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商品説明
日本橋の乾物問屋の妾腹の娘・弥生と上海生まれの早熟な少女・かつみ。やさしい桃色のためいきのような二人の友愛…。女学生をめぐる小説とエッセイを収録した、初期作品集。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
返らぬ日 | 9-110 | |
---|---|---|
七彩物語 | 111-146 | |
裏切り者 | 147-176 |
著者紹介
吉屋 信子
- 略歴
- 〈吉屋信子〉1896〜1973年。新潟県生まれ。「鬼火」で第4回日本女流文学者賞受賞。著書に「花物語」「あの道この道」「徳川の夫人たち」など。
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紙の本
二度と返らぬ青春
2011/02/07 08:23
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BH惺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
少女小説で有名な吉屋信子の隠れた名作(だと個人的に思っています!)。
返らぬ日・七彩物語・裏切り者・日曜病(サンデーシック)・五月と桐の花・讃涙頌・同性を愛する幸い …の珠玉の7篇収録。
白眉は表題作となっている「返らぬ日」ですね。
上海育ちのエキゾチックな少女・かつみと、和服が似合う妾腹の美少女・彌生との悲恋物語。
お互いに一目ボレしたかつみと彌生の出逢いはカソリックの学校。とある夕べの寄宿舎の露台(バルコニーのことね)で2人は互いの想いを打ち明け合う……という、定番のシチュエーションです。なんとなく花物語の「日陰の花」を思わせます。
想いが通じ合い、幸せ絶頂のかつみと彌生。
そしてストーリーは進み、またも定番の夏休み。かつみは軽井沢へ、彌生は鎌倉へと避暑のためそれぞれの別荘で過ごすため離ればなれになってしまう。しかし一時も離れ難い彌生はとうとうかつみのいる軽井沢へとやってくる。
そして初めて過ごす2人きりの夜……この部分の描写がかなりぼかされていますけど、かなり踏み込んで少女同士の交流を描いてます。他にもポルトガル人のマダム・オルガに施してもらったおそろいのほくろの刺青(しかも口もと!)とか、阿片吸飲の願望とか……妖しくなまめかしいエピソードも用意されていて、吉屋信子の創りあげた雰囲気抜群の耽美な世界に酔わされます!
が、後半は展開が急転直下。彌生に縁談がもちあがり、彼女はもちろん応ずるはずがない。意を決してかつみに上海への逃亡か心中を願うけれど、かつみには亡き実母から託された大切な願いがあった……。
彌生と共に行くか、母の願いを全うするか。ジレンマに苦しむかつみの心情が流麗な文体で綴られる。彌生に向かって訥々と語る母の物語が読んでいて切ない。そして最後の決断を下したかつみの前に現れた彌生もまた、かつみ以上に苦しみ悩んで、彼女のために哀しい結末を選び取る。
純粋な少女2人の互いを思い遣る、静謐でありながら激しい愛情に深く感動。吉屋信子の美文調がなんとも良い味です。
その他は短篇揃い。七彩物語を始め、どれも気楽に、楽しく読める。最後の1篇「同性を愛する幸い」は吉屋信子の恋愛観が淡々と述べられていて貴重かも。
二度と返らぬ青春の日……このような意味合いで付けられたタイトルも非常に巧いな~と思ってしまいました! そしてところどころに色を添える中原淳一の素敵なイラストもナイスで贅沢です。
BIBLIO HOLICより