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ラスト・ブックマン
20XX年、紙の本存亡の危機に乗じ、あらゆる書籍を独占しようとする企業、調和社に対抗する書店管理官の活躍を描くSFギャグコミック。2002年刊「DAI-HONYA」続編。...
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THE LAST BOOKMAN ラスト・ブックマン
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商品説明
20XX年、紙の本存亡の危機に乗じ、あらゆる書籍を独占しようとする企業、調和社に対抗する書店管理官の活躍を描くSFギャグコミック。2002年刊「DAI-HONYA」続編。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
とり みき
- 略歴
- 〈とり〉漫画家。「DAI−HONYA」および「SF大将」で星雲賞コミック部門受賞。
〈田北〉漫画俳優としてとり・みき作品に出演。下北沢の書店に勤務する。
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本の未来を予見する 「DA-HONYA ダイホンヤ」続篇
2020/11/05 18:55
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投稿者:あずきとぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
初出:「月刊コミック トムプラス」2000年7月号~01年4月号
カバー見返しより引用
二〇××年、活字文化は衰退の一途をたどり、わずかに残った書店さえ廃業に追いこまれつつあった。
情報ネットワークを運営する企業、調和社はこれに乗じて、あらゆる書籍を情報として独占することをもくろんでいた。
愛する一軒の書店を守るため、巨大勢力に立ち向かう書店管理官の運命は?
『DA-HONYA』続篇。
(引用ここまで)
同作者による「DAI-HONYA ダイホンヤ」(1993年)の続篇である。
前作で描かれた世界を引き継ぐ。
コンピューターネットワークの普及と世界的森林資源の不足により衰退する活字文化。
その保護のため制定された「書店法」は、大資本の介入による巨大書店・出版社への独占を招く。
本にまつわる付加価値は種々に肥大化し、書店内における凶悪犯罪に対処すべく武器の携行を許可された「書店管理官」が生まれた。
さらに、情報ネットワーク企業「調和社」は、無料携帯端末による書籍データの有料配信を独占的に運営し、地上に現存するすべての書籍をデジタルデータ化するべく、わずかに残る書店などへの大規模な買取で、紙の本の独占を進めていた。
一方、各地の書店や図書館では、建物が爆破されるなどして、本が根こそぎ強奪されるテロ事件「ゲオルグ」が相次いでいた。
一級書店管理官、紙魚図青春(しみずせいしゅん)は、かつての恩義ある勤め先である書店を「ゲオルグ」から守るため、思い出の地に帰ってきた。
前作の舞台は地上200階建ての巨大書店で、物語は垂直方向への移動と共に展開していたが、今回は草木がほとんどなく地肌が露出した地面の上を、空風に吹かれたタンブルウィードが転がるような西部劇風の土地が舞台だ。
荒地にぽつんと建つ一軒の書店を中心に物語が展開する。
特筆すべきは、2000~01年連載であった本作の先見性だ。
まずは、電子書籍の普及。
専用携帯端末の使用と有料(従量)配信を、このとき既に予見していた。
そして、無線インターネット網の整備。
作中では、荒地のただ中にあっても地上のどこからでも無線でインターネットに接続できる。
作品発表の十数年後、ようやく街中にwi-fiが飛び交うようになったが、人家も無い荒野でも自由にネット接続できるようになるまでには、あと何年かかるだろう。
また、紙の本の衰退と実店舗としての書店の激減は、正に今我々が直面している実状である。
今回、最もSF的設定は、無線インターネットを介して活動するハッカーや違法プログラマーなどが集住することで形成された「村」=伝波村(でんなみそん)。
村の西部劇風の酒場で客が皆オタク然としていたり、ウェイトレスがコスプレしていたりするのが、面白い。
また、前作での女性キャラはほぼ美女アンドロイドだけだったが、今回はメインキャラに女性キャラが増えたのがちょっと嬉しい。
全編にギャグが散りばめられており、決して固い作品ではない。
公称ジャンルは、SFハードボイルドギャグコミックである。
クライマックスは、書店を巡る攻防となるが、前作同様ピンチに次ぐピンチ、二転三転する展開に目が離せない。
書籍に折り込まれた新刊案内の本作の欄には、以下の文句がある。
「紙の本を愛する全ての人と全国の書店店員の方に捧げます」
まずは、紙の本が好きだという人に奨めたい。
(本書が、電子書籍のみになってしまったのは、実に皮肉なことですが)