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商品説明
1880年、革命前のロシア、ペテルブルク。川江環は、祖国日本での忘れたい過去を胸に、画学生として留学していた。やがて、一枚の西洋画が彼女を波乱の人生へ導く…。大河歴史ロマン。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
皆川 博子
- 略歴
- 〈皆川博子〉1929年京城生まれ。東京女子大学外国語科中退。「恋紅」で直木賞、「薔薇忌」で柴田錬三郎賞、「死の泉」で吉川英治文学賞を受賞。
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紙の本
主人公と共に歩み悩み苦悩し憤り…人生を旅しきった心地よい疲労感
2017/11/10 09:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まもり - この投稿者のレビュー一覧を見る
ただただ、すごい本を読んでしまったという思いでいっぱい。読んでいる間は至福で、久しぶりに文字を追う自覚なく、時間を飛び、世界には私と本だけ-という感覚に陥った。その感覚は得ようとしても到底得られるものではなく、作品と自分との歯車がガチッと合った時にだけ生じる快感かなと思う。
皆川さんの作品を読むと大抵心がヒリヒリし、魂を鉋で削り取られるような描写に圧倒されるというよりぺちゃんこになってしまうが、この本は特に凄まじかった。この先も彼女の本を読んでいくし、皆川さんと同じ時代を生きることができて幸せです。
紙の本
ロシアの近代史を背景に強靱な夢想の力を持ったヒロインの人生を描く
2002/05/13 22:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:千街晶之 - この投稿者のレビュー一覧を見る
19世紀末、17歳の少女・環は、画学生として露西亜に留学するが、厳格な女学院を脱出したのをきっかけに、想像を絶する数奇な運命を辿ることになる。異母妹やその夫との相剋、流刑地シベリアへの旅、貧民街での生活、投獄、宮廷への招待、そして革命の嵐……。吉川英治文学賞を受賞した話題作『死の泉』以来、実に5年ぶりの長篇歴史ロマンである。
この大作のすべての魅力を、短い字数で語りきるのは不可能に近いが、取り敢えず、歴史と個人の一生とを二重写しにした小説であるということは言っておきたい。
ある角度から見れば、本書は歴史の波に翻弄され、異国で苛酷な生涯を送った女性の物語である。しかし、視座を変えるなら、そこに騙し絵のように浮かび上がってくるのは、歴史すらも壊すことの出来なかったひとりの女性の強靱な夢想の力である。
絵画蒐集家トレチャコフ、妖僧ラスプーチン、ロマノフ家最後の皇帝となるニコライ二世とその家族……といった歴史に名を残す人々も、若き日の環を魅了し、生涯に亘って彼女を惑わし続けた一枚の絵画『岩に座する悪魔(ディアーヴァル)』の強烈な呪縛力の前では、影絵芝居の登場人物ほどの存在感しか持たない。
環の生涯の背景では、アレクサンドル二世暗殺、皇帝専制に対する民衆の反撥のうねり、日露戦争、ラスプーチンの台頭と横死、第一次世界大戦、ロシア革命……といった歴史上の大事件が確かに展開されており、時には彼女自身もそれに関わりもするのだけれど、それによって彼女の魂が歪められることはない。そして、ロマノフ一家殺害という惨劇を通して、環の夢想と、歴史という現実とは、ついにぴったりと重なり合うのである。
最後に、この作品が、著者が以前に発表した短篇「黒塚」(『皆川博子作品精華 迷宮』所収、白泉社)を想起させることを付言しておこう。大長篇と短篇という差こそあれ、ひとりの女性が、その生の終焉近くになっておのれの裡に秘めていたものを思いがけないかたちで解き放つという構想は、不思議なくらい似通っているのである。 (bk1ブックナビゲーター:千街晶之/ミステリ評論家)