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商品説明
悪党・八神俊彦が生き方を改めようと、骨髄ドナーとして白血病患者の命を救おうとしていたその日、都内で未曾有の無差別大量殺人が! 友人の死体を発見した瞬間から、必死の逃走劇が始まった。八神は生き残れるのか…?【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
高野 和明
- 略歴
- 〈高野和明〉1964年東京都生まれ。映画・TV等の撮影現場でメイキング演出他を担当。89年渡米、映画演出・撮影等を学ぶ。帰国後、映画・TV等の脚本家となる。「13階段」で江戸川乱歩賞受賞。
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紙の本
スピーディな展開で読ませるが、リアリティが欲しい
2003/03/24 02:41
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:露地温 - この投稿者のレビュー一覧を見る
プロローグで、「第三種永久死体」という死んだときのままほぼ完全に保存された状態の死体が発見され、さらにその死体が盗まれるという事件が描かれる。そしてその謎は宙ぶらりんのまま本編は始まる。
主人公は小悪党の八神俊彦。なぜか仏心を起こして骨髄ドナーに登録し、折しもその骨髄移植のために病院に行こうというその前日のことだった。他人に貸していた自分の部屋に戻ると、その男は死体となっていた。しかも単純な殺しではなく、煮立った風呂の中に死体は浸かっていたのだ。
一体何が起こったのかと訝しむ八神の元に謎の男達が現れ、突然襲いかかってくる。なんとか男達から逃げ出した八神は、病院へと向かうのだった。八神が明日までに病院に辿り着かなければ、彼の骨髄を待つ患者は死ぬことになるのだ。一方、死体が見つかったことにより警察もまた八神を重要参考人として手配していた。そしてそれだけでなく、警察は同じような奇妙な変死体を続けて発見していた。どうやら謎の変死体は、甦った死者−−グレイヴディッガーが異端審問官を皆殺しにしたという伝説と同じ殺し方で殺されているようだ。
次々と起こるグレイヴディッガーによる殺人事件の謎は? そして、警察と謎の男達から追われる八神は無事に病院にたどり着くことができるのか?
といった話。グレイヴディッガーの謎は冒頭の死体消失とも話が繋がり、刑事警察と公安警察の捜査で謎を解いていく一方で、八神のスピーディな逃亡劇が繰り広げられる。八神の逃亡劇は次から次へと展開が速いのはいいのだが、かなりご都合主義的な展開が多く、荒唐無稽な感じがしてしまう。地道な警察の捜査によって真相が見えてくるところは面白いのだが、八神の話と警察の話が繋がり、犯人が見えてくる辺りでは、どうも事件の真相解明が消化不足という感じだ。特に最初の死体消失、グレイヴディッガーの必然性などが断然物足りない。
終盤、山場が何度かあるのだが、いずれも荒唐無稽かご都合主義といった感じで、スピーディな点だけは認めるが、正直いってがっかりした。漫画だったら面白く読んだのかもしれないけれど、もう少しリアリティが欲しいところだ。
紙の本
「甦った死者=グレイヴディッガー」の獲物は何か?
2002/08/23 15:15
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タカザワケンジ - この投稿者のレビュー一覧を見る
悪党面の男がいる。少年時代から恐喝、詐欺を繰り返し、32歳の今、若々しさを失った狡猾な犯罪者の顔にできあがってしまった。そころが、その男、八神が一念発起、骨髄移植ドナーになり、病気に苦しんでいる人を救おうとする。
入院前に自室に帰ってみると、、安全上の理由から部屋を交換していたホストの島中が、両手両足の親指を縛られ、沸騰した湯船に沈んでいた。うろたえる八神。そこへ、正体不明の男たちが乗り込んでくる。八神は反射的に逃げ出し、赤羽のアパートから、一路、大田区六郷の入院先をめざす。
東京の北の外れから南の外れまで、水上バス、電車、タクシー、モノレールを乗り継ぎ、追っ手をまき、警察の捜査網を逃れ、小悪党はひたすら逃げまくる。
捜査を開始した警察は、島中以外に同時多発的に殺人事件が起こっていることに困惑する。しかも、その殺し方は中世魔女狩りの時代に、イングランドで異端審問官たちを殺していった「甦った死者=グレイヴディッガー」の手口そのままだったからだ。犯人は現代の異端審問官を手に掛けようとしているのか。被害者に共通しているのは骨髄移植ドナーだという一点だけだった……。
第47回江戸川乱歩賞受賞作『13階段』が絶賛を浴びた高野和明の第二作。俗に「二作目のジンクス」などと言われるが、高野の場合は無縁だったようだ。現代医療の最先端である骨髄移植から、中世の魔女狩り、公安のエス(スパイ)工作、カルト教団など、多彩なモティーフを盛り込み、気を逸らせない。
スピーディーな展開もさることながら、主人公八神の憎めない小悪党ぶりと、ユーモアのセンスが緊迫感のある物語に緩急をつけ、読み応えがある。読者諸兄は、最後のページを繰って、期待が裏切られることがなかったことに満足するはずだ。『13階段』が決してフロックでなかったことを証明する傑作! (タカザワケンジ/bk1エディター)