紙の本
問題解決はノウハウではなく哲学が必要
2003/07/05 00:33
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投稿者:ハマサキシンゴ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までの人生、どれだけノウハウ本に失望させられたことだろう。求めるこちらが悪いのだが、根本的なことを脇に置いたままで枝葉末節の付け焼刃的な方法を本に書かれてあるように試みてもお金と時間の無駄でしかなくあとに残るのは宝くじに外れたような情けない気持ちだけというのを数限りなく繰り返してきた。
友人に勧められるままに何気なく買った本であったが、ジャンルを問わず乱読派の僕としては今年になっての半年間で、数多く読んだ本の中で出色のものであった。分野は違う司馬遼太郎や村上春樹の新作を読む以上のショックを覚えた。
著者が世界的な人工知能の学者にして実践者であることを知っても、そのこと自体は僕にとっては何の興味の対象でもなかった。
読者のかなりの部分は著者の経歴と実績から言って、理科系の人だろうと想像するが、英語と学校での専攻で仕事で昔使っていたロシア語をまじめに復習しようとしていた自分にとっては目を開かれる思いがした。大きな単位の数字を英語で聴いたときにどう聞き取るか? いつも必死で紙に書き取りながら聞いていてもよく桁を間違えた者としては、正に目から鱗とはこのことであった。これは本の一例であり、一つ一つの短くて読みやすい章は、いずれもノウハウというよりは物事の理解と学習の哲学が書かれていた。英語や数学の学習については、一応マスターしたつもりの第一線の人にとっても、今学校で苦労して学習している生徒、学生にとってもとてもありがたい示唆を与えてくれることは間違いない。
著者の幼少の頃の記述はとても懐かしい感慨を与えてくれる。実は小生は著者と同年であり、育った街も同じである。子どもの頃の経済的に貧しくて苦しかった頃を平然と語り、その生活環境自体が自分自身の成長の糧になったことを淡々と書ける成功者は他に居るだろうか? 今、団塊の人たちの動向が語られることも多いがその人たちにも是非読んで欲しい本である。数年前にベストセラーとなった妹尾河童さんの“少年H”は戦中と戦後の神戸の下町とそこで暮らす少年の行動を描いていたが、ほぼ隣接する地域で妹尾さんの10数年後の世界を描いたこの本は団塊世代の追憶を綴る優れた随筆でもある。
著者は今も米国在住のようであるが、時々は日本に帰って本の中味の続きを言葉で語って欲しいと思うのは僕だけではないであろう。
紙の本
出版社コメント
2003/06/10 17:59
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投稿者:PHP研究所 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人工知能、ロボット工学の世界的権威である著者が、日本人が真に「考える力」「知的体力」を養う技術を伝授!
カーネギーメロン大学ロボット研究所を世界最大の研究所にした、人工知能、ロボット工学の世界的権威が教える知の技術。
著者は、アメリカ大陸自動運転横断ロボットや、スーパーボウルで使われたアイビジョン・システムなどの先進開発の中心的役割を果たした、今、もっともアメリカで注目される研究者である。
本書では、今まで誰も語ることのなかった新しい知の技術を鍛える方法を伝授する。
内容例を挙げると◎「メッセージのある研究をしろ」◎最後までやりきれば、失敗のパターンもわかる◎集中力とは、自分が問題そのものになること◎できるやつほど迷うものだ◎「日本人にアイデアがない」というのは嘘である◎日本の学生は、明らかに問題解決の能力において劣っている
著者の意図は明確である。本当に頭のよい人間は、複雑に考えるのではなく単純に直線的に解答を導き出すのだ、という。
慶應大学安西祐一郎塾長、羽生善治四冠推薦!ビジネスマン、学生必読!
