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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2002.10
- 出版社: 河出書房新社
- サイズ:20cm/237p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-309-20365-5
紙の本
塵よりよみがえり
魔力をもつ一族とひとりの人間の子がひそやかに住む屋敷。そこへ、世界各地に散らばる一族の集う日が今やってくる…名作「集会」にはじまる「一族シリーズ」を集大成した長編。奇妙で...
塵よりよみがえり
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商品説明
魔力をもつ一族とひとりの人間の子がひそやかに住む屋敷。そこへ、世界各地に散らばる一族の集う日が今やってくる…名作「集会」にはじまる「一族シリーズ」を集大成した長編。奇妙で美しくて涙する、とても大切な物語。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
レイ・ブラッドベリ
- 略歴
- 〈ブラッドベリ〉1920年イリノイ州生まれ。20歳で短編を発表して以来、500編にのぼる長短編、詩、エッセイ、戯曲、映画台本を発表。幻想味溢れる作品で知られるSF界の巨匠。
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紙の本
詩ってのが苦手、だからその延長にあるようなブラッドベリとは相性が悪い。でも、若返る、ってことには憧れるんですね、女ですもの
2005/03/24 19:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「イリノイ州の片田舎に集い来るエリオットの一族。4000年前に生まれたファラオの娘、3000年かけてやってきた猫などなど」ファンタジー。
ただし、ストーリー性の強い話を期待する向きには合わないかもしれない。どちらかというと、23の小さな詩が奏でる音楽を聴くくらいの気持ちで読むのがベスト。
実は、大変苦手な作品である。ブラッドベリの作品も、最近作も含め何作か読んでいるのだが、感動した記憶が無い。その理由がやっと分ったのである。彼の作品は、散文というよりは詩に近い。何ーんだ、という向きもあるだろう。深夜の吟遊詩人と呼ばれているではないか、とか、詩のどこがいけないと。そのとおり、ただ詩を散文のつもりで読んではいけないことは、確かだ。
この本は、ブラッドベリが愛する《一族》ものの集大成だという。場所はイリノイ州の片田舎、一軒の屋敷に、魔力を持つものが身を隠している。無論、その存在を示すような所業をしている気配もない。その屋根裏で少年ティモシーが祖母の話を聞くところから、話は始まる。ティモシーはエリオット一族に拾われた普通の子供で、祖母は4000年前にエジプトで生まれたファラオの娘のミイラだという。屋根裏で眠り続ける魔女セシー、ここらで話について行ける人と、そうでない読者に分れる。
最初にやってきたのは、アヌバという名前の王家の猫。古代エジプトのラムセス王の頃、ミイラにされて他の猫と共に眠りについた彼女が3000年の時を経てやって来た「アヌバの到来」。僕はどこから来たの?という問いに「シェイクスピアを足載せがわりに、ポオの『アッシャー家』を枕代わりにして、かごに入れられいたんだよ」と答える「ティモシーはどこから」。
空を飛ぶことが出来なくなり、ヨーロッパに帰れなくなったおじさんの前で、少年たちが遊びはじめて「アイナーおじさん」。どんどん若返っていくアンジェリーナ・マーガレットの忘れられない一生「生きるなら急げ」。博物館の学芸員に少年が持ってきた宝物、パピルスの束から覗くネフェルティーの母の目「贈りもの」。
ブラッドベリ自身があとがきで、一族が集う経緯と自分と作品の誕生の経緯を書いている。TVや映画でおなじみの『アダムズ・ファミリー』の原作コミックスを描き始めたばかりのチャールズ・アダムズとの1940年代の出会い。二人で画文集をだそうという計画が、忙しさのなかで1948年以来途切れたままになっていたが、2001年にこの本が出版されたことでやっと実現したこと。しかし、喜んでくれるはずのアダムズは既に亡くなっているし、ブラッドベリも81歳である、などといったことが祖母への思い出とともに淡々と語られている。
全23章だが、冒頭に書いたように連作というよりは、本当に緩やかに結びついた、幻想談の集成、詩集とでもいったほうがいい。中でも印象深いのは、若返りを描いた「生きるなら急げ」。シモンズの『ハイペリオン』、西崎憲『世界の果ての庭』でも同じような設定があって、印象的だったが、老いることに対して、限りない若返りの持つ切なさが心をうつ。
紙の本
一陣の風とともに「塵よりよみがえる」のは、魔界の者たち。そして、80歳の大台に乗ってなお、今年の早春にも新作を発表する偉大なる作家にとって大切な○○○。
2003/01/16 17:36
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブラッドベリが、だいぶ昔も今も変わらず、若い読者の心をつかみ続けてきた作家であること、そして、若い時代の一過的な愛好に留まることなく、年を重ねた読者にとっても常に「ぼくらのブラッドベリ」であり続けられることの理由は、何だろう。
それはやはり、「いつまでも成熟しないことの不思議」なのだと思う。
多くの人間は、熟すことに伴う害をうまく取り除けなくなるものだ。小説をたとえに挙げれば、歳月を経てシリーズを重ねるたび、どうしても理屈を取り込みがちになるものがある。みずみずしい輝きが、どこかすえたような匂いを放つ傾向。成熟して公の場では「私」と表現するようになった者には、その変化が案外自然なものと感じられ、もはや「ぼくらの〜」と表現したくなる「ときめき」も薄らぐ。
