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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:2002.9
  • 出版社: 新潮社
  • サイズ:20cm/397p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:978-4-10-353413-6

紙の本

海辺のカフカ 上

著者 村上 春樹 (著)

【世界幻想文学大賞】15歳の誕生日、少年は家を出た。一方、ネコ探しの老人・ナカタさんも、西へと向かう。暴力と喪失の影を抜け、世界と世界が結びあうはずの場所を求めて−。長篇...

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海辺のカフカ 上

税込 1,760 16pt

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商品説明

【世界幻想文学大賞】15歳の誕生日、少年は家を出た。一方、ネコ探しの老人・ナカタさんも、西へと向かう。暴力と喪失の影を抜け、世界と世界が結びあうはずの場所を求めて−。長篇書下ろし。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

村上 春樹

略歴
〈村上春樹〉1949年京都府生まれ。早稲田大学卒業。小説家。著書に「ねじまき鳥クロニクル」「アンダーグラウンド」「うずまき猫のみつけかた」「レキシントンの幽霊」など。

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みんなのレビュー252件

みんなの評価3.9

評価内訳

紙の本

こんなに笑ったなんて、何年ぶりだろう。それも大声を出して

2002/11/18 20:53

11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

笑った。こんなに愉快な本を読んだのは何時のことだろう。最近では泣く本には当たるけれど、声をあげて笑ったのは、中島らも『寝ずの番』以来だろうか。大分前なら井上ひさし『表裏源内蛙合戦』、小林信彦『ちはやふる奥の細道』、『O・ヘンリー傑作集』、山田風太郎『天国荘奇譚』、いやいや海渡英祐の吉田警部補シリーズかもしれない。外国ものならフロストだろうか。そんなことを友人に言ったら、彼女は小林信彦『唐獅子株式会社』と浅田次郎『巣鴨プリズン』をあげた。そんな彼女も、カフカには笑ったという。そう、極上のユーモア小説。

主人公は二人、一人は作品の中で自分のことを田村カフカと呼ぶ15歳の少年。彼が誕生日に家出するというのが、とても自然。小中学校と孤立して生きる事を選んだというのも現代的。少年が考えた末に、家出先に選んだのが暖かい四国。そこに向かうバスで知り合ったのが、さくらさん。少年のビジネスホテル暮らしが始まる。午前中は公営の体育館で汗をながす。それから私設の甲村記念図書館に出かけて、読み残していたバートン版『戦や一夜物語』や『漱石全集』などに閉館まで目を通す。館員らしからぬ大島さんや、清楚な佐伯さんとも顔見知りとなって穏やかに過ごす日々。それが8日目におきた事件で終わりを告げる。

もう一人はナカタサトル。1944年の11月、引率されて行ったきのこ狩りの野外実習で起きた、16人の子供たちが相次いで倒れ意識を失う事件。その中で9歳のナカタだけが記憶を完全に失う。現在は、知事から補助を受けながら中野区を出ることも無く暢気に暮らしている。彼の好物はうなぎ、特技は猫と話ができること。気になるのは知事からの補助が打ち切られること。いま、彼が探しているのがゴマという三毛猫。ゴマを知るカワムラさんと名付けた猫との珍問答、ミミというシャム猫登場と、彼女の恐ろしいまでに冷酷な訊問。

カフカと大島さんとの対話、哲学的な話もだが、シューベルトのピアノソナタを巡る会話は奥が深い。喫茶店でベートーヴェン/大公トリオを巡る話や、ハイドン、そしてチェリストのフルニエについての話も、クラシック・ファンの心を擽る。それから図書館で繰り広げられるフェミニズム論争の緊張感もいい。笑えるのがナカタさんとカワムラとの噛み合わない会話。そしてミミが繰り出すビンタ攻撃。

しかし、圧倒的に楽しんだのは下巻。星野さんが登場するに及んで、どちらかと言うと静的だった話が、大きく動き出す。彼とカーネル・サンダースとの深夜の会話には、思わず吹き出してしまい、そばで勉強していた娘に「そんなに面白い?」と聞かれてしまった。それからも何度も笑ったのだから、かなりのものである。ギリシア悲劇にも似た憬れの女性との関係も、幽明の世界での出来事のようで、甘美。

