- カテゴリ:一般
- 発行年月:2003.2
- 出版社: 早川書房
- レーベル: ハヤカワ・ミステリ文庫
- サイズ:16cm/525p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-15-079560-6
シャロウ・グレイブズ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
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紙の本
オールディーなもう一つのディーヴァー世界に今こそ触れてみる
2003/04/11 23:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:シュン - この投稿者のレビュー一覧を見る
多くの探偵小説のシリーズでも頻出する設定の一つに、主人公がよそ者として排他的なローカル・タウンを訪れるというパターンがあると思う。本書はのっけから主人公がロケーション・ハンターだから、そもそも流れ者的存在であり、よそ者であり、のけ者であり、「とっとと帰れ」というようなことを言われて脅される存在である。こののけ者感こそがもしかしたらこのジョン・ペラム・シリーズの真骨頂なのかなと思えてきた。
しかしそれにしたって、乗り込んできた町で嫌がらせを受けるのはともかく、相棒が殺されたりしたら、いきなりそれは穏やかな話とは言いがたくなる。ただ映画のロケ場所を捜しに来ただけの善良なスタッフに向けて銃弾が突如浴びせられるなんて、これ以上理不尽な話はないと思う。まるで『イージーライダー』のような理不尽さであり、どんな読者でも不条理と怒りとを同時に抱え込まされるはずである。ただし『イージーライダー』と違うのは、それで終わる物語ではなく、そこから始まる物語であるということ。
多くの人間的要素を豊穣に持つほどにじっくりと描きこまれた主人公像。カウボーイの精神と外観を持ち、『シェーン』を思わせる子供とヒーローの関係性を持ち、恋人との距離が切ない。そう、徹底して切ない感傷的な存在であり、ラストシーンはやはり一仕事を終えた流れ者のガンマンのように町を去ってゆく。
ストーリーにひねりが足りないかもしれない。人物描写や会話がいちいち冗長と思われるかもしれない。確かに次々に展開するアクション・シーンにも事欠ける。しかし、一方でこんな素敵な、掛け値なしのハードボイルドを書ける作家だったなんて、ディーヴァー読者のいったい何割の人が知っているだろうか?
紙の本
結局、この人ってどれを読んでも、ハリウッド映画を出ないんだよね。初々しさ、の影に、でも映像にしたらいいでしょ、っていう心根が見えちゃってね、うーん、ごめんなさい、だね
2003/07/20 22:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
人気作家が、過去の作品に愛着を感じて、手を入れなおして世に問う、なんてことは結構ある。S・キングなんかは多作で他人名義の作品が多いから、幾つもあるし、たしか、J・ヒギンズもそういうことをやっていた。ただし、キングを別にすれば、現在を越える例は少ない。そのかわり、今では手に入れたくても不可能な初々しさや、清冽さを見ることは出来る。でも、この人の場合は、まだ十年しか経っていないのに、はっきりいって別人。いやあ、大変。
長閑な田舎町クリアリーに、相棒のマーティとロケハンにきたジョン・ぺラムは、37歳の映画のロケーション・スカウトマン。二人の登場に、町の人々の胸は映画出演の期待で膨れ上がる。そんなある日、車が銃撃され、ガソリンタンクが炎上、マーティは死亡する。燃えた車のトランクから発見されたマリファナ。おざなりな検視、いい加減な現場保存。早々にブルドーザーによって掘り返された事故現場。
映画のロケ地の申し出を拒否する町長のムーアハウス。不動産ブローカーの元モデルのメグ、彼女の夫で製薬会社の経営者のキース、息子のサム。不動産会社の経営者アンブラー、用心棒のマーク。スクラップ屋で双子のビリーとボビー、彼らのところに出入りする少年ネッド、ぺラムに敵対する保安官のトム、映画会社の社長アラン、ぺラムに興味を示すアクセサリー店のジャニーン。