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複雑に考えるな。単純明快に考えろ! 世界中から来た、異なる文化や見方とアプローチをもつ仲間と接し、奮闘しながら研究し、問題解決してきた著者が教える「知の技術」。
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大変勉強になった本である。「素人発想、玄人実行」を軸にしながら、技術者にとって必要な物事の考え方について著者経験を織り交ぜながら記述されていた。「素人発想」で従来の自分にとらわれない研究を構想する、「玄人実行」で基本に忠実、愚直な努力を継続していく、この考え方の大切さを知った。特に、1)「メッセージのある研究」をせよ、2)最後までやりきれば失敗のパターンがわかる、3)反復学習と考えさせる学習は相反する概念でない、との記述は参考になった。
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タイトルと内容との関連性が薄いように感じる本書ですが、米国の大学で教授をされている著者のこれまでの経験をベースに示唆に富む内容でした。
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何に問題意識をもち、どうやって研究(追及)して、考えて、人に伝えるか!その方法をわかりやすく、本質的に書いてあった。すごーーーーーく頭のいい人で、こんな風に思考できたら問題解決能力もあがるだろうと思った。
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「目にあまる英語バカ」中で紹介。P.188。「英語は我々にとっては外国語なので、英語を職業としようとする人以外、『外国人にしてはペラペラだな』くらいを目標にするのがよい」という内容があるらしい。
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カーネーギー・メロン大学の金出教授の本。経験をしてきてしまうと、単純な発想をできなくなる。そのために、見落としてしまうことがたくさんある。だからといって素人ではいけない。素人の発想で問題を発見し、玄人の手法で問題を解決する。お奨め。
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SSIIで聞いた講演の記憶があやふやになる前に読了。読みながら普段の研究生活のいろんな場面が頭に浮かんできて,自分はこの場面ではどうだろう?これは普段から意識してやれている!これは分かってるけど全然ダメだ・・・これは気づいてもいなかった、でも是非取り入れたい!みたいにかなり具体的に内容を消化することができたと思う。具体的には「人の反対のことをする」というのは自分は全然出来ていない内容。タイトルにある素人発想玄人実行が出来ていないのでこれはとくに意識したい。研究のシナリオをもっと強烈に分かりやすくどれだけ役に立つのかを明確にすること、構想をしっかりと練ること、簡単なアプローチでやれるよう考えること、問題をイメージ→簡単な例題→実問題として足場をつくりながら考えること、人に自分の研究を話す、などなど具体的にかなり役に立つ内容が満載だった(もちろん既に導入しているのもかなり多くてそれは嬉しかったが)。途中よく聞く法則の「十分に先進的な技術はどれもマジックと区別がつかない」これはこういう技術を出してみたいな、という気になった。前置きなしに話すとかたとえと例は違うとか目からウロコな話も多く1回読んだだけでは消化しきれ無さそう。リファ本として手元に置いておこうと思います。
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筆者の金出 武雄について、私は全く知らなかったのですが、
カーネギーメロン大学(CMU)教授。前同大学ロボティックス研究所長(92~2001年)。人工知能、コンピュータビジョン、ロボット工学の世界的権威。
現在は、知的システムの障害を持つ人が独立して生活できるのに貢献させる方法を研究する生活の質工学研究センターを今年度新しく設立し所長に。また、独立行政法人産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センターセンター長(非常勤)を兼務し、日本とアメリカとの間を忙しく往復している。
1945年、兵庫県生まれ。京都大学電子工学科、同大学院博士課程修了。同大学助教授を経て80年、米国カーネギーメロン大学計算機科学科・ロボット研究所に招聘される。工学博士。アメリカ工学アカデミー特別会員、アメリカ芸術科学アカデミー会員。C&C賞、FIT業績賞、エンゲルバーガー賞など受賞多数。
というとてもすごい人だそうです。一つ成果を紹介するなら、2001年にアメリカのスーパーボウルで初めて採用された「アイビジョン」というシステムを開発した人です。アイビジョンは、映画マトリクスのように、選手のプレーをあらゆる角度から見られる画期的なビデオ再生システムのことです。