スキャンダラスな事件小説では味わえない貴重な体験。娘の通う女子中学で、かなりの数の生徒がこの本を読んでいるという。ここには、金にまみれてしまった日本人の心を大きく転換させるであろう何かがある。それが大江健三郎の小説でも重要な四国を舞台にしているというのも面白い。戦争や音楽が小説に影を落とすところもだが、ナカタさんの会話を読むと、どうしても大江の小説を連想してしまう。

浮遊したようなニュートラルな世界。優しい言葉遣い。性的な幻想。奇妙な人間たち。壮大な神話世界の投射。実在の都市すら仮想であるかのように描かれるのに、他のどんな小説よりも、そこにいる人々の息遣いが間近に聴こえてくる確かな世界。「海辺のカフカ」を一緒に聴いてみませんか。

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紙の本

冒険することの必要性。

2006/01/18 02:16

6人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:dimple - この投稿者のレビュー一覧を見る

『海辺のカフカ 上・下』(村上春樹、新潮社、2002年)を読了。新潮社エッセイを除けば、村上作品を初めて読んだことになる。今までは正直に言って、村上作品を読む気持ちになれなかった。
というのも、商品名を多用した文体が安っぽい商業コピーを思わせたし、何より時代錯誤的なアメリカ文化への崇拝が感じられたからである。
今回の作品に関しても、そのような傾向がないわけではない。15歳の主人公が60年代のアメリカ音楽に精通しているのは多少強引に感じる。また、商品名にいたってはこんな感じである。
「父が大事にしているロレックスのオイスターを持っていこうかとも思ったけれど、迷った末にやめた。その時計の機械としての美しさは僕を強くひきつけたが、必要以上に高価なものを身につけて人目をひきたくはなかった。それに実用性を考えれば、僕が普段使っているストップウォッチとアラームのついたカシオのプラスティックの腕時計でじゅうぶんだ」(上巻10頁)
しかし、こういった点は今回はあまり気になるほどではなかった。何より内容が素晴らしいのだ。本作品は15歳の田村カフカが家出をすることから物語が始まる。
そして、この物語の通奏低音として、ギリシャ悲劇『オイディプス王』、すなわち、父を殺し、母と交わる話が流れている。
なぜ、『オイディプス王』なのか?おそらく、現代日本の青少年と、それを取り巻く家族を描くためであったと思う。
しかし、それは悲劇では終わらない。現在を受け入れた上で将来へ前進することができる、というメッセージを控えめながらも村上は提示している。
では、前進するためには何が必要なのか?それは「冒険」であると思う。若者は冒険することで自ら学ぶのである。
村上は、家出をし、父を殺し、母と交わる少年を描くことで、極端な形ではあるが、若者に対して冒険することの必要性を訴えているのではないかと思った。

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紙の本

村上春樹はウソをつくのをやめたのかもしれない。

2003/03/19 10:12

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ひろっち - この投稿者のレビュー一覧を見る

この小説にはたくさんの引用が登場する。それはかつてのようにただの書物内の引用とはなにか違う。それはまるでWEB上のハイパーリンクのようだ。クリックしたければすればよい。そのまま、無視して読み進んでもいい。引用と本文の関係がかつての関係とは違って見える。
そんな風に思えるのも、この小説が変化の時代の知識や言葉に関する小説だからだと思う。文字の読めないナカタさん、過去にこだわる15歳の少年、記憶のなかに生きる女性…。記憶や言葉/文字、知識をめぐってはりめぐらされた挿話の数々は、さまざまなコントラストを描きながら、頭のなかの凝り固まった思い込みを、やさしく、ゆるやかに、壊してくれる。村上春樹という小説家に対する固定化したイメージ、小説というもの関するある姿などという嘘、ありもしない答えやノウハウ等等が、頭のなかでゆっくり形を失っていくさまが心地よい。
村上春樹は「書を捨て街に出よう」などとは言わない。書は捨てられないし、街には出なくてはいけないだろう。だが、問題はそんなことではなく、人の数だけ、書も街も存在し、それを他人と共有することがどれほど困難で、苦しいことなのかということなのかもしれない。その意味で、村上春樹はウソをつくのをやめたのかもしれない。

