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イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫 SF)
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紙の本
ミステリオンリーのファンの人にも−法廷物SFミステリ
2002/10/19 19:44
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投稿者:山南 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カナダ在住の人気SF作家、ロバート・J・ソウヤーの第9長編で、SFミステリに分類される作品。作者は過去にもSFミステリないしミステリ的要素を持つ作品を著して好評を博している。この本は以下の方におすすめである。
・SFファン。必読といってもいい。
・ミステリファンで、SFにも多少の興味はあるが何を読んだものか迷っている人。
・ミステリファンで、SFはちょっと苦手、という人も騙されたと思ってぜひ。
冒頭、大西洋に異星人の宇宙船が着水し、ファーストコンタクト(地球外知性体との最初の接触)が成立する。接触は理想的と言ってもいい形で進み、程なくスムーズなコミュニケーションがとれるようになる。トソク族と呼ばれる異星人達が平和的な意図で地球を訪れたこと、母船が損傷を受けていることが知らされ、その交換部品の製造と引き替えに彼らの進んだ技術が提供されることに決まる。彼らは好意的に受け入れられ、地球一周の訪問旅行の後カリフォルニアに落ち着く。しかし、なにもかも順調に見えたのも束の間、彼らの滞在施設内で地球人科学者が惨殺されるという事件が発生、トソク族の一人が容疑者として拘束される。かくして、異星人が被告という前代未聞の裁判が始まる − 。
「異星人なんているわけない」という信念でも持っていない限り、ここまでの展開は受け入れがたいものではないはずだ。以降の物語は異色の法廷物ミステリとして進む。ミステリ書評のマナーとして詳しくは記せないが、異星人の異様な生態を取り上げて検察側弁護側の駆け引きが展開される。SF的飛躍のほとんどはトソク族の設定に集中されており、それらが重要な証拠として、それも陪審員を意識した形で法廷に提出されるため、SFになじみのない読者にも受け入れやすいと思われる。また、被告が地球の制度に疎い異星人であるため、ミステリになじみのない読者にも理解しやすくなっている。SFとミステリのいいところ取りをした良質の論理パズルを楽しんで欲しい。
終盤、二転三転のどんでん返しを経て物語はミステリとしてもSFとしても意外な結末へとなだれ込む。ミステリオンリーのファンの人 − この幕切れの後味こそがSF的感動のひとつの典型である。ぜひ読んでみて欲しい。
紙の本
一粒で二度おいしい、かも知れない
2003/04/04 20:45
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投稿者:ちいこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
地球にエイリアンがやってきた。ファーストコンタクトの際、空母にエイリアンを招いたアメリカ側に、ロシア側から「待った」がかかるところからして楽しませてくれる。エイリアンを殺人容疑で裁くというテーマはもちろん興味深い。SFファンでなくても、ミステリ好きだったらきっとうなずける面白さだ(法廷ものです。陪審員をめぐる駆け引きもなかなか)。黒人弁護士を配して、その述べるセリフがまたいい。そのうえ、随所にくすぐりが利いているのだ。真剣な法廷劇を読んでいるかと思えば、ちょっとしたユーモアに笑えてしまう。そんな緩急自在な雰囲気がいい。
SFの楽しさとミステリの面白さ。一冊で両方楽しめてお得。
紙の本
内容紹介
2002/12/15 16:32
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投稿者:早川書房編集部 - この投稿者のレビュー一覧を見る
魂の正体を探ろうとして、自分の精神の複製をコンピュータ内に三つ作った医学博士ホブソンが、その複製のどれかが犯したとしか思えない連続殺人の謎に挑む『ターミナル・エクスペリメント』でネビュラ賞を受賞したロバート・J・ソウヤーの最新作です。
さまざまな謎をからめ、読者をひきつけてきたソウヤーですが、今回は、殺人犯の容疑をかけられた異星人の裁判、というSF読者にもミステリ読者にもお勧め度満点の作品を書いてくれました。
四光年あまり彼方のアルファケンタウリに住むトソク族が地球に突如やってきて、人類は初めてエイリアンと遭遇します。ファーストコンタクトは順調に進んでいましたが、そこで、思いもよらぬ事件が起きます。トソク族の滞在する施設で、地球人の惨殺死体が発見されたのです。しかも、その手口は片脚を切断し、胴体を切り裂き、死体の一部を持ち去るという残虐な手口、そのうえ、逮捕された容疑者はエイリアンでした。まさに前代未聞の裁判が始まります。はたして、真犯人は……