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商品説明
26年ぶりに再会した同級生達。校庭に埋めたタイムカプセルとともに、それぞれの胸の思いも封印を解かれる−。あの頃の未来に追いついたいま、21世紀とはどんな日々なのか。70年代型少年少女に捧ぐ。『オール読物』掲載。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
重松 清
- 略歴
- 〈重松清〉1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、91年「ビフォア・ラン」でデビュー。「ビタミンF」で直木賞を受賞。著書に「カカシの夏休み」「小さき者へ」など。
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紙の本
このあいだ、よしもとばななの日記を読んでいたら、そのなかで岡本太郎のことを美術館、記念館も含めて絶賛していた。この本のカバーを見ると、やっぱり太陽の塔にはパワーがあるのが良く分かる
2003/12/23 17:14
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「小学校の校庭に埋めたタイムカプセル。その開封に立ち会うことになった克也は、小学校時代の初恋の相手との再会に、心をときめかせるが。」家庭小説。何だか、重松清ばかり読んでいる気がする此の頃だが、今回は子供ではなく家庭内暴力がテーマとなっている。
高橋克也は39歳、大手のソフトウェア会社の営業事業部課長補佐。バブル期の拡大路線が失敗して経営が悪化した会社のリストラに怯えている。小学六年生のときのあだ名のび太、妻の美佳と小学5年生の息子由輝との三人暮らし。今まで、順調に過ごしてきただけに、会社の状態を家族に告げることが出来ないでいる。
タイムカプセルが開封されるのは、東京都T市立長山西小学校。たまがわニュータウンの学校だが、現在は廃校になっていて、校舎は解体を待っている。克也は1971年、今から30年前の真新しい団地の第一次入居者だった。当時は、まだ開発が進まず陸の孤島と呼ばれ、入居風景がTVのニュースになったニュータウン。今は老齢者以外住む者もない町に1975年卒業した生徒のうち17人が集まった。しかし、本当ならこの場に立ち会うはずだった担任の白石先生の姿は無い。彼女は、彼らが卒業した直後、不倫のもつれで殺されていた。カプセルからは生徒たちの記念の品と共に、死を予感した先生からのメッセージが。克也の記念の品は1970年に開かれた大阪万博の、太陽の塔の置物だった。
小学生のときノビ太と呼ばれていた克也、憬れのシズカちゃんだった安西真理子、今は彼女と結婚して「悪徳リフォーム商法」で有名な会社の営業課長となったジャイアンこと安西徹夫、誰にも顔すら思い出してもらえない入院中の杉本、人を疑うことを知らず、小学校と今が直結している感じの池田浩平、当時から頭がよかったケチャこと竹内淳子たちと、家庭内暴力、家庭崩壊の危機、リストラ、進学、不倫、病気、独身でいること、セクハラ、オヤジ狩り、離婚、携帯電話、ニュータウンの現状などが絡みながら話が展開する。
個人的に好きだったのが、ケチャと呼ばれる竹内淳子。予備校の古文の講師で、数年前までは『古文のプリンセス』と呼ばれ、最盛期には年収三千万も越えていたという。しかし、今は受け持ちのクラスも減って何時、解雇されるかも分らない状態である。彼女の住む隅田川の河口近くの高級マンションに、夫に暴力を振るわれた安西真理子が転がり込み、さらに真理子の娘で中学一年の長女千晶、小学四年の次女愛美がそこをホテル・ケチャと称して、出入りし始めるあたりが抜群にいい。特に、両親のことを冷静に見ている千晶と淳子との会話が抜群。
給食センターで働く、悪いことが嫌いで、皆の似顔絵を描いたりしている池田浩平が、ドラえもん、杉本、転校してきてまた転校していったせいで忘れられた杉本がスネ夫と徹夫が決め付けるあたりは無理があるが、老齢になっていく母のことを思う浩平と、病気ゆえに死を見つめざるを得ない杉本は、この小説の無くてはならない調味料的存在である。
全8章、金曜日の午後から始まり、水曜日の夜/木曜日の朝で終わる話を読み終わって、もう二度と浮かび上がることの無いだろう日本の経済、黄昏の巨大開発を思い、救いは人間の小さな心にこそあると思ってしまう。重松の本のなかでも、暗いほうの作品だけれど、真実はこのなかにある、と思うのだ。
最後に一言。丸谷才一『輝く日の宮』を読んで、主人公の杉安佐子に出会ったとき、誰かに似ているなあ、と思って娘と話し合った結果、2人が名前をあげたのが、この小説にでてくるケチャだった。古文に関係しているのも、美女なのも同じ。ただし安佐子にはロマンスがあるのに、淳子にはそれがない。それがちょっとさびしい、そんなことを思った。
紙の本
ジャイアン・のび太・静香ちゃんはどんな大人になったのだろう
2003/01/02 21:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオトリさま - この投稿者のレビュー一覧を見る
26年ぶりのタイムカプセルと共に開けられた主人公達の小学生時代の夢。
あの頃夢見ていた未来と現在の日本の姿は大きく違う。
リストラ・ドメスティックバイオレンス・死期の近い同級生・親の老いとそれぞれが辛く重い現実を抱え、未来への夢より将来への不安の方が大きくなった39歳の主人公達。
「あなたたちはいま、幸せですか?」 タイムカプセルに入っていた元担任の手紙は主人公達に大きな宿題をつきつけた。
万博が開かれた30年前は未来を夢見る事が出来た。今の日本にあの頃のような夢を見る力はない。太陽の塔を見て「何かの新興宗教のオブジェかと思った」と言った若い派遣社員の言った事はある意味当たっている。「科学教」「高度成長教」を日本中が信じていた。今は何を信じればいいのだろう。
ニュータウンの団地の空き部屋を管理を引き受けて小遣い稼ぎをする主人公の親世代のエピソードが何故かむなしい。永遠に発展するはずだったニュータウンに空き部屋が増え、廃墟化しつつある。この団地の姿が日本の縮図のような気がして何とも言えない閉塞感を感じる。
最後にかすかな希望を感じさせる終わり方なのが救いである。