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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2002.11
- 出版社: マガジンハウス
- サイズ:20cm/193p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-8387-1388-6
紙の本
卵の緒
著者 瀬尾 まいこ (著)
【坊っちゃん文学賞(第7回)】捨て子だと思っている小学校4年生の育生、妙ちきりんな母親、そのとぼけたボーイフレンド、不登校の同級生、血の繫がらない親子を軸に、「家族」を軽...
卵の緒
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商品説明
【坊っちゃん文学賞(第7回)】捨て子だと思っている小学校4年生の育生、妙ちきりんな母親、そのとぼけたボーイフレンド、不登校の同級生、血の繫がらない親子を軸に、「家族」を軽やかなタッチで描く。坊ちゃん文学賞大賞受賞作に書き下ろし1編を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
卵の緒 | 5-74 | |
---|---|---|
7’s blood | 75-191 |
著者紹介
瀬尾 まいこ
- 略歴
- 〈瀬尾まいこ〉1974年生まれ。中学校講師。2001年「卵の緒」で第7回坊っちゃん文学賞の大賞を受賞。
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紙の本
すっきりと、すんなりと、愛。
2007/09/25 23:08
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト館 - この投稿者のレビュー一覧を見る
家族をつなぐものはなんなのか。
もっともシンプルにこたえるならば、
それはやはり愛、のひとことなのだろう。
この本を読んだ後だと、
くさいせりふだけれど、上記のようなことさえ、
素直にすんなりと思える。
「卵の緒」では、
「捨て子」の主人公と、母親と、母親の恋人というつながりが描かれ、
「7’s blood」では母親の違う姉弟のつながりがえがかれている。
どちらも共通して、
ものを食べる場面や、
髪を切る場面が印象的。
しあわせなしあわせな、
それでいてただのいい話の枠にはおさまらない、
目に見えない「愛」っつうものを見事にえがいた本だと思います。
紙の本
おいしいものを誰と食べる?
2006/07/18 17:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
第7回(2002年)坊ちゃん文学賞受賞作「卵の緒」を収録したふたつの中編小説集。
それぞれ、ちょっと変わった家族の物語。ほんわりとして、不幸なんだけれど暗くはなく、でも切ない。ひとつひとつのエピソードやセリフがうまく、登場人物に親近感が沸きます。
特に母親が逞しい。おおらかだけれど、子供を心から愛していて、その愛情がこまやか。
どこかにあるかもしれない家族で、それが自分であってもおかしくない。そんな気持ちにさせられます。
「卵の緒」
自称捨て子の育生。なにしろ母親は、へその緒をしまっておく箱に卵のかけらを詰め込んで、「育生は卵で産んだ」と主張する。
このちょっと変わった母親と、素直な小学5年生の育生。登場人物がみんな魅力的。登校拒否中のクラスメイトの池内君と、母親の恋人・朝ちゃん。それぞれの個性がキラキラしている。
「7‘s blood」
七子は父親の愛人の子供・七生といっしょに暮すことになる。父親はすでに亡くなり、愛人は刑務所。七子の母親は七生が気に入り、引き取ることにする。
初めて会った6歳年下の弟は、自分に顔かたちはそっくりだったが、性格はすこぶるよかった。小学6年とは思えない、大人びていたが、朗らかで明るかった。
すぐに、七子の母親が入院し、ふたりだけの生活が始まるが、七生は変わらず、七子を起こし、夕食当番を代わってくれる。
紙の本
ひとは何から生まれてくるのだろうか?
2004/12/31 13:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクヤマメグミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
卵の緒、とは何か?
