紙の本
たぶん、作者はしてやったり、と思っているんじゃないか、そんな気がします。わかるんですよ、こういう構成を考えたこと。でもね、結局、お話がおもしろくねーんです、はい
2005/11/19 16:57
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
奥付を見て驚きました、デザイン菊地信義と書いてあるではありませんか。ま、カバーの折返しには今は亡き辰巳四郎さんがカバーデザインとありますから、菊地信義は講談社文庫全体のトータルデザインをやっているんだろうなあ、とは思います。それにしても、このカバー、辰巳さんの才能を感じさせます。本当に惜しい方を亡くしました。
「太平洋戦争中、疎開先で家出した梶原兵吾少年は疲れ果て倒れたところをある屋敷に運び込まれる。その夜、少年は窓から忍び入る“鬼”に遭遇してしまう。翌日から、虎の像の口にくわえられた死体をはじめ、屋敷内には七人もの死体が残された。五十年の時を経て、「直観」探偵・八神一彦が真相を解明する!」
うーん、「七人もの死体」ですか、死体を勘定するときも人格を尊重して七人とするのが正しいのでしょうかねえ、なんだか気になってしまいますが、はい。
で、お話は複雑です。いや、一つ一つは簡単ではあるんですね。まず、密室ものには不可欠の洋館の図面があって、次に、こうへいくんがガチャポンで手に入れたレアもののフィギュア、それを女の子に取り上げられて「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしつだいさくせん」が冒頭にあって、次にアメフトしか頭に無い国に留学したナオミに降りかかるひげき「The Ripper with Edouard メキシコ湾岸の切り裂き魔」。
そして、カバーにも紹介がある東京の洋館を舞台にした「安達ヶ原の鬼密室」、「The Ripper with Edouard 五つ数えろ!」、最後が「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしつだいさくせん(つづき)」です。「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしつだいさくせん」にはイラストがついていて、描いたのは季史め井子。
繰り返しますが、一つ一つの話自体は分り易いです。でも、全体となると、読んでいる最中に???となります。無論、それが最後には!!!となるんですが、話自体が長いですから、何であの話の次にこの話になるの?何で解決しておかないの?この話とさっきまでの話は繋がるの?とかなり混迷しますね。
確かに、最後は納得なんですが、そこまでやるか?です。『葉桜』でも思ったんですが、それだけかよ、です。トリック至上主義は分るんですが、おっもしろくねー、ですね。それに、ここまで魅力のない登場人物たちというのも、珍しいです。同じ女性ならば、『女王様と私』に出てくる未来、まだ彼女のほうがいいです。ま、残りは全滅です。
紙の本
考えつくされた構成…
2016/05/21 16:05
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投稿者:藤枝 雅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、何の説明もなく全編平仮名で書かれた「こうへいくん」を主人公とする話から始まる。続いてアメリカに留学しているナオミを主人公とした「メキシコ湾岸の切り裂き魔」、本作品のタイトルとなっている「安達ヶ原の鬼密室」といった構成となっているのだが、最初はこれらの短編、および中編が独立しているのかと思わせられる。だが、どの作品も結末部分が書かれておらず消化不良に終わる。
ところが、続く「直観探偵・八神一彦」でそれらがすべて一つに繋がっていることが判明し、消化不良に終わっていた個々の作品のトリックがすべて明かされるのである。この構成は見事であり、一読の価値はあると思う。
トリック自体は他にもありそうなものかもしれないが、アメリカや戦時中の半島を舞台としたのも、すべてを一つに繋げるためだったことを考えれば、賞賛すべきであろう。
ただ、犯人を論理的な推理で追いつめていくといったタイプの小説ではないので、それを求める人には向かないだろう。
個人的にはトリックなどよりも構成が素晴らしかったので、4点としたい。
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これ、おもしろいですよ!!過去の事件と直感探偵、その助手と現在の事件(もう終わってるからこれも過去なんですが)、そして思わせぶりな青春アメリカ学生恋愛白書事件。直感て・・・いやすごいですよこの人!!理にかなってる直感ってやつは素敵です
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建物の専門家からすると、トリックの実現性が問題。だけど大仰なトリック、昔ながらの伝説的要素とそれに対する解釈は、島田荘司的で好き。サンドイッチしている2作は確かに不要。試みとして面白くはあるけど、逆にメイン作品の価値を押し下げていて、勿体ない。
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「葉桜の季節に~」で驚かされたので読んでみたが、いまいち。
舞台を異にする三つの物語で構成されているのだが、わざわざ話を三つ用意する必要性が感じられなかった。
具体的にトリックに関係があるわけでもないし、面白さが増しているわけでもないし。
アメリカの話は、胸キュン的なところもありましたが。
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ミステリ小説ファンには、2つのパターンがあると思っている。トリックそのものの出来に主眼を置く純粋なミステリファン、そしてある小説としての完成度を求める読者。本作は、自分がミステリにどんな期待をしているのかがわかる一冊だ。
本作は、ひとつのトリックをもとにまったく別々の物語が、しかもそのトリックを3種の見せ方で書かれている。事件の主軸となるトリックにもなるし、ある一事件の鍵となる要素のひとつにもなるし、子どもの日常的な、しかもありきたりなトラブルの解決策にもなる。こうした見せ方は非常に歌野晶午らしくもあり、感心もしたくなる。