『10月はたそがれの国』『黒いカーニバル』『太陽の黄金の林檎』『二人がここにいる不思議』などの短篇集を構成する1篇として収められたの連作が、書き改められ、一堂のもとにまとめられたのがこの新作長篇である。
訳者あとがきに書かれたエッセイからの引用を、長いが孫引きする。
「80歳の誕生日が過ぎ、わたしはいま81歳の誕生日を心待ちにしている。しかし、『塵よりよみがえり』という鏡をじっとのぞきこむと、わたしはティモシーのなかに自分を見る。…もちろん、心の底でわたしはいつまでも子供でいるだろう。人生を生きるには、それしか方法がないと知っているのだ。幼子の曇りのない目を通して見なければ、世界が分かち合う諸々をほんとうに味わうことはできないのだ」。
この物語で、塵よりよみがえるのは、不死の命をもつ魔界の一族たちである。ティモシーは、一族に拾われた普通の人間の子供だ。世界に散らばった一族の仲間たちが集まるハロウィーンの前日、集会が開かれる屋敷(カバー絵を参照)の起源と、一族の由来について、ティモシー少年は、ひいが1000回つくおばあちゃんに質問をする。もちろん、自分がどのようにして育てられるようになったかについても…。
上のブラッドベリの言葉からも、おばあちゃんの昔がたりからも、「塵よりよみがえる」のは、魔界の者たちだけではなく、大切な思い出だということが分かる。それは、リアルタイムであった時にも、回想の時にも、ともに魔的な時間であることに違いない。
時を超える一族の物語——と言えば、ブラッドベリに心酔し、SF作品を漫画化もしている萩尾望都の『ポーの一族』が思い起こされる。
ブラッドベリが1946年から書きつづけてきた連作短編を50年以上かけてまとめると、とうの昔に完結している、その『ポーの一族』の絵柄が思い起こされるのがまた、私としては不思議な気がして仕方ない。ブラッドベリの洒脱な語り口、気持ちのよくなる会話の数々は、どれだけ多くのクリエイターにどれだけ長い間影響を与えてきたのだろう。
加えて、上に挙げた作品のほか『死ぬ時はひとりぼっち』『何かが道をやってくる』『瞬きよりも速く』『ウは宇宙船のウ』など、翻訳者の工夫にも助けられた、素敵な物語の存在を背後に感じさせるタイトルの見事さ。ブラッドベリはよみがえりつづける作家。
これから「ぼくら」の仲間入りをする人も、たとえばこの作家が米国の覇権主義についてさらりと記述する一節の味わいなんかを読んで、いろいろなことを感じてほしい。
紙の本
セシーやティモシーにまた会いたい人に
2002/12/18 13:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しょいかごねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「魔力を持つ一族の物語」と聞いて心がときめいた方、セシー、ティモシー、そしてアエナーおじさんといった名前を聞いてニヤッとした方、あなたこそ、この本を読む資格があります。一応長編ですが、「集会」に始まるこれまでの「一族もの」の短編を集めて、前後にいろいろな背景仕立てをして、オムニバス形式に仕立てたのが本書です。
だから古くからのブラッドベリファンには懐かしく親しみのある話が並んでいるし、セシーやティモシーのことをもっと知りたい!という人には待望の書です。ブラッドベリ自身がこの一族の話を、長い年月をかけて暖めてきて、それを本書に結実させたことを考えると、これはもう読まないわけには行きません。
逆に上記の名前を聞いて「誰?」と思った方には、残念ながらそれほどお薦めできないかもしれない。どちらかというと「10月はたそがれの国」に代表される過去の短編集のほうが読みやすいと思います。
個人的にはなんとなく最後が好きじゃない。「集会」に出てくるアエナーおじさんの言葉、「最も少ない生き方をするものが、最も豊かな生き方をすることになる」に代弁されるような、なにかもっと夢のある結末が欲しかったけれど。ちょっと贅沢でしょうか。
紙の本
編集者コメント
2002/11/06 22:00
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投稿者:河出書房編集部 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カバー画を描いているのは、映画化もされたアメリカの人気漫画「アダムズ・ファミリー」で有名なチャールズ・アダムズ。もともとは、ブラッドベリの短篇「集会」が雑誌に掲載される際、アダムズが挿絵用に描き下ろしたものでして、この絵をきっかけとして『塵よりよみがえり』は生まれました。
アダムズとの心あたたまる友情の物語が、あとがき「いかにして一族は集ったか」に描かれています。
なお、本書を手にとられた方は、ぜひいちどカバーを取り外してみて下さい。
紙の本
訳者より
2002/11/06 21:55
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投稿者:中村 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブラッドベリといえば十月。十月といえばハロウィーン。だからブラッドベリとハロウィーンは切っても切れない。
カボチャのお化け提灯、魔女や小鬼の扮装、「お菓子をくれないといたずらするぞ」のかけ声……こうしたハロウィーンの風物にはじめて出会ったのが、ブラッドベリの小説のなかだったという人は多いだろう。本書の核にもハロウィーンの情景がある。
だが、これまで作者が描いてきた情景を千倍に拡大したウルトラ・スーパー・デラックス版だ。なにしろ、本物の幽霊が鬼火を燃やし、本物の魔女や狼男が跋扈し、竜巻や蝶番のきしみが踊りまわるのだから。しかも、作者によれば、そうした魔物の多くは、おじやおばの記憶から生まれたものだという。ブラッドベリの想像力が、亡くなって久しい者たちをよみがえらせ、彼の作りだした十月屋敷に住まわせたのだ。まさに作者にとって会心の一冊。秋の夜長の読書には、もってこいだ。