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商品説明
世間話、科学、テロ、ビジネス、政治、DNA…、日常に潜む世界のフシギをいぶり出す。哲学の巫女と問う、存在の謎。『本の旅人』誌に「わが闘争」のタイトルで連載されたものをまとめる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
池田 晶子
- 略歴
- 〈池田晶子〉1960年生まれ。慶応大学文学部哲学科卒業。著書に「考える日々」「帰ってきたソクラテス」「悪妻に訊け」など。
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紙の本
人間は、「生きている」、ただそれだけで値打ちは、『ありません』。
2003/01/14 01:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:花代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「考える日々」の続編のような形式。NYテロ事件後に書かれたということで、テロに纏わる彼女の思索も随所に散りばめられている。
原則は、彼女が一貫して訴えている、「存在」のわからなさ、「存在する」ということはどういうことなのか? 「生きる」とは?という疑問に対して、腹を括って己で考え抜けという提言。彼女の答えはない。
「私」が存在することの底抜けの不思議さ。私はこの物質である躰あるいは脳とイコールではない。ではどこからきたのか? 考えれば考えるほどわからないが、そこに答えもない。安易に答えを求めると、半分いかがわしい宗教の世界に入り込んでしまう。「人は誰でも使命を持って生まれてきた」という友人もいるが、私にはそうは思えない。使命はない。単に存在しているだけであって、その存在に意味を与えるとすれば、「善く生きる」ということ。「なぜ売春はいけないのですか」「なぜ人を殺してはいけないのですか」という質問に対する答えはここにあった。「理由などありません。自身で考えなさい、それは善い行いだと思いますか?」 真の善と悪は、われわれは共有している。
彼女はいつも、真っ向から問いかけ、己で考えるべしと説く。形而上でモノゴトを考えているので、形而下の話は皆無に等しい。私は形而上だけで話されると掴めない場合もあるが、彼女が形而下の事象に触れて問いかけてくれると、より理解しやすい。今回の著作では、いくつかそのような事象が現れ、私も理解しやすかった。
「老犬介護で夜も眠れず」の章では、結びに、「生死についての哲学的見解を各自で所持していることと、安楽死制度等の整備が、これから必須のはず」とある。人が「生きる」と「死ぬ」の間に、多く訪れる「老いる」という状態。老いて思考が定かなら問題ないが、さて思考が失われたら? 若い私でさえ、元気な時は死ぬのは怖くないが、病気の時は死ぬのが怖い。難問だと思う。
「天賦の権利は誰のもの」の章では代理母の賛否に触れ、その権利に要求に対して、「人は欲深だから、どこか別のところにそれ(幸福)があるように思い、それを請求する。請求しようにも、誰に請求すればいいのかわからないから、それを社会に請求する。これが今日通用しているところの『権利』の正体(中略)。自分の幸福を他人に請求して、誰の人生を生きているつもりでいるのだろう」と説く。そう、私もTVなどで、「これは私たちの正当な権利です」なぞと大勢でのたまっている人々を見ると吐き気がする。そんな社会に生きることを選んでいるのは、それその人である。
「自分で生きたいと思って生きてるんだから、人のせいみたいに文句を言いなさんな。家族や社会やしがらみだって、その人に生きることを強制することは決してできない。それがイヤなら生きない自由は、いつだってあるのである」。私たちは、どのような事に対しても、「完全に」自由だ。もしくは、「選択することができる」。人や社会に請求するのではなく、自身で「生きる価値」を生み出したい。