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沈黙 改版 (新潮文庫)
沈黙
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紙の本 |
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紙の本
神はこのようにして見出されたのかもしれない
2006/02/27 11:07
33人中、32人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
キリシタン迫害史を背景に、信仰の根源に迫る小説。何度か読んだのであるが、今回感じたのは「人間とは認められたい動物なのだ」ということだった。
作者は長崎で一つの磨り減った踏絵を見たことでこの小説を書いたのだそうである。師が転宗してしまったと伝え聞き、その後を継がねばと日本に向かった主人公の司祭。彼がキリシタンの里に隠れ、捕まり、師に会い、彼もまた踏絵を踏んで転宗していく過程の描写はぐいぐいと読者を引っ張っていき、映画を観ているようである。まるでユダのように転宗、裏切りを繰り返すキチジロー、「日本にはそなたの宗教は根付かない」と文化の違いを語る凄腕の奉行など、主人公以外の登場人物にも考えさせられるところが多い。信仰とは何か、日本人の宗教とは何か、などを描いた小説として有名な作品であり、表題になった神の「沈黙」についても読者はそれぞれ、いろいろな考えを読み取るだろうと思う。
最後に踏絵を踏む場面はこんな風に描かれる。:
「その時、踏むがいいと銅版のあの人は司祭にむかって言った。踏むがいい。お前の足の痛さをこの私が一番よく知っている。踏むがいい。私はお前たちに踏まれるため、この世に生れ、お前たちの痛さを分かつため十字架を背負ったのだ。」
以前はこの文の後半に感動し、キリスト教とはこういうものか、と少しわかった気持ちがした。
今回は「この私が一番よく知っている。」の部分が心にささった。結局、主人公も「どんな選択をしても、神が知っていてくれる」と信じることで生き続けることができたのだろう。そうだとしたら、なんと人は「どこかで認知されている」ことを求めるものなのだろうか。日本人でも「お天道様が見ている」などと表現することがあるではないか。神とは、そのようにして人間に見いだされたものなのかもしれない。宗教とは、をこんな風に考えされられた。
よい作品は読む度に新しい発見をくれる。「沈黙」もそんな一冊である。
紙の本
頑張れない人
2006/06/20 11:16
15人中、14人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:だいちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
『頑張った人が報われる社会を!』と声たかく叫ぶ人がいます。頑張った人が、頑張ることができる人に更に手を差しのべる必要があるのか!と言いたい。それはともかく、頑張れない人、洗礼を受けてもその司祭を裏切ってしまう人がいる。その人は悔やんで、悔やんで裏切った司祭に救いを求めてしまう。これが人間なんだと、改めて知りました。
「じゃが、俺(おい)にゃあ俺(おい)の言い分があっと。踏絵ば踏んだ者には、踏んだ者の言い分があっと。踏絵をば俺(おい)が悦んで踏んだとでも思っとっとか。踏んだこの足は痛か。痛かよオ。俺(おい)を弱か者に生まれさせておきながら、強か者の真似ばせろとデウス(キリスト)さまは仰せ出させる。それは、無理無法と言うもんじゃい」
5年の間に3回読んでどうしてもこの言葉に涙します。弱い者、頑張れない人がいるんだ、というそれでいいんだ。という気持ちになります。あなたはどう感じますか?
紙の本
守るべきもの
2007/07/30 00:38
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じゃい - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポルトガルの教会に、ある教父が遠い東洋の島国で信仰を棄てたという連絡が入る。
尊敬していた恩師の棄教が信じられない3人の若い司祭は、日本に向かう。
その3人のうちの一人が教会へ向けた書簡という形で話が始められた。
内容は歴史の授業で学んだであろう、激しいキリシタン狩りの状況。
神はなぜ沈黙しているのか。
あなたを慕っている人間がこのようなひどい目にあっているのに。
心を引き裂かれるような叫び。
なぜ。なぜ。
特定の宗教に信仰のない私にはどこまで意味が理解できているのだろう。
キリシタンにとって神というものがどういう意味を持つのか?
私がこの本の中から読み取れたことは、全てを愛すもの。
ではあなたは沈黙しているのですか?