ただこのトリックは、多少奇抜すぎる。現実味がなく、きちんと懐に落ちてくるリアルさがないのだ。でも、それはわたしが冒頭で示した2パターンめの読者だからだろう。1パターン目の読者であれば、もっともっと楽しめるだろうし星の数だって変わると思うのだ。
と同時に、残念だなぁとも感じる。前々から認めたくないとは思っていたのだが、本作を読んで自分はどうやらトリックの奇抜さにはほとんど興味がないのだとはっきりわかってしまったからだ。それでもミステリを読み続けるのは、自分への期待をまだ捨てきれないせいなのかもしれない。
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本格ミステリ。
他に2作品収録。
この2作品の前半の後に、表題作品が挿入され、最後に2作品の結末が置かれるという変わった編集になっている。
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なかなか良くできているって思った。
最初に読んだ話が前半で終わり、その後半は一番最後にある。二番目に読み始めた話の後半は、最後から二番目にある。そして、メインの物語が真ん中にある。これら3つの話は、あるひとつの共通点で結ばれている。その共通点が、なかなかいい感じである。
メインの物語は、一種独特な雰囲気である。戦中の少年の体験談を、現代のやる気のない探偵が解釈するのだけど、ちょっと強引なところも目立つものの、雰囲気と合理的な解決のバランスがいい。また、この話の中にはもう一つ別の事件が仕込まれていて、これもまら同じ共通点を持っていたりして、なかなかこだわっている。ついで言えば、探偵役(ある意味複数なんだけど)も魅力的だ。
残りふたつの物語も魅力的だった。トリックもそうなんだけど、語り口に何か僕の琴線に触れるものがあるようだ。これは、注目してみたいシリーズである。
2005/7/18
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太平洋戦争末期、兵吾少年は加藤様の別荘の老婆に助けられたその夜、窓から忍び込もうとする鬼を見かける。
その後やってきた日本兵たちに起きる殺人事件。あるものは庭の虎の彫像の口にくわえられ、あるものは武者像の弓矢に貫かれていた。
果たして鬼のしわざなのか?老婆は安達ヶ原の鬼婆なのか?
真相は50年の後、直感探偵の手により明らかとなる。
というのが本編のあらすじなのですが、なにより構成にやられました。
4つのお話からできているのですが、まず
1・ひらがなカタカナのみ使用の子どもの絵日記風なある事件(ほのぼのイラスト付)
に肩透かしされ、いきなり次の話の
2・アメリカが舞台のサイコキラーの話
に一瞬頭がついていけなくなり、え?と思っているうちに
3・鬼密室の本編
でようやく本編が始まったと思ったら
4・展望風呂殺人事件
というまた別の事件の話。
この4話が回文のように1・2・3の問題編、4、3・2・1の解決編という順番になっています。
一見バラバラなこの4つの事件。1の解決編を読んだ瞬間にスッとつながります。
すごい爽快感でした。
トリックはけっこう大技で、いろいろツッコミ所はありましたが面白かったです。
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「こうへいくんとナノレンジャーきゅうしゅつだいさくせん」「The Ripper with Edouard」「安達ヶ原の鬼密室」の3篇が入っている。
構成が変わっていて、ナノレンジャー前編 The Ripper with Edouard前編 鬼密室 The Ripper~後編 ナノレンジャー後編 の順になっている。さらに、鬼密室の中ごろには、全く別のエピソードが組み込まれており、計4つの事件を読むことになる。
なぜこんな変わった構成にしているのかは、読み進めていけばおのずと分かってくる。
まあ非常に実験的な作品といえるでしょう。
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タイトルからして伝奇もの!? と思いきや、そういう雰囲気になるまですごーく進まないといけません。なんでこれでアメリカが舞台なの!? みたいな(笑)
短編2つ、中編2つが1冊の本の中にいくつかに分けられて掲載されていて、その4つの話に、つながりのあるトリックが使われているんですな。
だから、1つの話の種明かしを読むと、ああもしかしてあっちのタネも……とか考えられるようになるんです。
アイディア賞だね!
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本編の鬼密室よりアメリカの話の方がテンポもよくて好きですね。
相変わらず初めから探偵役を出してこないあたりフェアだなと思いました。歌野先生の探偵は解答を言わせる為だけのキャラクターというか、どことなく記号的な印象を覚えます。
河瀬が極限状態におかれてどんどん豹変してしまうのが悲しかったです。兵吾はその後どうなってしまうのでしょうか…
終わり方が消化不良です。どんどん続きが読みたくなるストーリー展開ができるのだからもう少し最後まで頑張って欲しかったです。
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3つの話が入った短編もの。
共通するものがあってなかなか面白かった☆
個人的には好きだけどメインのストーリーのトリックは某ゲームで見たな…(´ー`)
ナオミ編のその後が気になる☆
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3作品+作中作的な事件一件の4つの事件が盛り込まれた一冊。
一作目の中に二作目、二作目の中に三作目を挟むという(更に、三作目の中に作中作の事件が挟まってる)異色の構成もビックリ。
前二作がヒントになってるという感じだけど、それぞれの雰囲気がバラバラで面食らう。
考えごたえのあるトリックだし、さくさく読めるテンポのよさもいい。
ただ、探偵のキャラクターがいまいち好かなかった。歌野作品で時々あるパターン。残念。
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タイトルに惹かれて読んだ。
鬼密室のトリックについては納得。
ただ、前後に2作も別の話を入れてヒントにしたり、作中作のような話もあったり、なんか忙しかった。趣向を凝らしすぎ?
作者は、『葉桜の季節に君を想うということ』の人ですね。