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紙の本
ふらんす物語
2023/11/19 17:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
永井荷風が憧れの国フランスに渡り、帰国してから書いた小説集。
今日から見ると、芸術家への理解が通俗すぎるような気がする。もしかするとこの小説が、今日通俗的とされる見方の規範になったのではないかとも思ったが、それにしては、その通俗的と思われる芸術家観がすでに読者である日本人に前提として根付いているように思われる書き方だった。
後半、フランスを離れることになってからの、フランス以外の国への批判や日本への嫌悪に少し驚かされるが、なぜ日本人にこの小説が持て囃されたのか、そのあたりが興味深いと思った。
紙の本
なにかエロい話でも出ているんじゃないだろうか、とこの本を手にしたひとはガックリくるだろうね。どちらかというと外交官批判の本とでもいいたくなるんだよね、勿論、今のだよ
2004/01/02 19:58
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「明治40年、27歳の荷風は4年滞在したアメリカから憬れの地フランスに渡った。生涯愛した土地から触発されて生まれた小説の数々」古典。『あめりか物語』と対をなす本。
明治40年7月、27歳の荷風は4年滞在したアメリカから憬れの地フランスに渡った。彼が愛するフランスへの思い、日本への失望などが、女を買う日々を送る大使館員の姿を通して描かれる。明治42年に出版された時は、「風俗を壊乱するもの」として発禁となったという。一体何が当局の逆鱗に触れたのかが良く分らない、有名な作品集。『あめりか物語』から付録として三篇。あとが『ふらんす物語』。付録として「西洋音楽の最近の傾向」「歌劇フォースト」「欧州歌劇の現状」「欧米の音楽会及びオペラ劇場」「仏蘭西観劇談」「オペラ雑感」が付く。
解説の川本晧嗣の言葉によれば、発禁の対象となったのは「放蕩」「脚本 異郷の恋」らしい。私などには、どちらかというと「晩餐」「巴里のわかれ」「悪感」に見られるあからさま反日本というか、度を過ごしたフランスへの傾倒のほうがよほど見苦しい気がする。発禁、といえばヘアくらいしか想像できない日本人、というか私だけれど、なぜこの本が発禁か、といわれると首をひねる。
繰り返し描かれる大使館員の自堕落な生活が、当局の逆鱗に触れたのだろうか。それとも「脚本 異郷の恋」のなかで繰り広げられる、日本的なるものへの愚弄がいけなかったのだろうか。所詮は、大海にこぼれる水の一滴ほどの力も無いのに、これに騒ぐ当局というものが信じられない。しかし、その発想が個人情報保護法につながり、保守政権と官僚が諸手を上げてそれを支持するとなると、再び日本得意の「愚なるもの」が跳梁跋扈しる日も近い。この小説よりは、我々の先行きのほうがよほど不安だ。
それにしても、荷風描く大使館員というのは凄い。明治という時代もあるのだろうが(どうも今もあまり変わらないという噂もあるけれど)、ともかく仕事をしないのだ。自分のこと、いや女のことしか頭に無いといっていい。ある地域にいる街娼全部と関係をしてしまう。それも、赴任して数年内の話だ。下級館員なんてこんなものだ、とは思いたくない。ただ、荷風が想定しただけだと願いたい。
奇麗事を言いたいわけではないけれど、正直、『あめりか物語』もそうだったけれど、少しも心が動かない。人間の真実を見た衝撃もなければ、異国事情を知った感激もない。小説というよりは、エッセイを読まされているような感じ。むしろ、描かれる人間の底の浅さが気になるくらいだ。
それより、感心するのは巻末のほうに付録として載せられている欧州音楽事情。モザルト、ベリオ、ロシニ、シュッベルト、メンデルゾンといった思わず首をひねりたくなる表記はご愛嬌。ともかく明治40年なのだ。ちなみに、その頃欧米に渡った人間の記録で、ここまで本格的に海外の演奏会事情を描いたものを知らない。吉田秀和や加藤周一の報告だって、1950年代のものが初期のものだろう、荷風とは40年以上のズレがある。
文中の英語、フランス語の多用にも違和感を抱かせないのは、『あめりか物語』と一緒。ただし、写真の類は半減。そのかわり、名所の版画のようなものがついている。誰の作品だとか、いつごろ撮影したものだとか、そういう注記が全くついていないほうがよっぽど気になる。