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商品説明
「約束の地」−それは安息の未来への道か? それとも果てなき暗黒への扉か? 血で血を洗う殺戮の連鎖。圧倒的スケールで人類の来るべき日を描くサイキックSF巨編。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
平谷 美樹
- 略歴
- 〈平谷美樹〉1960年岩手県生まれ。大阪芸術大学卒業。2000年「エンデュミオンエンデュミオン」でデビュー。「エリ・エリ」で小松左京賞を受賞。他に「運河の果て」「レスレクティオ」など。
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紙の本
古く新しい物語
2003/08/08 15:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
どこか古い、でもどこか新しい。
平谷美樹とはそういう作家であるように思える。
平谷美樹は基本的に直球勝負の作家だ。だが直球勝負を挑んでくる作家で、今これほどの直球を投げられる作家はほとんどいない。逆に一回りして新鮮に思えてくるほどである。
この作品も、直球ど真ん中という感じの超能力モノのSFだ。
超能力モノのSFなどというと、少し陳腐な印象を受けるかもしれない。実際、迫害を受ける超能力者という設定はもちろん、超能力というガジェットそのものがすでに古典的と言って良い。けれどこの作品は古典的なにおいを漂わせつつもそれに留まらない。
超能力者一人一人に焦点を当てていく形で構成された前半部は、次第に緊迫感を孕んでいく。
後半部で展開される非常に派手で映像的な超能力バトルは圧巻。
特に後半部。超能力バトルもさることながら、それぞれの立場、それぞれの思いには心を動かされるものがある。
自分たちの安住の地を求める超能力者たち。強大な超能力者に恐れを抱く超能力を持たない者たち。そして超能力者たちに協力し、軍を相手に立ち向かう寒村の老人たち。特に老人たちの姿にはなんとも言えない切なさを感じた。
この小説の古さはあくまでガジェットや設定のテイストだけである。作者はあくまでも今の感覚で話を作っている。一人一人に焦点を当てていく前半部の構成などは昔ではありえないものだ。
昔の小説の良さも、今の小説の良さも持っている。だからこそ面白い。そういう話である。
この小説は、今、平谷美樹だからこそ書ける、平谷美樹にしか書けない傑作なのではないだろうか。
紙の本
緊迫感と、先への期待感で一杯の物語
2003/06/15 02:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kayak - この投稿者のレビュー一覧を見る
とにかく物語全般が緊迫感と先への期待感で一杯。最初から終わりまで一気に読んでしまう。
複数のPSI能力者の物語で、一人一人に焦点をあてたドキュメンタリー風の短編小説を組み合わせていくように構成されていて、一人、また一人と、タイトルにある「約束の地」を求めるPSI能力者が集まっていく過程は、読み応え十分。
人間社会で旨く世の中に迎合できないPSI能力者と、その能力を狙う国家組織といった非常にチープな筋なのだが、その単純さが、一人に一編の短編を費やすぐらいに描ききった人物描写の深さから、筋に意識を持ち去られないための緩衝材になっている。
一点だけ問題をあげるとすれば、後半からクライマックスにかけてのPSI能力者たちの万能ブリが多少荒唐無稽すぎたかな?といった感じだが、この辺はどのぐらいまでを小説の中ででも超能力を認められるか、といった読者それぞれの度量の問題だろう。
とにかく傑作。休日に読めばたった1日で2100円を消費する、非常に濃密な贅沢が味わえる。
紙の本
編集部コメント
2003/05/30 21:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:角川春樹事務所編集部 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一回小松左京賞受賞作家である平谷美樹さんはこれまで、『エンデュミオン エンデュミオン』『エリ・エリ』『運河の果て』『レスレクティオ』と、壮大な本格的宇宙SFを矢つぎばやに発表する一方で、『君がいる風景』『呪海』『ノルンの永い夢』といった、時空や伝奇ホラーなどあらゆるSF的要素を包含した作品群をも続々と生み出してもいます。
本書はこれまでの作品とはまた一味違うテーマで贈る、サイキック・アクションです。第一部では、超能力者たちの肖像を丹念に描くことで彼らの苦悩を浮き彫りにし、タイトルとなっている「約束の地」へ旅立つことを決意するまでを、そして第二部では、舞台を東北の山村に移し、そこに暮らす未来に絶望した老人たちとの交流を背景に、サイキックたちを軍事目的に利用しようとする者たちとの壮絶な戦いを描き出します。追う者と追われる者のサスペンス、そしてサイキックたちのすさまじい超能力によるバイオレンスは圧倒的迫力、原稿一千枚に達する長さを微塵も感じさせません。本書は決して明るい未来を描いてはいません。が、通常の人類と超能力者、若者と老人——両極的存在の真の共存とは果たしていかなるものなのかという模索は、これまでの平谷さんのすべての作品に共通する、人間の可能性や、その存在に対する根源的な問いかけとして、読者の胸を打つことでしょう。