「声なき声」をきけ 反戦市民運動の原点

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投稿者：安之助　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

　６０年安保改定当時、岸信介首相（当時）が、「私は『声なき声』にも耳を傾けなければならないと思う。いまあるのは『声ある声』だけだ」と強弁して、強行採決をした。それを逆手にとって、市民運動「声なき声の会」は命名されて、誕生した。本書は発起人であり、代表世話人を４２年にわたって務めた「小林トミ」自身によって書き留められた活動記録である。
　一読して、まず著者・小林さんのたゆまないエネルギーに圧倒される。「反対」と口で言うのは、比較的に易しい。だが、小林さんの場合には必ず自発的、積極的行動が伴っている。会が発足するきっかけとなった６０年安保のデモ参加。警官隊との衝突で亡くなった樺美智子さんを追悼するために、毎年、集会を開催する。小林さんを動かしていたものは「反戦」の一語といっても構わないだろう。そして、その行動は、政党とは一線を画しているから、“ひも付き”ではない。市民運動の原点である。

　第一章　　それはこうしてはじまった
　第二章　　無党無派の反戦・反安保
　第三章　　浅沼社会党委員長の刺殺に抗議
　第四章　　政防法案をせきとめる
　第五章　　太平ムードに抗して
　第六章　　べ平連誕生の母胎に
　第七章　　べ平連とともに歩む
　第八章　　「あくまでも合法デモを」
　第九章　　市民運動のあり方を巡って
　第十章　　ロッキード事件の究明へ
　第十一章　声なき声の新しい出発
　第十二章　湾岸戦争に反対する

　残念なことに、今年の１月２日に小林さんは、乳がんにより逝去（享年７２歳）された。アメリカによるイラク攻撃開始の日時は３月２０日。小林さんが生きていたら「第十三章」はどのような報告になったのだろうか。いまとなっては想像しかできないが、アメリカ及び日本政府に激しく抗議するのは当然だとしても、週末に自然発生的におきた市民によるピースパレードには、我が意を得たりと頷いているのではないだろうか。