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橋本治氏による「源氏物語」の翻訳小説としては最も優れた作品です!
2020/08/24 10:26
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『桃尻娘』、『江戸にフランス革命を!』、『蝶のゆくえ』、『双調 平家物語』、『草薙の剣』などの傑作を発表してこられた小説家であり、評論家でもあり、随筆家としても活躍された橋本治氏の作品です。同書は、歴史上最も優れた文学である源氏物語の翻訳小説で最も優れた作品として評価されているものです。源氏物語の特徴として話者が不明かつ代わることにあるが、釜変版は常に光源氏の視点によって語られていいきます。光源氏が過去を振り替える『一人の男』として、心情を吐露していきます。本文の趣を失わずに現代人にも非常に共感しやすい文体で物語を再構築していく筆者の文力には脱帽せざるを得ません。 全17巻シリーズの最初の書を飾る構成は「桐壺」、「帚木」、「空蝉」、「夕顔」となっており、どの話も興味深いです!
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愛もまた冷たく
2016/12/22 19:40
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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
数ある源氏物語の中で最も好きな作品。登場人物は皆 滾る熱情も深い愛も持っている。だがそれらは全て冷たい何かと隣り合わせの感情に思える。光源氏も自らを芯から冷えた目で見て 愛する人を見る視線にさえに冷え切ったものが混じっている。そんな彼は冷たいからこそ美しく人を引きつけてやまないのだから罪深い。
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フランス小説を書くつもりで、源氏物語を書いてみたらこうなった──らしいです。
中に挟まれたモノクロの外国人のモデルさんの写真が綺麗。表面的な事だけを見るとそんな感じですね。
では、中身を見てみると……。
後に出版された『源氏供養』を読んでも思った事ですが、源氏物語が生まれてからこの方、沢山の訳者さんがいらっしゃいましたけれども、本当の意味で『源氏物語』を理解し、私に理解させたのは橋本治だけではないかと思います。
それくらいリアルに物語の中に入っていける。
光源氏の息が感じられる。
ただ古典をなぞった話ではなく、それを踏まえつつ全く新しい話としてまさに『窯変』させた物語です。
言葉遣いも口語で読み易い。
私はリアルタイムで出版されていた高校生の時に、図書館に購入希望を出して読みました(学生には高い買い物でしたので…)。
丁度古典の授業で源氏物語をやっていたのでかなり助かりました。
話の粗筋は知っていたのですが、古文を読んでもその訳文を読んでも「誰が何をどうしたいのか」が婉曲な表現で煙に巻かれ、今ひとつ雰囲気が掴めなかったのに、この本を読めば一目瞭然。
橋本治、この時代に生きてたんじゃないの?と思うくらい。
本当に天与の才だと思います。
妖しいお話が好きな方にもオススメ。
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「女人」を入れたのでこちらも。「女性の物語」である源氏物語に男性視点で切り込んだ斬新な解釈が面白い。
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日本が誇る長編古典小説を、豪華絢爛にして残酷なまでに美しく蘇らせた『橋本版 源氏物語』
幾多の『現代語訳』や、手を替え品を変えて描こうとも<橋本源氏>には及ばないとさえも思ってしまう。
紫式部が紡いだ<源氏物語>と、橋本治によって我々に語りかけてくる光の君によって語られる<源氏物語>、巧妙な舞台に圧倒される快感は麻薬的。
ヒトが生み出すドラマの容赦なさを、確信的な微笑みで…抗うことの敵わない魅力ともに「如何?」と、優雅に差し出されて…迂闊にも、わたしはしっかりと彼の手を掴んでしまったのだ。
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長いので一巻だけとりあえず。
源氏の現代語訳でも特殊なものの中のひとつですが、これが一番好きです。
光の君視点の、源氏。
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文体に酔った。酔って最後まで読みきってしまった。深く考え込んでいるのでなければ人はシンプルに生きているもの。
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華麗で豪華で悩ましい日本語の洪水に飲み込まれその勢いに圧倒されて中途挫折した『橋本源氏』
悔しい。いつか挑戦してやると思いつつ。
