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商品説明
【JCJ賞(第46回)】「南京大虐殺」をめぐる重い、長い沈黙。元兵士らは、四年間に及ぶ市民の執念の聞き取り調査に、その口を開いた。圧倒される生々しい告白。閉ざされた真実を白日の下に描き出した記録。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
松岡 環
- 略歴
- 〈松岡環〉1947年生まれ。小学校教員。銘心会南京友好訪中団団長、南京大虐殺60カ年全国連絡会共同代表。
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紙の本
貴重な証言の中に歴史の重み
2003/02/11 11:23
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:山本圭一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
平成14年8月15日のニュース・ステーションで紹介された1冊。内容については南京戦に参加したとする証言者達の記憶に基づく証言をそのままの言葉で紹介されており、方言や専門用語などが時折登場しているのも貴重である。「ソ連製のチェッコ」や「(南京の)租界には外国人がいるので」などという現在を生きる我々にも新鮮である。ご一読をお奨めしたい一冊である。
紙の本
間違いだらけの南京虐殺−史実を示すべき
2003/08/25 11:14
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、いわゆる「南京虐殺」の証言集である。
だが、著者が言うように「戦争を知らない若者や子どもに、一人ひとりの兵がどのような悲惨な体験をしたのかを聞かせていただき、平和の大切さを伝えたい」ということであるなら、中国軍による通州日本人虐殺やソ連軍による日本人への蛮行などの証言集でも出版してみてはいかがだろう。
日本の「加害の歴史」を糾弾するばかりではなく、「被害の歴史」も明らかにしなければ公平を欠くというものだ。
本書は、一貫して中国が善玉、日本が悪玉、という視点で編集されており、南京虐殺に至る基本的な史実には一切触れられていない。
なぜ南京虐殺が起こったのか、という点についても、「中国に向けられた飽くなき領土的拡張と収奪を追い求めた日本の天皇制帝国主義」などが原因というように、ピントはずれのことを書いている。
そもそも南京虐殺には大きな伏線があるのである。
日本軍の攻撃を受けた南京守備隊の唐生智という指揮官は、部下には徹底抗戦を叫びながら、自らはこっそりと南京を脱出し、逃走してしまったのである。残された中国軍守備隊は指揮官を失って大混乱に陥った。軍服を脱ぎ民間人になりすます兵士が続出したのである。彼らの多くは武器を持ったまま民家に隠れた。これは明らかな国際法違反だった。この混乱の中で中国兵による民間人虐殺や略奪なども行われたとも言われる。そこへ進攻してきた日本軍は彼らを掃討しなければならなかったのである。
南京虐殺の原因として、抽象的な日本悪玉論を並べるのではなく、当時の日本軍と中国軍の動向や南京城内の状況など、具体的な史実をきちんと示すべきだ。
民間人になりすました敵兵が民家などからゲリラ的な攻撃を仕掛けてくる。そうした状況を想像してみよう。南京虐殺について全く違った見方ができるのではないだろうか。
それでは、そもそも日中戦争はなぜ起こされたのか。これには諸説あるようだが、歴史学者が明らかにしている有力な説としては、日本軍にはもともと侵略の意図があったわけではなく、中国側からの度重なる挑発を受けて、それに応戦したまでということである。それを裏付けることとして、当時の日本軍は首都だった南京を陥落させれば戦争を終わらせることができると信じていたようだ。
決して著者が言うように「日本軍による挑発」で起こされた戦争でもなければ、「領土的拡張」を企図して南京に攻め込んだわけでもないのである。
著者の歴史認識は根本的に偏っている、と言わなければならない。そうした歴史認識を持つ著者が編集したものだけに、本書は極めて偏向した証言集になっているのである。
私は「加害の歴史」を記すことが悪いとは言わない。でも、なぜ「被害の歴史」は書かないのか。戦闘の陰で日本人民間人が悲惨な目にあった例は多いのである。
2003年7月8日の産経新聞には、ソ連軍の慰安婦にされた日本人看護婦の事件が読者からの投書として掲載されたばかりである。
そうした埋もれている「被害の歴史」を掘り起こそうという発想はないのだろうか。極めて残念なことである。
紙の本
一次資料の迫力
2002/09/10 12:15
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:守屋淳 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日中戦争において、大虐殺があった、いや幻だったといった論争が続いている南京戦。本書は、南京に実際に従軍した元兵士たちの声を丹念に拾い集めた証言集だ。戦後生まれの人間にとっては、経験しようのない戦争の狂気が、圧倒的迫力で語られている。南京戦の一次資料として、何より戦争への参加が他人事ではなくなりつつある今の国際情勢において、幅広く読まれて欲しい好著だ。
本書では、特に「戦争」がごく一般の人間をどう追いつめ、どう変えていくかという過程——いくつもの証言から垣間見えてくるのだが——が白眉のひとつになっている。まず、当時の日本兵たちは、戦争や捕虜の扱いについて何も教育をうけていなかった。実際、《〔ハーグ条約について質問すると〕そんな教育は、日本の軍隊はやらん。「捕虜になったら死ね」というだけや。捕虜をつかまえたら、殺そうと何しようと仕方ないな》といった証言が複数ある。当然、現地で足手まといの捕虜や、怪しい一般民は処刑の対象となっていく。
しかも南京戦では、本土からの食糧の補給など一切ない状態だったらしい。兵士たちは、空腹を満たすために略奪をせざるを得ない。まさに、近所にごく普通にいそうなおじさんたちが、《一線に出ているもんは人間が鬼になってしまうことがありますなあ》という状態に変貌をとげていく。日本の戦前の教育や為政者、軍指導者たちの罪深さが、ひしひしと感じられる部分だ。
さらに、本書では戦場でのディテールが、とても生々しく、リアルだ。
《弾は音している間は大丈夫や。そやけどわしの隊長は、「チュン、チュン言うたら気を付けよ。前撃っとんやで。“ヒュン、ヒュン言うやつは上越しとんやで”と言うとった》
《その場で強姦する人もいるけれど、強姦する時は一人では絶対にやらない。逆にやられることがあるので、二人以上の時にやるんですよ》
《多数の死体が漂うクリークの水でご飯を炊いた。その水は死体の血などで腐った水でね。炊いたご飯がそのために変色していましたが、それでもやむなく食べるしかなかった》
些細な記憶の断片が、戦争のリアリティを実感させる。
また、肝心の南京大虐殺の有無や規模に関しては、本書では《南京大虐殺はあった。自分がこの眼で見てきたことや》という肯定派から、《南京行った連中から聞いてもらえれば、おそらくみんな「あんなに殺してへん」と言うと思うわ。自分の部隊だけでそんな何万もころされへんもんや》という否定派まで(ただし、肯定派の方がかなり多い)、幅広く収録されている。
願わくは、南京大虐殺の有った/なかった、といった立場を問わず、このような証言が今後とも調査・発表されることを望みたい。真実を眼にしているのは、当時、その場に立ち合った人々だけなのだから。 (守屋淳/著述・翻訳業)