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紙の本
それでも読んでしまう田中角栄モノ
2003/01/31 17:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「田中真紀子研究」「田中角栄、その巨悪と巨善と」…
もう田中角栄モノはおなかいっぱいと思っていたのに、やっぱり
読んでしまうんですね。本書が他と違うのはその目の付け所。
天下の大宰相、今太閤と日本中のマスコミが祭り上げ囃子立てた
「角さん」こと田中角栄をたった一発で、文字通りペンの力のみ
で権力の座から引きずり下ろした立花隆の「田中角栄研究」と
児玉隆也の「淋しき越山会の女王」の制作課程をまとめたところが
他とは違う異彩を放っている。特に記事を書いてほどなくして
肺がんを宣告され38歳の若さでなくなっていく児玉の姿には
思わず目頭が潤んでしまう(児玉は一日60本両切りピースを
吸う超ヘビースモーカーだったとか。皆さんタバコは止めま
しょう)。それにしても立花が書いたことは当時の政治記者は
みんな知ってたが、ただ書かなかっただけという下りは日本の
マスコミの持つ欠陥を余すところ無く伝えている。立花の記事が
文芸春秋に出ても日本の大新聞はこの記事を黙殺することを決め
込み、一ヶ月以上たって外国の新聞社がこぞって記事にしだすと
その記事を「紹介」する形で初めて「田中角栄研究」に言及しだ
したあたりなんぞ、その問題の深刻さを嫌と言うほど伝えて
やまない。日本のマスコミの体たらくに絶望しそうになる本
です。
紙の本
田中角栄という政治家に対する評価
2003/02/12 12:23
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
田中角栄ほど評価が分かれる政治家はいないだろう。この本の主題となっている金脈問題に限らず、ロッキード問題などをとらえ、金で権力をもぎとった男という否定的な評価がある。しかしその反面、学歴も何の後ろ盾も無く自分一人の力で最高の権力を射止めた男、日本列島改造論などにより、日本経済に大きな活力を与えた男といった肯定的な評価が少なからず必ずある。同時代の政治家、福田赳夫や三木武夫とくらべて現代でもあきらかに強烈な存在感を感じさせる人物であることにまちがいない。
この本は、その田中角栄が宰相に上り詰める道筋そしてそこから一気に転落していくまでの過程を、その転落に大きなはずみを付けた出来事−立花隆と児玉隆也のレポート−を軸にして詳細な取材をもとに書き上げたものである。書かれているのはあくまで事実の進行結果に過ぎないが、まさに「事実は小説より奇なり」。一気に読み進めさせるその筆力はすばらしい。
私が立花隆の名前を初めて意識したのは、かつて朝日ジャーナルに連載されていたロッキード裁判の傍聴記によってであった。詳細な事実認識と法律知識を基に書き進められるその文章は、読んでいて恐ろしくなるほど精緻なものであった。その後も立花隆は次々と新しいテーマにいどみ、「知の巨人」と称されるようになって現在に至るわけであるが、この本にはその立花隆の無名時代を含めた初期の活動状況が描かれており、立花隆の生い立ちの記録ととらえて読んでも面白いものとなっている。
ところで、世間一般で今でも言われ続けているように田中角栄政権は本当に一本の雑誌記事によって崩壊してしまったのであろうか。先に記したように、転落の過程において大きなはずみを付けた出来事であったことは否定しようも無い。しかし、この記事が出た時点での政権はすでに弱体化しており、まさに虫の息といった状態であったのである。また、この記事に対する日本のジャーナリズムの反応は当初非常に覚めており、記事に対する評価は外人記者クラブでの質疑応答で取り上げられて初めて盛り上がりを見せたのである。これらの過程はこの本に詳細に描かれているが、筆者はこの本で何を本当に描き出したかったのか。私にはこの日本におけるジャーナリストの問題意識の欠如と、そしてこの時代よりもさらに衰退しているとしか感じられない雑誌ジャーナリズムへの嘆きであったのではないかと感じるのである。
田中角栄は結果的に権力の座から落ちてしまった。その後も闇将軍として歴代政権に大きな影の力を行使したことは知られているが、決して表の舞台に返り咲くことはできなかった。この時点で政治家田中角栄的手法は完全に否定されてしまったと見てよいのであろうか。否、田中角栄的手法は竹下登、小沢一郎など歴代実力者に確実に引き継がれているのである。そしてその田中角栄的手法の蔓延が自民党のそれまでの長期政権を支えてきた長所(派閥間政権移動による振り子の論理)を消失させてしまったことにまで、この本は触れている。この本はまさに田中角栄評価の総集編である。