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内容紹介:絢爛豪華で重てく難解で、でもやっぱりそこにあるのは人間のドラマで、千年前に、人はこんなにも豪華に現代の悲惨を演じていたという、そんな話。(「BOOKS」データベースより)
資料番号:011220944
請求記号:F/ ハシモ/ 1
資料区分:文庫・新書
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新しい切り口の『源氏物語』。
いやこれエロいだけ…
寂聴源氏は女性の、それも年のいった女性によるものなので、
若くてギンギラギンしたナイスガイにはこっちのが向いています。
ヘンタイならより効果的です
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源氏物語を光君という『男性の視点』で書いている。今まで読んだ源氏物語の中では一番好き。4巻までしか持ってない(´・ω・`)
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桐壷、帚木、空蝉、夕顔が収録さるています。
光源氏の一人称で読みやすかったです。藤壷との恋が切なくてグッときます。
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とりあえず、1巻にレビューつけときます。
私にとっての源氏物語はもう橋本源氏以外には考えられません。
橋本源氏は光源氏による一人称の小説です。
光源氏という特殊な男の視線から描かれることで
多様な側面を浮き彫りにする物語。
しかも橋本治が憑依してるから面白くないわけがない。
きちんと原文を読んでいるわけではないので、
どこまで彼の(補助的な)創作なのかあいまいなんですが
キャラクターが見事に肉づけされて、
豊かで深みのある複雑な味わいがあるのです。
源氏物語
=光源氏という絶世の美男(プレイボーイ)があまたの美女と繰り広げるラブアフェア、
な単純を絵にかいたような認識の枠には全く収まらない壮大な人間模様。
橋本源氏を読んでいると、
女は政治の道具であり、自身(と一族)にとっての重要な駒であり、
同時に政治を超えた個人の愛と性愛の問題であり、
しかしながらやはり個人の問題だけに留めることのできないものであり、
と、実に複雑に入り組んだ関係性であることが分かる。
この駆け引きや、予想外の展開で様相を変えていく自分の位置、
なんてのがもう本当に面白いのだ。
もちろん話者である光源氏個人の考え方、
ものの見方も掘り下げてあって唸ってしまう。
言葉の美しさにとことんこだわった文章も素晴らしい。
情景描写を読むだけで目眩がするような鮮やかな映像が頭の中に浮かんでくる。
日本語ってこんなに美しくて味わいがあって豊かなんだと再認識。
カタカナを一切使わず、日常では出てこないような絢爛豪華な言葉や漢字でも
浮きあがらずに流れるような自然さで繋がっていく。
セリフの中に出てくる古語も違和感なく、
むしろかつて持っていた知識をくすぐるような感じがイイ。
このへんはもう橋本治の持ってるインテリジェンスとセンスに裏付けされて
間違いがない。
これまでもう何度も読み返している橋本源氏だけど、
読むたびに新鮮で気がつくことが多い。
忘れてるだけと言う話もありますが。
今回は特に登場人物の描き方に唸りまくってしまった。
一般的な源氏の本や入門書にあるような類型的な性格や特徴ではカバーしきれない
もっと入り組んで、その人物自身ですら把握しきれないでいるような様々な要素が
光源氏の目線と、光源氏になりきった橋本治の冷徹な観察眼を通して
重層的に描かれている。
おそらく女性の人気が高いであろう夕霧なんかは
もう身も蓋もない性格描写が、さらっと、それでいて言葉を変えて何度も出てくるあたり、
なるほどなあ、と何度もニヤっとしてしまった。
光源氏の子でありながら、低い階位を与えられ、
勉学に励み階位を自ら登って行き、
同時に幼馴染に一途な思いを持ち続け、最後には一緒になる、
なんて女子好みの、真面目でひたむきで健気な美しい男、
というのが一般的な夕霧像なのかもしれないけど
むしろ夕霧の実直といえば聞えのいい子供っぽい頑固さとか、
頭でっか��で融通の効かないセンスの無さとか、
何考えてるのかよくわからないとりとめのなさとか、
実に鮮やかに人物像が浮き上がる。
で、最後の落葉の宮への対応の残酷さ(本人分かってない)なんかが
「うわーありがちー」とストンと腑に落ちたり。
あとわりと好印象だった花散里も、
最初に出てきた時は存在感の希薄なジミな登場だったのが意外だった。
源氏が長く面倒を見た女人の中ではかなりの厚遇だが
美人でなくても、気立てとセンスと控えめさである一定の位置をキープできている、
というのがよく分かる。
なんかお母さんになった妻、って感じなんだよね。
源氏からすれば、家のことは任せて自分は外で好きなことやって、
一応大事にしてるけど抱くほどじゃねー、という。