本の中で主人公はある一つの決断をする。
私はこの主人公の決断にテレビや本の中のヒーローを思い出した。
ヒーロー達は守るものがあるから強くなれるという。
本では神の御助けがあったため、拷問にも耐えられるのだという。
自分のなかの守るべきと信じるものを、守るため。
主人公の下した決断も、なにかを守るためだったと思う。
信仰。信念。愛。いろいろ考えたが、よくわからない。
ただ、守るというのはいろいろな方法と見え方が存在するのだと。
一つの行動がある面からみれば、とても残虐に見え、ある面から見れば慈愛に満ちたものかもしれない。
主人公がなぜ。なぜと葛藤している姿は、著者本人と重ねて見え、ひどくつらい。
だがそれを上回る感動があった
紙の本
世界に通用する一冊
2015/09/30 22:19
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タヌ様 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人の手によりここまでのキリスト者の本が存在することはキリスト教と無縁の私には脅威的である。
遠藤氏のきりっとしまった文体が、ストーリーと重畳してすさまじい緊張感を与える。息詰まる展開と救いの無い慙愧。ここまでの話を読むことになるとは。
日本語以外の翻訳もある国際級の一冊であり、読むべきでしょう、これは。
紙の本
阪神や東北の震災を黙ってみてる神とは何ぞや
2019/01/26 22:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本で消息をたった恩師フェレイラを捜索していた司祭ロドリコが棄教するまでの顛末を、作者は日本人としてではなく、一人のキリスト教徒として淡々とではあるが情熱をもって筆を進めている。隠れキリシタンがどんなに迫害されていても沈黙を続ける「神」とは何なのか。このことは阪神大震災や東北大震災の時に私も思っていてことであった。このことをテーマとして読者に投げかけてみる作者の凄みに脱帽。主題が主題だけに、難解な言葉の羅列が続き読む気が失せてしまうのではないかと思っていたが全くの杞憂であり、どんどんと読み進むことが可能でなおもずんずんと浸み込んでくる作品であった
紙の本
信仰とは何か
2018/09/05 23:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの『沈黙』は正に信仰者に対する「神の沈黙」を表したものである。それは篤信の者には啓示的であるが、信仰の揺らぐ者には圧倒的な絶望である。
信仰とは何か。信仰者も無神論者にも本書で改めて見直していただきたい。
紙の本
間違いなく、不朽の名作の一つ
2017/04/18 22:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:historian - この投稿者のレビュー一覧を見る
2017年の映画を見て、その内容の深淵さに圧倒され、その足で最寄りの本屋に行って買い、帰りの電車の中で読み切ってしまった一冊。あまりに感想を書くとネタバレになるので割愛するが、20世紀のキリスト教文学を代表する作品と評されていることは付記しておこう。
紙の本
わたしもまたキチジロー
2017/03/28 07:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
遠藤周作は2016年に没後20年を迎えた。
それに合わせてさまざまな企画があったが、なんといってもこの『沈黙』がマーティン・スコセッシ監督によってハリウッドで映画化されたということが大きい。
その影響も大きかったのだろう、新潮文庫の同作品が累計で200万部を超えたという。
そういう機会も再読には必要だ。
私も何十年ぶりかで本棚からこの作品を引っ張りだした。
この作品はキリシタン禁制の江戸時代に自らの師である司祭が棄教したという噂の中、危険を賭して日本に渡ってきた一人の青年司祭ロドリゴの苦悩を描いている。
日本までの案内人としてかつてキリシタンでありながらその弱さゆえに転んだキチジローという塵のような男を描くことによって、ロドリゴの苦悩がより鮮明になっている。
この作品を最初に読んだ時にはこのキチジローの、弱い者ゆえに持つ苦悩が重要なテーマであると思っていたが、今回読むと、やはり主人公はロドリゴであり、キチジローは彼の合わせ鏡に映る人物設定だということがわかる。
誰の心にも神がいれば、キチジローという弱き男もいる。
「人間には生まれながらに二種類ある。強い者と弱い者と。(中略)お前はどちらの人間なのだ。」
ロドリゴは何度もこういった問いかけを自分にし、神はどうして黙ったままなのかと問う。
最後に彼は神の言葉に導かれて、踏み絵に足をかけるのだが、本当はキチジローの姿を通して何度も神は語っていたのだろう。
神とは何かを問うたこの作品は、弱さとは何かを問うた作品でもある。
紙の本
深い
2017/03/10 15:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ごまちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