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紙の本

能動的に生きる

2002/09/23 08:38

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:nory - この投稿者のレビュー一覧を見る

苦しみや悲しみ、もしくは正体さえわからないものを乗り越えようとしたら、それを心から完全に受け入れるしかない。悔やんだり、逃げたり、抵抗したりすれば、それはどんどん大きくふくらんでのしかかってくる。

しかしたとえ大きくなってしまおうとも、闘わずして無条件に受け入れることはできない。闘いを通過してはじめて出口、もしくは入口が見つかるのだ。それは外に向かって突き出される拳かもしれない。自分の内側でひっそりとなされる心の葛藤かもしれない。ただ思うのは、ある種の闘いなくして、人が心から納得できるものなんてこの世にあるだろうかということだ。

そして闘いには当然痛みがともなう。その痛みを自ら引き受けたとき、人はただ流されるだけの存在ではなく、真実の意味で能動的に生きはじめるのだ。

この物語は「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と対称的につながっている。対称的にさせているのは、15歳というカフカ少年の若さだろう。ナカタさんは年はとっているけれどあのとおりだし。でも年をとった人ほど、新しく生まれ変わることが必要なのかもしれないとも思う。少なくとも私はそのときが来たら足を踏み出したい。

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紙の本

そして終わり、そして始まる。

2003/03/31 22:12

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:まりんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る

進まない時間を抱えて生きていた少年と老人がいた。

少年は時間を進めるために、ある日、家を出た。
それまでの15年間は、時間を進めることばかり考えていたので、
少年は何にも染まらず、酷く透明な人間になってしまっていた。

老人は時間を止めるために、ある日、家を出た。
老人の時間が幼い頃に止まってからというもの、そのままの状態で時が流れた。
それは無期懲役の受刑者と同じで、あまりにも長い時間、透明であったから、
老人は次第に、色が付く事を恐れるようになった。

二人はほぼ同時期、それぞれ家出をした。
勿論、透明な自分に合う「色」を求めて。

この本は、私が今までに出会ったどの本とも違う、
「始まり」と「終わり」の物語である。

読み進めていくうちに、少年の時間が徐々に動き始めるのが分かる。
少年は行動し、悩み、出会いと別れを経て、苦悩し、また歩き出す。
そんな少年に自分を重ね、まるで自分を読んでいる気になる。
夢中になって貪ると、少年は消え、老人がページから顔を出す。
長い人生で色に染まることの無かった人間は、こんなにも儚くて優しいのか。
読者は老人が欲するモノを手に入れさせてあげたい、と願うだろう。
手に入れたとき、老人の時間が終わることを読者は知っている。
だがその瞬間、私達は幸福な傍観者となる。

無関係だった2人の人生が絡み合い、彼らの周囲も劇的に変化していく。
それらが絶妙なバランスをとり、物語の中に読者を上手く受け入れてくれる。

私達は常に始まることへの期待と不安を抱えて生きている。
始まりと終わりの持つ切なさを描くことで、著者は読者に向けて、
こんなメッセージを残したかったのではないだろうか。

