紙の本
『ポニョ』の原点を見つけた
2010/02/21 19:14
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
1997年から98年にかけての宮崎アニメでいうと『もののけ姫』の頃と、2001年の『千と千尋の神隠し』の頃の、養老孟司と宮崎駿の対談を収めたものです。初出は『広告批評』『キネ旬ムック』『致知』です。前2者は比較的知られている雑誌やムックだと思いますが、『致知』はあまり知りませんでした。調べてみると創刊30年になる人間学の雑誌のようです。たいした脈絡はなく、ただ単に2人の対談を集めて、ジブリアニメ『猫の恩返し』公開に合わせて出版したというもののようです。
なので、基本的には養老孟司と宮崎駿が、2人の興味関心の赴くままに話をしている印象があります。対談以前から知り合いであり、ほぼ同世代とも言える2人なので、話は縦横無尽に展開していきます。まあそれについていって、こちらがいろいろと刺激されることがあればいいのかとも思います。
対談はもちろん面白いのですが、それよりもこの3つの対談の前後に宮崎駿の描き下ろしカラー読物と養老孟司の書き下ろし原稿が収められていて、こちらの方がより面白かったりします。
特に宮崎駿の読物には、のちに『崖の上のポニョ』の構想にもつながるような「保育園と地続きでホスピスを」という絵と話が出てきます。読物全体はこの本に収められている対談から考えたこととなっていますので、実は『ポニョ』の一部は養老孟司との話の中から出てきたものかもしれません。この部分だけでも必読の価値があるように思います。
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同じものを見ていても見ているものが違う
2005/09/09 21:39
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「バカの壁」で有名な養老さんと、宮崎駿
との対談を、文章に起こしたものです。
(その他もあります)
その内容は、文化人類学的なものから、地学、経済学、文化論
まで、幅広いのですが
お互いの専門分野は、お互い深く立ち入らず、
褒めあって、大人の会話になっています。
虫眼と、いうのは、養老さんが、趣味が昆虫観察なのは、
もとよりなのですが、、
大多数で同じ風景というか、場面を見ても
「あっ、ここに、なんとかという虫がいる!」と、叫ぶ子供が、
いるそうです。
大人は、同じところを見ているのに、えーどこどこと、なるのですが、
そういう、子供の眼のことを、いうそうです。
同じものを見ながら、見ているものが、まったく違うのですね、
アニ眼は、いうことなき、宮崎さんetcのアニメーターの、
普段、我々一般peopleが、一秒間で、ぱーっと
見ているものを、24コマ
(ジャパニメーションは、3コマ同じ絵なので、8コマですが、)
に分割して、絵に細分化することのできる眼です。
そういう風に、動きを細分化すると、
(実際は、動きを単純に細分化するだけでなく、多少のデフォルメや、
眼の錯覚を利用して、描写する為アニメーターの個性が加味されています)
鳥や、虫の羽ばたきが、大変変わって、印象深く見えてくるそうです。
知的なお二人の趣味や仕事の話しです。
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何もかも手遅れの気が
2018/09/07 02:11
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投稿者:しゅんじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんな対話を20年近く前にやってたんだなあ。「すべての関心が人間関係のみに向かっている」いるというパヤオさんの指摘は、ますます酷くなっているように思う。この対談時代に若者だった人が中年になったせいか、社会全体がその傾向。事態は何もよくなっていない。「映画が流行ったからといって社会には何の関係もない」というパヤオさんの冷静な分析は正しかったと言うことか。コナンの世界が現実になる日も近いのだろうか。