臍の緒なら知っている。その昔母親と自分を繋いでいた小さな絆だ。
そこから栄養を貰って、私たちは育ってきた。
その証拠を見たいと思うのは自然だと思う。
「自分は捨て子かもしれない」
その疑問も自然だ。幼いころ誰しも一度は考えるのではないだろうか。
例えば親に酷く叱られた時などに。どこか遠い街に暮らす本当の両親を思い描いてしまう事があったと思う。
本書はそんなありふれた子供の疑問から物語が始まる。
小学四年生の主人公の描写が見事で、児童小説を読んでいる気分になった。
大人にも子供にも読みやすい文章だと思う。
息子の質問に明るく答える母親も魅力的だ。
端から見たらめちゃくちゃな答えなのに、笑顔で納得させてしまう不思議な魅力。
例え何から生まれてきたって、今あなたをすごく愛しているんだからいいじゃない。
人に必要なのはこれだと思う。自分を認めて愛してくれる存在。
誤魔かしではなくて本心。
それを持って向かい合えるこの母親に憧れる。
内容はやや現実離れしているけれど、登場人物がぐいぐい引っ張ってくれる。
読み終わった後でほっこり温まる感じ。
紙の本
家族であること、家族になること
2003/05/24 10:14
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ももぴー - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作の「卵の緒」は、自分は捨て子ではないかと思っている育生と、その母親の物語。文章全体が軽いタッチで、ユニークな母親と育生の日常をさらりと描いている。
母親である君子は、自分の気持ちに正直に生きている。その正直さは半端ではなく、思いつきや気まぐれでもない。育生を自分の子供として育てようとしたのも、育生の父親への愛情からではなく、純粋に育生のことを、「欲しい」と思ったから「愛しい」と思ったから、と育生に話す君子。「あなたのことが大好き!」という言葉と気持ちの中で育った育生はとても幸せな子供だ。そして「大好き」という気持ちを持ち続けることができた君子もまた、幸せな母親だといえるのかもしれない。
育生の級友である不登校の池内君を家に呼んだ時、君子は育生の注意を無視して、池内君に「登校拒否」という言葉を何度も使うが、君子の中では池内君は池内君であって、登校拒否であるということは、池内君の人間性にとってなんら関係の無いことだという思いが確固としてあったから、きっと池内君もその言葉に傷つくことなく過ごせたのだろう。そういう、世間の目や常識やどうでもいい偏見に惑わされること無く、自分の目や思いを信じて生きている君子の根底には、人に対する深い愛情と思慮があるから、ユニークではあっても、決して嫌味ではないのだと思う。
もうひとつの「7's blood」は、母親と二人で暮らしていた七子が、父親の愛人の子供である七生と一緒に暮らすことになった日々の物語。
七生の無邪気さ、気の利いた行動、子供らしい笑顔に、好感が持てなかった七子が、七子の誕生日のお祝いにと七生が買っておいたケーキを、七生は七子に渡すことができず、腐らせてしまい、そのケーキの処置に困っている姿を目撃したことで、少しずつ気持ちに変化が訪れる。その腐ったケーキを七生が止めるのもきかずに食べた七子の中には、急速に七生への愛情が生まれていたのだろう。その姿を見た育生もまた、七子に対して心から信頼することができたのだと思う。
母親が癌で亡くなったあと、何故母親が七生をひきとったのか、そして七子にとって、七生の存在がどれほど大きいものなのか、いろいろなことがわかっていくことで、本当の母親のもとに戻ることになった七生との別れのなかに、七子は消えることのない繋がりを見出すことができたのだろう。
この中篇小説は二編とも、さらりとした文章のなかに、人間の深い部分がしっかりと描かれていてとても心地よく読める小説だと思う。
紙の本
幸せとは?家族とは?
2006/07/21 21:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よし - この投稿者のレビュー一覧を見る
「卵の緒」は朝ちゃんと言うお父さんができることにより、母親から実の父のことを知らされる。ここがメインです。しかし、ただ悲しいだけではなく、この育生少年はとっても素直で母親もとっても温かくて、結婚して兄妹ができるのを機に育生に打ち明けるのです。きっと楽しい家族で幸せになるんだろうなー。育生の父親のことはとても悲しい過去だけど、母親や朝ちゃんの愛情で血のつながりだけが家族ではないというメッセージがあります。
対する「7’s blood」は父の愛人の子どもである七生が突然家にくることにより、七子に憎しみをもたらせます。この七生君、一人で何でもできてしまう。小さいときから大人たちに好かれる術を知っているのです。そんな七生に対していらだちも覚えてしまいますが、だんだんとこの弟が好きになっていきます。
確かに子どもらしい無邪気さは全然ないんですよ。
愛人の子どもをなぜ母が呼んだのかがわかった時、その七子を思う愛情に涙します。
幸せとは一体なんなのでしょうか。家族が健康で楽しくすごすこと。もちろん、それもあるでしょうが、本当の幸せとはたとえ母は違う姉弟であっても、一人でも、両親がいなくても、離れていても、誰かと繋がって生きること、それも「幸せ」であるんだよと作者は言っているような気がします。
あとがきにあるようにこの作品は瀬尾さんの家族の状況が投影されている作品です。
「そこら中にいろんな関係が転がっていて、誰かと繋がる機会が度々ある。それは幸せなことだ」と瀬尾さんは言っています。まさにそんな思いの作品です。
本当にいい作品です。
ただ、どうでもいいことですが、カバーの絵はとっても味があっていいんですけど、内容と違うのでは…と思ったのはわたしだけでしょうか。
瀬尾まいこさんは本当にとってもいい。大好きな作家さんです。