3人の評論家の解説が付いているのが面白いけれど、池上冬樹のそれにだけは異論がある。改訂前の作品を読まずに比較など出来るわけがないが、それは他の読者だって同じだろうから、開き直って書いてしまおう。「やがて、ごくわずかながら、ペラムは動きを見せた。ジャケットの前をほんのわずかに開いたのだ。」に対して、改訂後の「やがて、ついに場面は動いた。ペラムがウェスタン映画の監督だったなら、脚本家にぜったい使わせないような陳腐そのものの流れだ。ペラムがブルージーンのジャケットの前をわずかに開き、その隙間から拳銃のグリップをのぞかせたのだ。」を、「本書のほうがサスペンス的だ」は、ないだろう。単に冗長になっただけで、それでなくとも映画原作風のところが、より説明的になっただけではないか。しかも「サスペンス的」という日本語って、あり?何だ、なんだ、ナンダ?しかも「かなり濃密な性描写がある」だって?どこに?林真理子だって、高橋三千綱だって、村上春樹だってもっと書くぞ。
とまあ、思わず解説比較をしてしまったが、一体何の為に三人の評論家の文章を並べたのだろう。一人当たり2頁。言ってることは殆ど同じ。要するに、この本は、『ボーン・コレター』で功なり名を遂げたディーヴァーが、他人名義でだした旧作を捨てがたく、今の時点から振り返って不満な部分に手を入れたものであり、ライムものに比べて、極めてオーソドックスな初々しいスリラーである、安心して読むことの出来る作品である、と揃って言っているだけである。
正直、ライムものに見る、障害者の傲慢振りに不快感を覚える私には、はるかにこの作品のほうに「安心」を覚えるけれど、そして描写の濃密度も、気軽に読めて好きだけれども、どちらも、如何にもハリウッドの映画売り込もうという作家の下心がみえみえで我慢できない。しかも、女性に対する「頭が良くて、権力を握る男には、すぐに身体を投げ出すぜ」ふうのうっすぺらなマッチョ的見方が溢れていて、この馬鹿がと思ってしまう。
とまあ貶してはみたものの、長さの割に読みやすくて、薄っぺらという印象もそれほど無い。ただし、ペラムの怒りはあまり伝わらないし、人の死の軽さも気になる。特に、悪人の描写は、陳腐を通り越して、下手だろう。一応の及第点はつけるけれど、やはり映画の原作を出ない。個人的には皆が絶賛するライム・シリーズよりはるかに好ましいとは思うけれど、伏線の張り方も下手だし、結局フツー。ま、読めるだけマシかな。
紙の本
おともだちになりたかったの
2003/06/11 21:26
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投稿者:遊撃 - この投稿者のレビュー一覧を見る
星みっつ……は辛すぎるかもしれません。
物語として面白いことは面白かったのです。
何の先入観ももたずに読んでたら四つくらいは軽くつけてたと思うのです。
のでたぶん自分の我が儘なんだろうなーとは思うんだけど(笑)、
「ジェフリーディーヴァー」の初期の作品だ、と思って読んじゃったものだから、
それは、最近の作ほどではないかもしれないとは思っても、
「自分の好きなディーヴァー」を、探しながら読んじゃうじゃないですか、どうしても(笑)!
それが(「自分の好きな」)、私にとっては、
こんなヤツいねえだろ、いくらなんでも!な極端な設定と極端な性格のキャラクターを、でも何だかすごく「いや、いるんだよね実際」みたいにあのあっさりした細面と語り口で(妄想?これ私の妄想?)何でもなーく、リアルにあっさり存在させている感じ。
だったので、
いや何か書いててこりゃ自分が偏ってるかもという気も今してきたんですが、
とにかくそういうに心構えから歪んだ読書体勢だったものですから、
この本については、設定としては、もっとずっと「いそう」な感じの人達なんだけど、でもなんとなく、リアルじゃない感じっていうか、妄想上の友達になれない感じっていうか(←歪んでる)がして、ちょっとさみしい気持だったの。それだけなのよ。
それはそれとして、ホントに何の先入観もなく手にとったら、たぶんこの本、
「シャロウ=グレイブズさん」の書いた「ジェフリー・ディーヴァー」っていう物語だと思ったかもしれないという気が、ちょっとだけしたんですけども、この表紙。の著者名の位置とサイズ。
売り方としてはたいへんにイケてます。なんつっても!ジェフリー・ディーヴァー!だもの!! 読まなきゃ! みたいな勢いを感じます。素敵です。