無理やり、ソフトウェアテストとつなげるなら、金出 武雄が博士課程で研究に行き詰まった時に……それは彼の人生で最初に出会った困難だったそうですが……当時、助教授だった長尾真先生から「金出くん、もう少し具体的なことをやったら」と人生の転機ともなる指導を受け道が拓けたそうです。長尾真先生は、マイヤーズ本を監翻された方です。
この話は、こちらのウェブにも載っていて、デバッグのコツなども載っているので興味のある方は参照してみてください。本書のタイトルの意味も書いてあります。
★★★
さて、本書ですが、数々の成果を出してきた筆者のものの考え方が実体験を例に書かれているものです。
先に上げたウェブは、本書の一部を要約したようなもので本の方はもっと丁寧で、エピソードも豊富に書いてあるのでさらに面白いものとなっています。
たとえば、「論理学者、数学者、物理学者、技術者」という節で、G・ポリアの話を参照しているのですが、、、
個々の特殊な事例の集まりからそこに共通する性質や関係を取り出し、一般的な明大や法則を導きだすことを帰納という。
--- snip ---
G・ポリアの話に解説を加えながら言うと次のようなものである。
論理学者は最も厳密な議論をする人々であるから、数学者の厳密性の甘さ加減にがまんならない。「数学者は0から99までの整数を調べて『100回が100回とも』100より小さいことがわかった。そこから、彼は、すべての整数は100より小さいというばかげた定理を証明しようと躍起だ」と非難する。
数学者は言う。「そうかもしれない。しかし、物理学者はもっとひどいよ。彼は60という数はすべての数で割り切れると信じている。60は最初の1, 2, 3, 4, 5, 6で割り切れる。次に、彼の言葉によると『勝手にとったところの』10, 12, 15, 20, 30でも割り切れる。だか���、実験的証拠は十分だと言うんだ」。
物理学者は言う。「ウム、でも、この技術者を見てみなさい。彼はすべての奇数は素数ではないかと言うんだ。最初の奇数1は素数とみなしてもまあいいだろう。次の3, 5, 7は間違いなく素数だ。次の9、うーん、困ったことにどう見ても素数ではない。しかし、『ひとまず横において』実験を続けようと彼は言うんだ。11, 13、やはり素数だ。だから、9に帰って、『これは測定の雑音』と結論づけたとさ」
私は、この冗談話を考えた人の、これらの職種の性癖を鮮やかにとらえた知性とユーモアの深さを尊敬している。しかし、彼は例を使って考えるなと言っているのではない、むしろ、そうしろと言っているのだということを忘れないでもらいたい。
このような感じで、「問題解決のメタ技術」を平易に伝えることに成功している本書を、すべての技術者に読んで欲しいと思いました(というか、2003年の発売当初に読んでおきたかったよー)。
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久しぶりに読み返してみました。
玄人のように実行するのは簡単だが、素人のように考えるのは難しいですね。特に企業の中には優秀な人がいて、これだけの集団であればなんでも解決できると思うのだが、そもそも最初の発想が玄人の発想なので、誰が考えても発想できることしか発想されない。結局集団の優秀さが生かせない。
これがイノベーションの難しさなのかもしれませんが、発想するそばから「それは出来ません」では何も生まれないので、もっと組織作りを頑張らなければなりませんね。
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久しぶりに読んでみたが、改めて元気が出るいい本。
こういった思考法なんかの本は嫌いなのだが、
たとえ話がよくあるビジネス系でなく研究者の話が多かったり、
まぁあの金出先生が書いてるんだからね、
という研究者としては親しみやすい設定。
苦言を呈するならば、絶版になっていてAmazonではもはや中古しか手に入らないこと。
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1章はタイトル通りの内容で素直さ・愚直さ、2章は思考、3章は対話・プレゼン、4章は自己主張。
2〜4章は、著者の経験からアメリカ人の傾向で日本人が見習うようオススメするtopics群が多い。
魅力的で精力的に人生を楽しむ著者の生き方に共感する人には良い指針になると感じた。
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私が学生の頃に読んだ(情報系の研究者の間では)有名な本。表題の「素人のように考え、玄人として実行する」は、ジョブスの行動原理「シンプルに考えなさい。でも、オペレーションには高度なスキルがいるよ」って話とほとんど同じなのかな、と思う。
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(書きかけ)同じ背景を持たない人々に向けて自分の考えをうまく発表するためには、用意したスライドを逆から発表せよ…このような一見奇をてらったことを提案するが、読み進めていくと納得のいく方法論ばかりであった。