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土の上での生活から離れていく現代の子供たちとその親へ、または社会へ警鐘を鳴らす本。大人が手と口を出さなければ子供はすぐに元気になる。と本書で語っている。解剖学の養老孟司とアニメの巨匠宮崎駿とが、対談という形で理想の社会や身近な地域のあるべき姿を追求していく。一見、接点が無さそうなこの2人の巨匠がそれぞれの現場で、頭をかかえる問題を紐解いていくとそこには共通した問題点が浮かび上がる。土から離れた子供たちが既に成人し、同じ現場で働いている事にハッとするのでる。冒頭で見せる数ページに及ぶカラーイラストはどこか懐かしい昭和の町並みを、かつて子供だった宮崎駿が「友達」と呼ぶ現代の子供たちの為に取り戻そうと描いた理想の町なのだ。
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(2004.02.05読了)(2003.12.22購入)
この本には、二人の3回に亘る対談が掲載されている。1997年、1998年、2001年のもの。前2回は、『もののけ姫』について、最後の回は、『千と千尋の神隠し』について、主な話題になっている。
本を開くと最初の22ページは、宮崎サンの絵による論文?が掲載されている。宮崎さんは、文章で考えるのではなくきっといつも具体的なイメージを基に物事を考える習性があるのだろう。
その中に、「若い人たちが恐ろしく優しくて傷つきやすく恐ろしく不器用で愚図でいい子なのだ。」という文章がある。そうなのだ、引きこもりもそのために起こっているような気もする。
養老さんの部屋には、メイがトトロを発見してジーッと見ているシーンのが貼ってあるそうです。解剖をやる人はこういう目つきでなきゃだめということを学生に教えるためだそうです。得体の知れないものに出会ったとき気味の悪いものでもジーッと見ているのがいいのだそうです。
養老さんの「もののけ姫」はタイトルと中身があっていないという指摘に対して、宮崎さんは、「当初考えていたのは、もののけにとり憑かれた父親を娘が殺す話です。」と答えています。だから途中で題名を変えようという提案をしたのだけど、「となりのトトロ」も「魔女の宅急便」も宮崎作品はいつも「の」がついているし、「もののけ姫」は2つも「の」がついているから変えないほうがいいとか言われてあきらめたとか。
宮崎さんのところに、親から「うちの子供はトトロが大好きでもう100回ぐらい見ています」なんていう手紙が来ると、誕生日に1回見せるだけでいいのに、ヤバイと思うそうです。1回だけ見てどんぐりを拾いに行くというのがいいので、何回も見たらどんぐりを拾いに行かない。これでは困るというわけです。ビデオの箱に、「見るのは年1回にしてください」と書いて売りたいそうです。
文部省が個性尊重を言っているけど、個性を作るには「ゆとり」が必要なのでは、ということで、自然の中でぼんやりのんびりする時間がたっぷり必要だと思うのですが、・・・。
養老さんの文章の中に、『千と千尋の神隠し』が何故多くの観客をひきつけたのか論じてくれといわれたけど、言葉で表現できないものを表現するのが芸術なのだから、その芸術作品を分析解説しろといわれても、・・・。というニュアンスのことが書いてあった。ごもっともである・・・。
●関連図書
「唯脳論」養老 孟司、青土社、1989.09.25
「解剖学教室へようこそ」養老 孟司、筑摩書房、1993.06.25
「考えるヒト」養老 孟司、筑摩書房、1996.07.10
「解剖学個人授業」養老 孟司・南 伸坊、新潮文庫、2001.04.01
「バカの壁」養老 孟司、新潮新書、2003.04.10
「シュナの旅」宮崎駿、徳間書店、1983
「風の谷のナウシカ」全7巻、宮崎駿、徳間書店、1986.08.15-1995.01.15
養老孟司[ヨウロウタケシ]
1937年 神奈川県鎌倉市生まれ。
1967年 東京大学大学院博士課程修了。
1981年 東京大学医学部教授。解剖学者。
1989年 『からだの見方』でサントリー芸術大賞受賞。
1995年 東京大学を退官
宮崎駿[ミヤザキハヤオ]
1941年 東京都生まれ。
1963年 学習院大学政治経済学部卒業後、東映動画へ入社。
1985年 スタジオジブリ設立に参加。
『風の谷のナウシカ』(1984)を演出・監督。その後ジブリで『天空の城ラピュタ』(1986)『となりのトトロ』(1988)『魔女の宅急便』(1989)『紅の豚』(1992)『もののけ姫』(1997)『千と千尋の神隠し』(2001)を監督
(「MARC」データベースより)amazon
虫好きの解剖学者とアニメーション映画監督がざっくばらんに語り合う「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」のこと、自然と人間のこと、そして子供たちのこと。書き下ろし原稿、描き下ろしカラー読み物も収録!
