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虚空の逆マトリクス 千変万化、森ミステリィ (講談社ノベルス)
著者 森 博嗣 (著)
資産家令嬢・西之園萌絵にとって、その晩は特別な夜になるはずだった。ところが、小さなすれ違いから、誘拐事件の謎解きを…。犀川&萌絵が活躍する「いつ入れ替わった?」など7編を...
虚空の逆マトリクス 千変万化、森ミステリィ (講談社ノベルス)
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商品説明
資産家令嬢・西之園萌絵にとって、その晩は特別な夜になるはずだった。ところが、小さなすれ違いから、誘拐事件の謎解きを…。犀川&萌絵が活躍する「いつ入れ替わった?」など7編を収録した短編集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
トロイの木馬 | 7-78 | |
---|---|---|
赤いドレスのメアリィ | 79-96 | |
不良探偵 | 97-124 |
著者紹介
森 博嗣
- 略歴
- 〈森博嗣〉1957年愛知県生まれ。国立大学工学部助教授。著書に「すべてがFになる」「黒猫の三角」「人形式モナリザ」ほか。
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どうも英語が苦手なせいか、タイトルでアルファベットを見るだけで傑作!かな、なんて思ってしまう。統一キャラがいないのだけが寂しい
2005/03/17 19:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「web世界の犯罪から、回文を餌に警察官から情報を引き出す話まで、七つの事件と絶妙な解決」本格推理。
相変わらず冴え渡る、今は亡き辰巳四郎のカバーデザインが印象的。各章の扉のイラストは、ささきすばる。個人的には「トロイの木馬」「ゲームの国」のイラストが可愛らしくて好きである。
私には苦手なコンピュータ、というかネットの世界のウィルスの話。現実世界と、ヴァーチャルな世界が丁度昔の胡蝶の夢を思わせる「トロイの木馬(Trojan Horse Program)」。昔、横浜の関内に、いつも白いドレスを着て歩いていたメリーさんという伝説の老女がいたけれど、こちらはもっと清純な老女が主人公の「赤いドレスのメアリィ(Mary is Dressed in Red)」。
ちょっと知恵遅れ気味の33歳のシンちゃん。ふとしたことで、彼の名前の探偵を主人公にした小説を書いたところ、その気になって殺人事件に乗り出して「不良探偵(Defective in Detective)」。ホントなら、駅に行くまでくらいは話しかけない運転手のタクシーに乗りたいのに「話好きのタクシードライバ(That's Enough Talking of Taxi Driver)」。
月曜日の朝、厨房の冷蔵庫を覗いたら、そこには死体が。人に勧められて小説を書き始めたばかりの私が発見者の事件の行く末は「ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)(The Country of Game)」。キャビネットの裏側の壁のモルタルが崩れた所から見えたのは、人間の骨だった「探偵の孤影(Sound of a Detective)」。資産家の令嬢西之園萌絵、大好きな犀川と二人きりで食事をするはずが、なぜか難事件になやむ刑事に自分から声までかけて「いつ入れ替わった?(An Exchange of Tears for Smiles)」。
どれも本格マインドあふれる作品ばかりだけれど、どうも私のようにキャラクターで作品を楽しむ人間には、今回のような共通した人間の出てこない作品集というのは、心から楽しむことが出来ない。それは作品の良し悪しに全く関係ない話なのだけれども、例えばこれを読みながら、もし保呂草だったら、小鳥遊練無だったら、好きではないけれど瀬在丸紅子だったら、と思ってしまう。
しかし、英語のタイトル、日本人の私には大変上手い、と思うのだが、TOEICの成績のいい人は、どう思うのだう。特にDefective in Detectiveなどは、意味も分からないままに感心してしまう。でも、今回、圧倒的に楽しんだ、というか圧倒されたのは、扉のイラストも素敵な「ゲームの国(リリおばさんの事件簿1)(The Country of Game)」。ここで、主人公やリリおばさんが趣味とするものの凄さと言うのは…
読んでもらうしかない。以前、泡坂妻夫の作品にも同様のものがあって、感心した記憶があるけれど、それに匹敵する切れ味。一体、この人たちの頭の中はどうなっているのだろうと思ってしまった。
紙の本
森博嗣らしさを堪能できる一冊。
2003/01/31 02:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:露地温 - この投稿者のレビュー一覧を見る
森博嗣の短編集の一冊。森博嗣の作品は、長編小説よりも短編小説の方が、森博嗣らしさがはっきりと判る。この短編集も同じで、特に最初に収められた「トロイの木馬」はいかにも森博嗣らしい作品だと思う。
「トロイの木馬」は、バーチャルリアリティが当たり前になり、会社勤めもデートもバーチャルな世界で行い、実際に会うことが少なくなっている未来が舞台である。そこである種のコミュニケーション手段を提供しているサーバがハッキングされる。手段はいわゆる「トロイの木馬」がきっかけになっていて、主人公がだんだんに真相に近づいていき、そして当然のことながら意外な結末が待っている。だが森博嗣らしい面白さは、そのメインのストーリーよりも、この物語の背景になっている未来社会での架空のシステムの描写にある。そのシステムについて書かれていることは、コンピュータハッキングあるいは現在のメールサーバなどの知識のある人には想像がつくけれど、それ以外の人にはたぶんちんぷんかんぷんな話だと思うのだが、それを「当たり前のように」書いているのだ。「トロイの木馬」については、コンピュータシステムについての知識があるかどうかで、楽しめる割合が全然違ってしまうのである。そういう意味では、これほど読者にとってハードルの高い小説というのも珍しいと思う。そして、そういうストライクゾーンが狭い特殊な小説を書いてしまうあたりが、いかにも森博嗣らしいと感じてしまう。
他に6作収められているが、いずれもミステリらしい起承転結がある。日常の不思議な出来事、ハードボイルド探偵もの、ダイイングメッセージ、誘拐の身代金の受け取りトリック、といったような話がそれだ。しかし、ほとんどの話にはそういうメインストーリーと別にもう一つ趣向が凝らしてある。回文がたくさんでてきて回文だけでも楽しめるような話やら、幽霊譚になっているものなど。そして極めつけは、最後に収められた「いつ入れ替わった?」で、犀川&萌絵シリーズ長編版で結論の出ていなくて気になる二人のその後が、少しばかり垣間見られることだろうか。
そんなわけで、この一冊も森博嗣らしさを堪能できる一冊である。