーの単行本化。...
非道、行ずべからず
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商品説明
文化六年元旦、江戸最大の劇場、中村座が火事に襲われた。焼け跡から出た屍体は、芸道に生きる男たちを修羅地獄に陥れた…。『鳩よ!』連載に加筆した長編時代ミステリーの単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
松井 今朝子
- 略歴
- 〈松井今朝子〉1953年京都府生まれ。早稲田大学大学院演劇学修士課程修了。歌舞伎の企画製作に携わる。「仲蔵狂乱」で第8回時代小説大賞を受賞。ほかの著書に「東洲しゃらくさし」「幕末あどれさん」等。
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紙の本
なんていうか時代の息吹きってえやつが感じられないんですねえ。芝居の世界の内幕ものの限界?いやいや、やっぱり魅力的な人がいないからでしょう
2006/05/26 21:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《文化六年の元旦、江戸の芝居小屋 中村座で起きた火事は、関係者に三年前の事件を思い出させた。そして現場の衣裳行李からは見知らぬ老人の遺体が》時代小説。
推理小説的な仕組みはありますが、それに期待し過ぎると失望するかもしれません。それよりは、江戸時代における芸の世界のあり方を読む本というべきでしょう。
まず、マガジンハウス社にしては珍しい造本が目を惹きます。坂東真砂子『曼荼羅街道』のカバーを華麗な曼荼羅模様で彩ったミルキィ・イソベが装丁を担当しています。紅蓮の炎が江戸の空を赤く染める様は、何とも言えずに美しいもの。ハードカバーというのも、この出版社にしては珍しいことですが、紙質がしっかりしていて、かなり力が入っています。そのせいでもないでしょうが、2002年の直木賞の候補作となったようです。
舞台は江戸時代、文化六年の元旦の火事で幕をあけます。延焼はさほどのことは無く、中村座だけが焼け落ちた形で終ったのですが、現場に置かれていた衣裳行李から見知らぬ老人の遺体が発見されたことから、北町奉行所が乗り出し、三年前に同じ中村座で起きた火事の際の悲劇にも焦点が当てられます。人込みに巻き込まれて二人の少女が亡くなっているのです。
奉行所同心で容姿から「三日月の旦那」とよばれる笹岡平左衛門、去年の秋から出仕したばかりの同心見習 薗部理市郎の捜査が進む中で、中村座では建て直しのための出し物が企画されていました。それは二人の息子が成長し、自身も60を過ぎて衰えが見え始めた立女形 荻野沢野丞の引退興業です。
気の弱い中村座の太夫元 中村勘三郎、亀を飼うことから「亀の太夫」と陰で呼ばれる荻野沢野丞、その長男で先妻との間にけられた市之介、とかく噂の絶えなかった後妻お美代との間にできた次男の宇源次、市村座の勝俵蔵とともに江戸の狂言作者の両雄と称される中村座の立作者 喜多村松栄、中村座の金主で色々評判のある大久保庄助、桟敷番 右平次、女形で沢野丞の弟子の荻野沢蔵。立女形の座を息子に譲る興業の成否と、小屋の普請と新たな花形役者の誕生を巡る人々の思惑を軸に話は展開します。
本来ならば禁じられている、起きたばかりの事件を主題にした出し物「桜梅競恋江戸染」で、勝負にでる中村座。相次ぐ事件と担ぎの小間物屋の忠七が残した手紙、四君子の謎。
文章が安定している人だけに読みやすくていいのですが、時代の匂いがあまりしてこないのは何故でしょう。それから魅力的な人物造形がありません。面白くなったであろう同心の笹岡と見習いの理市郎の関係も、今ひとつすっきりしません。とくにラストの裁きが中途半端です。唯一の救いは笹岡の奥方、奥絵師の血をひく妻女の話くらいではないでしょうか。四君子の謎解きのレベルは、銭形平次なみといえば分かってもらえるでしょう。
松井には同じ世界を扱った別の作品もあるようですが、この作品に関して云えば、もう一つ華を感じません。これじゃあ直木賞は取れないし、取らせちゃあいけません。珍しく審査員の判定に肯きました、はい。