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養老さんと宮崎さんという専門分野のまったく異なる
二人のプロフェッショナルが言いたい放題言っている本(^_^;)
結論とかはあまり出てこない。
参考になるかというとあんまりならない。
インタビュアーが宮崎アニメについて語らせようとしていたりもするんですが、お互いにあまり語りたがらないのが面白い。
でもちらちらとそれぞれの視点がのぞき見えるのが興味深いですね。
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日頃使わない脳の一部分を刺激される感じです。
あともう少し私の頭がよかったらもっと理解できて★3つでした。本自体はすごく価値ある本だと思います!
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養老 孟司 (著), 宮崎 駿 (著)
徳間書店スタジオジブリ事業本部 (2002/07)
ノンフィクションばかり読んでいる私が久しぶりに手に取った対談集
やはり大好きな宮崎駿さんだから
これは面白かった
興味深かった
宮崎作品についての想いや自然と人間とのかかわりあい、特に子どもをめぐる現状についてのお二人の話し
また、養老 孟司さんが警告を発する「日本人や日本文化の『都市化・脳化』」にとても共感した
今年の夏はジブリアニメが公開されなくてさびしい
≪ 野で遊べ トトロ百回 観るよりも ≫
宮崎駿さんから子供たちへ
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宮崎駿氏と養老孟司氏だからこそ織りなされる会話に引かれる。彼らに共通点が多いことも要因。養老氏ならではの視点がジブリ作品にメスを入れる。
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「もののけ姫」と「千と千尋の神隠し」を切り口にしたあれこれの対談。最初のイーハトーブ村の計画図の絵がいい感じだった。
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宮崎駿作品の裏話が面白かった。千と千尋の神隠しの電車のシーンにそんな思いが込められていたなんて。もう一度見たくなる。
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なぜか見落としていた。こんな本を発刊当時に見つけられていなかった。ひょっとすると2002年7月ではまだ我が家はジブリファンになっていなかったのかも知れない。2003年の養老ブームでこの本が再び新聞広告に現れる。僕は新刊だと思って急いで書店に行った。どこにもない。店員に聞いて、パソコンで調べてもらった。それで初めて気がついた。1年以上前に発刊されていた。書店の棚にはもうなかった。それでも別の書店で探してみた。そうしたらこっそり1冊だけ棚に入っていた。表紙をめくるとそこには「ゆばあば」の絵が。代金を支払って、帰りの電車に乗り、すぐにイラストのページを開いて読み始めた。理想の街がそこには描かれている。街の真ん中に保育園がある。子どもたちが木登りをしている。隣にホスピスがある。丸い形の家が建っている。車は街の中まで入らない。電気自動車が低速で走っているだけ。地域通貨が使われている。「これは夢ではない」と書かれている。そう、こういう動きはいろいろなところで少しずつ出てきているようだ。それがもう少し大きなうねりになってくればいいと思う。もちろん本文はこの2人の対談だからそれなりにおもしろいのだけど、黒子に徹するはずの編集者が余計な口をはさみすぎる。話の流れが悪くなって(まともな方向にしか行かなくて)、読んでいてイライラした。それでも、最初のイラストがいいから、そこを読むだけでもこの本の値打ちはあると思う。
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土と自然に接していることの重要さ。虫の不思議さを感じるアンテナである虫眼を持るように、何かの面白さを発見できるかどうかで案外、幸福が見えてくる。
忙しくマネーゲームをしている人だって、どこかの自然で淡々と暮らしたい思いは持っている。
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宮崎駿による“理想の”まちや住宅のイラストが冒頭に掲げられていて、これがとても素敵である。
養老孟司さんの言葉も、一言一言趣きが深い。
“「お先真っ暗」でいいじゃないですか。だからこの世は面白いんですよ。”
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