でも花散里の方も別にそれでいいやと思ってて、生活には困らないし、
子供の世話なんかをやいて満足しているというところが。
でもわりと女性の共感は得やすいような気がする。楽そうで。
皇太后(弘徽殿)は、きっと書いてて楽しかっただろうなあと思う。
筆がイキイキしてるもんなあ。
源氏の中でははっきりとした陽性の悪役で、
敬われ丁重な扱いを篤く受け、影響力も持っているのだけど、
誰からも女性として扱われてないというのが不憫。
逆に藤壺は捉えどころがないというか、
実際に何を考えていたのか分からないし、
政治的な面で力を見せて動いてくるあたりも不気味な印象。
翻弄される源氏のことも生まれた子供のことも、結局どう思っていたのかと
何か引っかかりが残る。
また次に読んだ時に、違う印象を持つかもしれない。
好きなのはやっぱり紫の上ですかねえ。
少年のようなきっぱりとしたまっすぐな性格と
屈託のない愛らしさ。
美しさと幸せに満たされた後に待っている、徐々に苦しめられていく終盤は
読んでいて胸が苦しくなってくる。
今回読んで一番印象に残った帖は「野分」かなあ。
台風をはさんで源氏が六条邸の各町を見舞っていく話で
それぞれの女性たちの性格やら、
見事な庭の前栽が風や雨でなぎ倒される様が
美しい言葉で描かれていて。
この時の嵐を楽しむような紫の上が魅力的なんだよねえ。
源氏物語は女人だけでなく、男たちも個性的で面白い。
朱雀院のなよなよとしてるのに執念深いところは、
最後のクライマックスに行くほどに存在感を増して気持が悪いのなんの。
イメージとして春風亭小朝が浮かぶのはなんでだろう。
ついでにイメージが浮かぶのは朱雀院の息子の春宮=ルーニー。
若いのに偉そうで好色なところとか。
色白でむちっとしてる感じが浮かぶのだ。
橋本源氏を読んでると、
それぞれの人間的な部分がとても濃く印象に残る。
平安の時代に厳然としてあるのが身分。
それに基づいたたくさんの決まりごと。
どうにもならない出自を、
娘という武器を足がかりに、出世の糸口を見出す男や女の思惑、
情勢によって移ろう栄華と浮き沈み。
明石の一族や玉鬘の物語は当時の人にどんなふうなインパクトがあったのかと。
服喪の期間も墨染の濃さも身につけていい色もきちんと決まっているような社会で
思いをかけることの際どいバランス。
簡単に行き来できない距離や身分、顔を見ることが性交渉に繋がるような距離感、
今ではとても想像できないような時間や距離の感覚が
読んでいていっそうもどかしさを感じて引き込まれていくんだよねー。
あとは宮中や季節ごとの行事などがとても興味深い。
五節の舞姫選出のエピソード、伊勢へ下る斎宮を朱雀院が送るシーン、
五十日の祝い(いかのいわい)や三日夜の餅、
薫物合せや女楽、と読んでいるだけで美しいイメージが膨らんでくる。
少しでも興味のある方には、橋本源氏はものすごくお勧めなんだけど
いかんせん量が膨大なのでね。
でもどんどん読みたくなる内容ですよ。
http://takoashiattack.blog8.fc2.com/blog-entry-1951.html
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他の方のレビューでは絶賛されている方が多く見受けられました。
が・・・残念ながら私は好みではありませんでした。
男性目線で書かれているところも好みではなかったし、フランス小説を意識したところ(?)なども・・・。
切り口が斬新だとは思いましたが、個人的におすすめの一冊ではありません。
男性が読まれるのなら面白いのかもしれませんね。
※〈1〉以降省略※
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全巻大人買いしちゃいました。まずは一冊目。とてもおもしろかったです。この本を初めて知ったのは遥か昔「小学六年生」という雑誌の付録小冊子で、荒俣宏さんが選ぶ百冊みたいな企画でした(チョイスがものすごく大人向けだった。「日々の泡」や「楢山節考」など。辛口チョイスで実に渋いです)。
手に取るまでには実に二十年(…)くらいかかりましたが、本当いいですね〜。原文は語り手不明ですが、この橋本源氏では光君の一人称という明快さです。何だか光君がとても著者に愛されてると思いました。橋本さん光君に萌えすぎというか。「雨夜の品定め」のシーンでは光君の少しシニカルなものの見方が女性的で興味深いです。
あと小君とのシーンが少女漫画的でいいですね。BLです(?)。空蝉の凡庸なれども頑なな存在感がリアルだなーと我が身に重ねて思いました。一般職の地味系OLさんみたいな。夕顔はかわいそうですが…。個人的には頭中将が大好きなので、彼が今後どれだけ活躍してくれるかを期待したいです。私は非常に好きな訳(?)ですね。源氏物語は女たちを通じて男たちが結びついている物語のように常々感じていたのですが、この本でも「頭中将は(中略)女から女へと渡り歩き、しかしその実、暗闇の中で女達の父親達と手を握る」という比喩があり唸りました。この時代、女性との付き合いは戦略的なものがありますね。続きが楽しみです。