「精一杯生きなさい」

心の空腹感が思いきり満たされたような読後感は、癖になる。

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紙の本

タフであること

2002/10/06 21:59

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:山川ハルナ - この投稿者のレビュー一覧を見る

『父』なるものへの宣戦布告。『母』との対峙、『お姉さん』と仲直り。
思春期の揺るぎの中で、もがいてもがいて、田村カフカは少し『大人』になることが出来た。世界で一番タフな少年として自分を奮い立たせることによって。様々な責任の所在を明白に意識することによって。
わかりやすい衝動から短絡的な実践に走ることは簡単だ。(いつでも勃起できるような)ゆるい性的興奮状態や(暴力事件を起こしたり、レイプに挑んだり)突如現れる攻撃性に身を委ねることは、不安定な精神を確たる肉体で安定させようとするあがきでしかない。結果的には、不安定な精神に導かれた肉体はあちこちで空中分解を起こしひずみを深くしてしまうだけ。
田村カフカは一つの壁を乗り越えたわけだけれど、たった一人の力でどうにかした出来たわけではない。大島さんや佐伯さんといった目に見えて友好的な人たちだけが支えになってくれたのではない。星野さんやナカタさんのように、関係ないところで格闘している人の力が知らずに大きな、決定的な後押しとなっている。結果としての複雑で理想的なバランス、割り切れない世界の仕組みを受け入れよう。
私はもちろん飽きもせずにラストの電話シーンに感動する。穏やかなカフカ青年の心象を受け取る。『海辺のカフカ』を経て自分の思考に変化が出ていることを感じる。今、同時期に『カフカ』を手にしている人たちに思いを馳せる。世の中にはたくさんの人がいて、たくさんの物語があり、たくさんの成長の瞬間がある。
村上春樹は、書き下ろし作品を同時代に手にするという喜びを読者に与えることのできる、数少ない現代作家ではないだろうか。

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紙の本

「カフカ」と聞いたら

2021/01/31 14:49

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:びずん - この投稿者のレビュー一覧を見る

変身のフランツカフカが思い出される。細かいことまでは覚えていないけれど、その名前だけで不思議な体験を読み手に与えている。ナカタさんが、健康で文化的な最低限度の生活を営めるようにだけなれれば良いと思う。猫さんと話せる特技は残って欲しい。下巻が楽しみ。

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紙の本

澄んだ海にプカプカと浮かんだ気分にさせてくれる本

2002/10/02 15:51

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:はーと - この投稿者のレビュー一覧を見る

私も手近にあったものに話し掛けてみた。さすがにシラフじゃ恥ずかしいからお酒をちょっと飲んだりして。けれど結局は虚しい思いをしただけだった。自分の中に答がないのに、相手から返事があるはずもない。あんな生き方をしていた少年にすら、私は遠く及ばないんだ。
ENDに向かうに従って滲んできた涙は、哀しさではなく羨ましさだった。私にもナカタさんのような存在が欲しい。あまりにもいたたまれなくなって自分と向き合わざるをえなくなるような、卑劣な私とは違う純粋無垢な存在が。でもそれは多分無理だから。主人公の少年になったつもりで、もう一度読み返してナカタさんに会おう。そしたら少し外に出てみようかなと思う。皆さんもナカタさんに会ってみて下さい。きっと何かを見つけます。

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紙の本

夢の中から責任が始まる

2002/09/25 17:35

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:栗山光司 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 君は想像力を恐れる。そして、それ以上に夢を恐れる。夢の中で開始されるはずの責任を恐れる。自他の障壁は溶け、「君はもう君でない」。誰もここでは名前を持たない。匿名の森は万全の世界であり、欠如がない。満ち足りた場には記憶は必要ない。時間は消える。父たるジョーニー・ウォカーは血塗られた笛で何をなさんとしていたのか。彼は憑座(よりまし)たるナカタさんに殺される。ナカタさんは「読み書き出来ぬ風」である。風こそが笛を鳴らす。カフカ少年、佐伯さん、大島さんは笛の鳴らない不全の世界に住むが故に言葉と記憶は必要であり、その欠如を埋めようと図書館に認識を保存(データーベース)する。
 一階から二階に上がるのに【知の階段】を利用しないで、憑代(よりしろ)<入り口の石>を踏み台にして、あっち(森)へトリップする人々がいる。そんなやり方でなく、ホシノ青年とさくら姉さんは確かな生活者の血と匂いを発散させながら、一歩一歩、階段を踏みしめている。別段、二階へ昇る意識がなくとも、自然に彼らは二階に行き着くのではないか。他の人々は甲村図書館のデーターベースに辛うじてパラサイトするアイコンに過ぎないが、この本はアイコンのカフカ少年が「成熟は欠如である」と様々な通過儀礼を乗り越えて大人になって行く冒険物語とも言って良い。
 アイコンはあちら(森)を通過する事で夢は言葉と混ざり合い「海辺のカフカ」の絵を携えた少年は「あなたに私のことを覚えていてほしいの」「あなたにさえ覚えていてくれたら、ほかのすべての人々に忘れられてもかまわない」と佐伯さんの想いを物語する責を負う。それは又、「アンダーグラウンド」を経た時代の証言者達にコミットした作家の責であろう。
 

