紙の本
光秀は信長を神格化するためのユダであった
2006/09/25 23:24
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
1999年の第11回日本ファンタジーノベル大賞を受賞作品。これが「宇月原晴明」名義でのデビュー作。織田信長をテーマにした本は多いが、本書の中の信長はこれまで読んだ本とは違ったイメージで描かれている。最大のポイントは信長が両性具有者(アンドロギュヌス)であったという奇想天外な設定にされていること。(最近、信長は女だったという設定で書かれた本も他の作者から出ている)
本書では天下統一を目指した破壊者、改革者、残虐で猜疑心の強い暴君、といった男性性よりも美しい女性性を強調し、ファンタジー色の強い伝奇小説になっている(秀吉も信長の女性の部分に心を奪われている)。もうひとつ特徴的なのは単に戦国時代を舞台にした小説というだけでなく、両性具有者である信長と3世紀のローマ皇帝ヘリオガバルスとの共通点を巡って、1930年代のドイツ・ベルリンでアントナン・アルトー(フランスの俳優・詩人・演劇家。実在の人物)と日本人青年・総見寺龍彦が情報交換し、各々が持つ謎を解明していくという二本立てで構成されている点。
アルトーは少年皇帝ヘリオガバルスに興味をもっている。一方、信長が建てた安土城の城郭内に建てられたそう見寺(そうけんじ)と同じ姓をもつ龍彦は信長の謎を調べるうちに、ヘリオガバルスとの関連性に興味をもち、アルトーに接触する。1933年にはヒトラー率いるナチ党が政権を掌握したドイツ。ときにナチスの突撃隊(SA)に追いかけられることにもなるアルトー。龍彦が彼に接触した真の目的とは・・・。
ファンタジー小説と一言で片付けてしまうのは簡単だが、太陽神バールがユーラシア大陸の西・シリアから大陸の東・日本に伝わり、牛頭大王(ごずだいおう)と言い換えられ、信長はこれを守護神とした。時間と空間を超えたスケールの大きさもある。もともと織田氏の祖先は織田剣神社(福井県越前町)の神官の出自であるとされており、その剣神社に祭られているスサノオノミコトと牛頭大王は同体とされているそうだ。
最もオカルト的に書かれているのは今川義元の右腕・雪斎、たいげん すうふ、斎藤道三の息子・義龍、信長包囲網の信玄、謙信などの死が呪殺によるもので、そのためにそう見寺の住職・尭照が自らの目・鼻・耳・脚までも奉げていたという点。そしてついには正親町天皇までも亡き者にしようとしていた!その信長が本能寺の変で光秀によって討たれるのはよく知られた史実ではあるが、その事件の真相を本書ではまた意外な形で展開していて興味深い。
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戦国無双繋がり…。読んだらホロコーストまで続くスケールのでかい話でビックリ。ふたなり萌えどころじゃない。
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信長、という単語だけに惹かれて読むと痛い目を見ます(笑)。
バール神、牛頭天王、アントナン・アルトー、ヘリオガバルス、両性具有、あたりのキーワードでピンと来た人には良いのでは。
私は結構楽しめましたが、一応事前学習として澁澤氏のヘリオガバルスに関する評論に目を通す事をおすすめします。
…信長が両性具有で明智光秀が美形、だけでも結構お腹いっぱいだけどな。
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信長ファン腐女子なら必読。総見寺龍彦のビジュアルに好きなスタアをあてはめて悶えてみよう。より楽しめます。
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アルトーの「ヘリオガバルス」のまったくのパロディか、あるいはトンデモムックだったらよかったかなあ、小説的には中途半端な気がします。ネタ的には面白い
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奇想天外のストーリー。第11回日本ファンタジーノベル大賞受賞も、うなずける。ちょっとばかり読みづらいが、ゆるそう。
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色んな意味で凄い。
光秀の信長への思慕なんかが半端ないので、二人の関係の描き方としては無双2と同じくらい異端かもしれない。
でもその異端さが良い。
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信長がやたらキラキラしているようなイメージ。お耽美(死語か?)になった山田風太郎のような。トンデモファンタジー歴史。雪斎と今川義元のくだりあたりが面白かった。あと、最後のヒトラー絡みのまとめ部分
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日本人青年総見寺との出会いにより信長に魅せられていくアントナン・アルトーの話。そこに絡んでくるヒトラーとナチズム。様々な宗教。
どうやら歴史小説ではなく、ファンタジー小説に分類されるようです。
私的には非常に楽しく面白く読めました。
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文庫落ちしたやつは全部押さえてますが、
やはりこれが一番・・・
信長が好きなだけかもですが。
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「では、きみの国では十六世紀までバール信仰が生き残っていたのか」「もし僕の考えが正しければ今も生き残っています。日本はユーラシア大陸の東の果ての島です。なんでも生き残りますよ。ガラパゴスと同じです」「安徳天皇漂海記」の宇月原晴明がファンタジーノベル大賞を取ったデビュー作なのでかなり期待して読んだのだが…。著者が信長とヘルオガバルスをはじめて結びつけたのだったら着眼にかなり感心するが、どうも澁澤龍彦が言っていることらしい。それでも歴史の蘊蓄と奇想及びこじつけを縦横無尽に展開して、澁澤龍彦+山田風太郎をやった、というのは評価に値する。光秀は信長にユダにされる所など、はぁそうきたか〜、と感心した。だが、肝心の信長の描写が少なくて、新しい信長像の魅力が感じられないのは残念。この頃は蘊蓄のさじ加減がまだ分かっていなかったのね(正直、ところどころ飛ばして読みたくなった)。
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ノブナガはフタナリだった!!
おもくそSFだけど現実と美味く辻褄あわせてておもしろい。
ただ神話とか全然くわしくないからワカメな部分も多く、充分には楽しめなかったのが残念。
これストーリー的にも現代受けしそうだし漫画化したらヒットするかも。
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日本史×世界史。
どっちか言うと世界史の人の方が楽しめるかもしれませんよ。
一見荒唐無稽なのに、ユーラシア大陸の西端から東端までの文化圏やら歴史やら神話やらを総動員して信長の行動を裏付けているので、「そーかー、そりゃ腑に落ちる」なんて納得してしまうのです。
設楽原合戦をメギドの丘とは言いえて妙。コルドバ陣形が眼前に広がる武田軍の絶望が目に浮かぶようです。信長様こわい。
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設定は非常に面白いんだけど、何せ難しい。舞台はナチス政権が成立する前のドイツと織田信長の時代を交互に移り変わる。詩人アントナン・アルトーが少年ローマ皇帝ヘリオガバルスと織田信長の共通性・両性具有にまつわる謎を解明していく展開。そしてそれが、二十世紀のヨーロッパにかかわってくる。んー、難しい。
2008.8.15読了
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1930年、ベルリン滞在中のアントナン・アルトーの前に現れた日本人青年は、ローマ皇帝ヘリオガバルスと信長の意外なつながりを彼に説いた。ふたりはともに暗黒の太陽神の申し子である。そして口伝によれば、信長は両性具有であった、と…。ナチ台頭期のベルリンと戦国時代の日本を舞台に、伝承に語られた信長の謎が次々と解き明かされて行く。第11回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
2009.7.23読了