科学を育む （中公新書）

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『科学を育む』（黒田玲子、2002年、中公新書）

私たちの日常生活にありふれている科学。本書は、科学を育んできた人々、科学を育てる土壌（主に研究制度について）、科学技術政策、科学と社会とのかかわり、これからの科学、という幅広い視点・論点から科学について論じている。とても勉強になる。

（2009年10月28日）
（2010年12月17日　大学院生）

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「科学はグレーゾンを拡大する」という台詞が印象的。結果、科学だけでは解決できないトランスサイエンスの問題が生じているわけだが、その点についての考察はあまりない。
全体的には著者の海外経験に基づく教育制度や社会政策的な事例紹介が中心で、やや出羽守論法的なところもあるし、権威主義的な側面も感じられる。また、科学に対し楽観的な印象を受け、批判的な精神に欠ける部分もある。これは著者が業界のメインストリームを歩んできたというバックボーンが関係しているのだろう。ただし、著者の人柄というか誠実さは伝わってくるので基本的には善人であるのだろうとは思う。
目次レベルでは科学と国家・社会との関係についての突っ込んだ内容を期待したのだが、想像していたのと異なる内容であった。