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紙の本

不在というかたち

2004/02/06 23:31

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:さいとうゆう - この投稿者のレビュー一覧を見る

 画家が白いキャンバスに向かって筆を執るとき、彼によって捉えられている〈かたち〉があるだろう。いまだ具体的な〈形〉としては顕在化していない、目には見えない〈かたち〉。まだ線になっていない線、色がついていない色。それらはまだはっきりとした輪郭を持っていない。それでもそこに〈形〉は先取りされ、すでに孕まれている。

 〈形〉を生み出す母胎・基盤でありながら、それは〈形〉が姿を現したときに忽然と姿を消し、そもそものはじめからこの〈形〉であったかのような顔をして、さまざまな観客の前に提示され、伝わってゆく。

 〈私〉というのも、このような成り立ちをしているのではなかろうか? 〈私〉という〈形〉ができてしまったとき、〈私〉はもはや〈わたし〉という可能性を失っているのだ。言い換えれば、〈わたし〉という、潜在的で、あらゆるものになりうる可能性への条件を忘却したところに、〈私〉は成り立っている、ということだ。

 15歳の〈少年〉は、ちょうど〈わたし〉から〈私〉への境界上にいる。いまだ具体的な輪郭はもっていないが、おぼろげに縁取られた存在の輪郭。古今東西の書籍で組み上げられた架空の楼閣には、番人はいても住人がいない。欲望の所在には気がついていても、それを向ける矛先は、夢と現のあいだを彷徨っている。ライオンになろうと思えばライオンにもなれただろう。だが彼は「カフカ」になった。

「夢の中から責任は始まる」(上巻p.227)

 もし、〈私〉が生まれたことに対して〈私〉に自由がないならば、〈私〉には一切の責任の発生する余地がない。だが、もし〈私〉がすでに作られつつある中で、消え失せようとしている〈わたし〉に対して責任を負えるなら、〈私〉はきっと〈わたし〉を喪失したまま、その内部に〈わたし〉を宿して生きてゆくのだろう。

 〈私〉は必ず具体的な姿で、〈形〉を持って存在するしかない。
 〈私〉になる、ということは、〈わたし〉とは全く別のものとして存在し始める、ということだ。「別の名前になること」は簡単にできるかもしれないが、〈私〉になることは容易ではない。

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紙の本

新しいハルキ文学

2003/02/05 01:18

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:けんいち - この投稿者のレビュー一覧を見る

 出版前の広告からして謎解き本として売り出された感のある同書だが、冒頭から複雑な小説話法(ストーリーの語り方や語り手の交替、印刷表記の差異化等)が展開され、ギリシア悲劇に由来する『オイディプス王』の主題(父殺しと母との姦淫)が提示される。しかも、同じ作者が『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』で用いた、章ごとに二つのストーリーが順々に書かれることで、ツインターボのように進展していく。
 こうした仕掛けの多さ・複雑さから、必ずしも上巻(とくに出だし)は、従来の村上春樹の小説に比しても読みやすいとはいえない。しかし、ちりばめられた謎・予言引っ張られるように読み進んでいくうちに、次第にことの成り行きにただならぬ興味を育まれ、いつしか小説世界にはまりこんでいくというのは、いつもの村上春樹的である。
 ここで特に興味深いのは、『ねじまき鳥クロニクル』で示された、登場人物の(身体とはとりあえず分離された)想念が、小説世界の現実で、ある現実的(具体的)な行為(例えば殺人)を犯す際の小説話法である。それは『ねじまき鳥クロニクル』に比して、大胆に想念/身体に分割され、その上、別の登場人物の想念・無意識/身体が交錯するようになってくるのだ。そこに、ツインターボの意味もあろうかと思う。
 そして登場人物の魅力が小説を引っ張っていくというのも、本作の魅力であると思う。端的には、登場人物魅力は、下巻の世界へと読者を引きずり込まずにはいないだろう。ということは、読みづらく始まる『海辺のカフカ』は、上巻が終わる頃には、確実にたまらなく面白い現代小説になっているということだ。