深いテーマです。映画化されたことで、改めて手に取る機会になりました。信仰とは何か、救いとは何か、を考えさせられます。晩年の遠藤周作の著作は、正統なキリスト教信仰からはすこしずれていくような気がしますが、この作品は普遍的テーマであり、いつ読んでも胸に迫ります。
紙の本
信仰の深さとは、と考える本でした
2023/03/25 15:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
強く信じ続ける者、信じたいが誘惑に負ける者、禁教しようとする者、それぞれが入り乱れる時代。
信仰にすがらなければ心が保てない者たちにとっては救いだが、その救いのはずの信仰の為に殺される、という不条理。
「救い」がこの世では救われず、あの世で救われる(のか?)。
心ならずも信仰を捨てざるを得なかった者は、その後、どう生きていけばいいのか。
今の時代も、宗教で人生が左右される人々がいる。
けれども、当時の切実さは別物のように思う。
宗教は、人を救うのか、その逆か。考え続けている。
紙の本
怖くても目をそむけてはいけないもの
2022/05/22 08:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:makiko - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代に布教するためポルトガルから密入国した司祭が役人に捕まって棄教を迫られる話。モデルとなった司祭がいるようです。当時の百姓たちの悲惨な暮らしぶり、棄教させるためのむごたらしいやり口に目をそむけたくなりましたが、こういう出来事があったという事実は知っておくべきだと思って最後まで読みました。怖かったです。神がいるのなら、どうしてあんなにひどい目に遭う人々を放っておかれるのか、という司祭の疑問・嘆きは、現代でもそのまま通用しそう。
紙の本
饒舌と沈黙の間で
2021/02/21 08:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリコ - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代のキリスト教禁教と、キリシタンと宣教師の迫害。拷問などのシーンはその凄惨さの描写は抑制的だが、だからこそ、精神的に追い詰めれられていく側の様相が怜悧にひびく。饒舌なキチジローと沈黙する神の間、という構図で再読した。「この国は沼地だ。…どんな苗もその沼地に植えられれば、根が腐り始める」という言葉が重く響く。
紙の本
神とは?
2020/05/20 13:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:姫路ねこ研究所 - この投稿者のレビュー一覧を見る
キリスト教迫害が続く日本で棄教したと噂されるフェレイラ神父。彼の弟子、ロドリゴはその真偽の程を確かめるため、そして日本の信徒を救うべく日本に渡る。地下組織として潜伏しながらも布教活動を続けていたが、ある日当局に日本の貧しい信者たちとともに逮捕される。拷問にかけられ、ロドリゴの目の前で何人も殉教していく。殉教とは強い感動を伴なうもの、と思っていたロドリゴが愕然としたのは、その前後で何も変わらなかったこと。神はなぜ黙っているのか?いったい神とは?神に対する疑いすら抱き、師フェレイラと再会する。変わり果てた姿になったフェレイラ。そしてロドリゴが最後に出した結論は・・・棄教。踏絵を踏むこと。自らのアイデンティティかつ自分の一部たる神を足蹴にする行為で痛みを感じた時、始めて神からの語りを聞く。
「踏むがいい。私はお前たちに踏まれるためこの世に生まれ、お前たちの痛みを分かち合うため十字架を背負ったのだ」
神とは何か?生きとし生きる全てに等しく愛を授ける。それは強きもの、弱きものに等しく授ける。信仰を貫き通して死んでいった人たちにも愛を授ける。彼らは彼等で自分の運命と苦痛を納得して死んでいった。信仰を貫くことが出来ずに己を曲げて生き続ける者たち。彼らは生き続けることで、葛藤を持ち続け、苦痛を持ち続ける。体の痛み、心の痛み、そのすべてを受けとめる。それが神。たとえ神を否定したとしても、その人の中に生き続ける。神を否定した自分自身として、存在を続ける。そして神により、我々の苦痛はいずれ癒され、昇華される。神は我々一人一人の中に存在し、かつ我々自身でもある。神を愛する行為とは、自分自身を愛することに他ならない。そして、それは人を愛することでもある。それがたとえどのような人であっても。
「たとえあの人は沈黙していたとしても、私の今日までの人生があの人について語っていた」
紙の本
ぐいぐいくる
2018/12/31 17:35
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:飛行白秋男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
辛いねえ、辛いねえ。
でも、
私は正しい選択だと思います。
紙の本
若い時から何度となく
2017/03/05 17:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すぱこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の本にチャレンジしていますが、ようやく最近理解が深まった気がします。
映画見に行けないので、こちらで。