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紙の本
マンガ学の研究報告書になるように、またこの続きが読んでみたいものです
2005/05/14 19:14
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
今でこそ手塚治虫と言えばマンガの神様であって、太平洋戦争後の日本のマンガがすべて手塚治虫から始まったような言い方をされるけれども、実は手塚もマンガについてオールマイティの神様ではなかく、すべてのジャンルのマンガを描いていたわけではないことをきちんと評価すべきだと思う。例えばこの本がとりあげている野球マンガなど、手塚が描いていないマンガはいくらもあるのだ。
だから本書の副題に「手塚治虫のいない風景」と書かれているのを見て、「そうだよね。そこをちゃんと語ってくれなくちゃ」と思ったのだけれど、ちゃんと語ってくれたのは終章の数ページだけだった。
この本は手塚治虫が野球マンガを描かなかったことについて語っているわけではなく、タイトル通りの野球マンガの歴史を語ったものだった。それはそれで悪くない。読み捨てられていくマンガをきちんと跡付けていくことも大切なことだと思うので、昔懐かしいマンガの事に触れられていると妙にうれしくなるのも確かだ。
だが、多くの野球マンガについて触れられているのだけれど、やや読みにくい内容にもなっている。それは、どうしてなのか。
部分部分を読み直してみると何となくわかってくるのだけれど、本書ではいくつかの視点が存在し、その視点が時々入れ替わるので話についていけなくなるところがあるようだ。その視点とは、1つは実際の野球と野球マンガの関係についてであり、1つは野球マンガが内包している物語の構造についてであり、また1つは野球も含めたスポーツマンガのマンガ全体に占めている位置、といったところであろうか。どれも、それ1つで十分1冊の本にできるテーマだと思うので、よく言えば贅沢な本だということになる。でも、贅沢すぎると読む方は途惑ってしまうけど。
学術専門誌を見ると、個々の研究報告・論文とは別に、資料とか総論・総説といった文章がある。本書は言ってみればマンガ学という学問の総説であり、丹念にあつめられた資料報告といった感じに思えてしまう。これだけのマンガが取り上げられるのだから、少々勿体ない。
それに、個人的には野球マンガと言いながら「あぶさん」の取り上げられ方が少ないのも残念だった。