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紙の本

私はカフカに恋をする

2002/10/06 21:50

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:蜜柑 - この投稿者のレビュー一覧を見る

久々に村上春樹の長編が出版されると聞き、発売まで
楽しみにしていました。

読み始めてまず思ったこと。
主人公のカフカはとても魅力的な少年だな と。
頭脳端麗で、かつ運動神経も備わっており、
影がある少年。
また、思春期で多感な年頃であり、これから
まだまだ良く成長していく可能性があり、
将来を見てみたいと思う少年。
私はカフカにあこがれのような気持ちをいただきながら
この本を読みました。

物語は主人公田村カフカの家出から始まります。
現実からの逃避、思春期なら誰でも考えることかもしれません。
しかし、彼の家出は思春期の少年少女の家出とはちょっと違う。
家庭に問題があり、家出するのも分かる気がしました。
前文でも述べたとおり、頭のよい少年のため、
計画的な家出で、その面もすごいな と思った。

この本は数通りの話が章によって展開され、
最終的にひとつの点へと結びつきます。

鰯やヒルがふり、ジョニーウォーカーさんなど不思議な
登場人物が出て来たり、昔の話が出て来たり。
非現実的な話が多く、また、最後まで展開が
読めないため、気がついたら下巻の最後 と
どんどん引き込まれていきます。

謎や非現実的な要素が多く、かと言って
違和感なく読めて世界に引き込まれる、これが村上春樹の
なせる技でしょう。

不思議な思いだけ残る本ですが、現実から離れてみたいときは
おすすめです。

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紙の本

良質の積み木

2002/10/05 22:23

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:じゅん - この投稿者のレビュー一覧を見る

村上春樹の久々の長編である。そして、彼の作品の中では最もエンターテイメント性の高い長編となった。読者は単純にその物語を好きなように楽しめばよいのだ。難しく考えることは、何もない。
その一方で、一部の生真面目な人たちは、この物語を楽しめないに違いない。なぜなら、物語は謎に満ちており、そしてその謎の解答が明示されていないからだ。
もちろんその非明言性は村上春樹の意図するところである。推理小説を読むようなつもりで、最後にはすべてがすっきり解決するようなカタルシスを求める人は、この作品には向いていない。解答は一つではないからだ。
『海辺のカフカ』は良質の積み木だ。ガンダムのプラモデルのように、パーツがあり、説明書があり、完成図があるわけではない。完成図は、それぞれの読者の頭の中にある。従って、当然ながら完成品は一つではない。
このことは、この小説の未熟性を示してはいない。良質の様々な形をした積み木をして「未完成だ」という人はいない。村上春樹は、(おそらく)読者とのコラボレーションを望み、そのための骨格を提示した。その骨格の手触りだけでも文句なく楽しめる。
しかし、もし「お椀山の事件は何だったのだろう」という疑問を持ってしまったら、その答えは自分で見つけなければならない。提示された材料を用い、自分で仮説を作り上げなければいけないのだ。そしてその仮説は、何通りも存在し得る。
正解かどうかの鑑別は簡単、「否定すべき根拠のない仮説は、有効な反証が見つからない限り仮説として機能している」のだ。このルールを犯さない限り、あなたは自由に想像し、楽しむことが許されている。荒唐無稽と思われるような仮説でも、もしその仮説があなたの胸に響けば、それはあなたにとって一つの解答なのだ。もしあなたが創造力と想像力を持ってこの小説を読めば、あなただけの豊穣な小説世界を(人によっては幾種類も)受け取ることができるだろう。

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紙の本

やっぱり

2021/08/09 09:35

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る

久々に読み返してみましたが、やっぱりきちんと面白いですね。
それぞれの人物に起こっていることが、どんなふうにまとまっていくのか、ゆっくりと楽しみたいです。

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紙の本

不条理に立ち向かう

2018/05/15 03:47

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る

世の中の理不尽な暴力に立ち向かっていく、少年の冒険が感動的でした。「ナカタさん」や「星野青年」などの登場キャラクターも忘れがたいです。

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