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紙の本
日本型サラリーマンは復活する (NHKブックス)
著者 田中 秀臣 (著)
デフレにより、衰退に向かうサラリーマン社会。日本型雇用システムの構造改革が叫ばれている。しかし終身雇用・年功序列・企業内組合という三種の神器は、本当に悪なのか。サラリーマ...
日本型サラリーマンは復活する (NHKブックス)
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商品説明
デフレにより、衰退に向かうサラリーマン社会。日本型雇用システムの構造改革が叫ばれている。しかし終身雇用・年功序列・企業内組合という三種の神器は、本当に悪なのか。サラリーマン社会の実相を歴史的に検証する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
田中 秀臣
- 略歴
- 〈田中秀臣〉1961年生まれ。早稲田大学経済学研究科博士課程修了。現在、上武大学ビジネス情報学部助教授。著書に「沈黙と抵抗」などがある。
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紙の本
快刀乱麻
2002/06/30 23:09
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みゆの父 - この投稿者のレビュー一覧を見る
サラリーマンが「構造化されたデフレ社会」(一九頁)をのりこえ、「働くものの自己実現」(一一七頁)を現実化する方途を、気鋭の経済学者が説いた書。いまやぱっとしない名称になった感のあるサラリーマンだけれど、だからといって馬鹿にしてはいけない。自分も広義のサラリーマンだから余計そう思うのかもしれないけれど。
この本を読んで僕が思い起こしたのは、かつて愛読した山田正紀の冒険小説『アグニを盗め』(角川文庫?)のなかで、ダーティビジネスの専門家に対して主人公のサラリーマンが〈サラリーマンを馬鹿にするなよ〉と一喝したシーンだった。そう、サラリーマンだって何かの専門家であり、プライドがあり、そして生活があるのだ。
そんなサラリーマンに対する風当たりは、ここのところ強くなるばかりだけれど、この本の著者の田中さんは、経済学や歴史に関する知識を動員して、サラリーマンに厳しい通説を片っ端から論破してゆく。たとえば有名な「構造改革なくして景気回復なし」というスローガンは、マクロ経済学からすると、目的と手段がずれている。雇用の流動化によって景気を回復しようという考えは、情報の経済学や現実のデータを見ると、はずれ。いわゆる三種の神器を中心とする日本型雇用システムは構造として耐用年数を超えたという意見は、歴史や労働市場論、さらにはヴェブレンの有閑階級論やハーシュマンの〈エグジット・ボイス〉論に反する。IT化は会社組織のフラット化を進めるとか、サラリーマンの自立が進んでいると主張する説は、現状を調べると俗説にすぎない、などなど。まさに快刀乱麻というか、寄らば切るぞというか。
そのうえで田中さんは、市民社会とも関連する「社会資本を、市場からの規律とエグジット・ボイスの確保によって再構築していく」(二三三頁)ことを提唱する。なるほどなあ。ちょっと「循環」から説明しすぎているところもあるけれど、構造改革賛成派も反対派も一読の価値がある本だ。
紙の本
日本型雇用制の有効性と構造改革(論)の矛盾
2003/01/22 23:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
展望がない代わりに,彼には小泉政権「骨太の方針」の構造改革論を自己矛盾だと論破する視角がある。つまり,中間管理職のヴェブレン財的効能(中間管理職を上に眺めながら下位労働者たちが競争すること),成果主義の濫用可能性(170頁),日本型雇用システムでこそ可能だった能力開発,生産効率の低い(とされる)建設業で解雇された労働者の六割が同じ建設業で再雇用されている実態,雇用される評価点として企業が資格や専門知識などより人柄・やる気,紹介者のお陰などという旧来の理由が点が高い実態,などを列挙し,構造改革が矛盾しているだけでなく実態を無視したものであるという評価を下す視角である。私としては,転職するたびに退職手当や年金が激減する現在の制度を政府が真っ先に改革していないという不作為の自己矛盾をもっと大々的に叩いて欲しかった。ヴェルナー『円の支配者』ではなくとも陰謀説を嗅ぎ付けたくなるほど,政府政策は支離滅裂だ。
出版社退社前後の苦悩がここに木霊(こだま)しているのだろうか? 田中がどうあれ,私には失業とまったく異質な職への転職の経験がある。失業の辛さは経験者にしかわからない。とくに私のように秀でた才能のない凡人には途方に暮れる「引導」だ。大学の独立行政法人化も教員たちは公務員としての立場が確保されたまま実行されたことからすると,大半の教員たちも凡人なのだろう。田中の言う通り,転職先で私の前職で培った(?)知識・技能を活用できる機会に私はいまだ恵まれていない(もっとも“おまえの能力はここに来て以来ずっと減退している”と宣告されたのだから,能力がそもそもないと解釈すべきか)。
財政出動をめぐっては,田中は当然,海江田万里『「国のお金」のしくみがビシッとわかる本』と副島隆彦『逆襲する「日本経済」』ら均衡財政主義者と対立し,したがってガルブレイス『「よい世の中」』や植草『日本の総決算』や鈴木淑夫『日本経済の将来像』ら積極財政派の側に立つ。ITについては,森谷正規『IT革命の虚妄』の側に属し,篠崎『情報革命の構図』やドラッカー『ポスト資本主義社会』とは評価が正反対。
ところで,田中は,猪瀬直樹を編集長に戴くメールマガジン『日本国の研究』に参加・寄稿している。猪瀬といえば,もちろん,構造改革派の旗手。こういう「和して同ぜず」な雰囲気って幻想のようで羨ましいけれど,実在するんだねぇ…。
(著者『書名』については,すべてreview japan,BCKTs_folder参照)