紙の本
楠木正成の峻烈な生き様を迫力ある筆致で描いた北方謙三氏の歴史巨編です!
2020/08/23 12:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『弔鐘はるかなり』をはじめ、『眠りなき夜』、『檻』、『渇きの街』、『武王の門』、『破軍の星』などの興味深い歴史小説を次々に発表されてきた北方謙三氏の作品です。中公文庫からは上下2巻シリーズで刊行されており、同書はその下巻です。「潰えれば、死」といった壮絶なる覚悟を抱き決起した楠木一党は、正成の巧みな用兵により畿内各地で幕府の大軍を翻弄していきます。そして、ついには赤松円心、足利高氏らとともに京を奪還し、ここに後醍醐帝の建武新政が成就します。しかし、大志を貫くも、苛酷な運命が彼を待っていました。同書は、楠木正成の峻烈な生き様を迫力ある筆致で描いた歴史巨篇です!
投稿元:
レビューを見る
*上巻の感想のコピペです。
父に北方太平記をどさっと借りて、まず読むことにしたのがこれでした。入り口としてはとてもよかったですね、わかりやすくておもしろくて。
北方謙三の正成像は、現実主義で、機を見るに敏、利に聡い男。でも同時に見果てぬ夢を抱いていて、自分の現実性を夢のために使う。ある種の矛盾のある人物像なんだけれど、読後に残る印象は、筋の通った一本気な男、というもの。
苦しい苦しい千早の籠城戦がやはり一番の山場ですね。耐えつづけることのすさまじさもあるけれど、それ以上に、このときは正成を中心とした心のつながりがもっとも強かった。赤松円心とも、大塔宮とも、このときは確かに繋がっていたのだと思える。夢が一番近づいた瞬間。それを横から突き崩した足利尊氏が、魅力的で、どこか正成とも通じ合う部分を持つ男という風に描かれているのが皮肉というかなんというか。
読了当時は、「湊川」と言われてもピンとこなかったわたしですが、正成が湊川で迎える最後まで描いていないのがまたいい、と他のいろいろを読んだ今なら思えます。
投稿元:
レビューを見る
相変わらず北方は面白い!楠木正成が好きになった^^南北朝時代は魅力的な人物が多いね。北畠顕家、赤松円心もいいし。足利尊氏のはまだ読んでないけど、この本の中に出てくる尊氏は魅力的だね。北方が描く人物像が魅力的とも言えるかも。
投稿元:
レビューを見る
河内の悪党・楠木正成が主人公の歴史小説。正成の抱いた悪党の夢が、破れていく物語。惜しむらくは、湊川の戦いで、正成が自害するところまで描かれていないことか。何にしろ、間違いなく、男の生き様が学べる一冊。
投稿元:
レビューを見る
大学の頃、芸大によく遊びに行ってたのだけど、
千早のあたりのこと、あんまり知らないな、と少し思う。
行こ。
足利直義がMAX憎い。
ちなじに、流通に目を向けている意味では同じだが、
楠木正成は大好きですが、坂本龍馬は大嫌い。
真木よう子のお竜は良かった。
投稿元:
レビューを見る
最期の湊川の戦を描かないところがいいですね。絶望したわけではないんだろうけど、燃え尽きちゃったのは、あるかも。
そして、仰ぎ見る人を間違えると、こんな悲惨なことはない。それにしても、北方謙三は、後醍醐帝を全く評価していないな。
投稿元:
レビューを見る
昔からちょうどこの辺の時代の流れが繋がらなくて悶々してたけど、これを読んで鎌倉から室町への移り変わりの背景が掴めました。単なる忠臣としての正成でなく、悪党として、また、ひとりの男として描かれていて物語としても楽しめました。
投稿元:
レビューを見る
再読。
下巻の最大の見せ場は千早城の攻防だが、その中で正成の焦燥、諦念が丁寧に描写されている。
燃え尽きたあとの正成も魅力的で、尊氏を京都から追い払うシーンが印象に残る。
最後は余韻を残す終わり方で、また読みたいと思える一冊。
投稿元:
レビューを見る
楠木正成といえば、特に戦時中に日本の英雄の中でも最たる者として名前を挙げられるので、是非とも知っておかねばならない人物だと思い、入門書として読んでみました。
かつての楠木正成像には、相当思想的な創作が入り込んでいるのだろうと思いますが、この作品はそういう部分は排除されています。
思想的な部分を期待していただけに、そういう面では少し残念だったのと、戦の描写にメリハリがなく、途中で飽きが来てしまい、途中からは流し読みになってしまいました。
ただ、歴史を概観する、ビジネスに活かす、という意味では良い本ではないかと思います。
投稿元:
レビューを見る
千早城に籠る楠木一党500人に十数万の幕府軍が攻囲する。悪党の戦いを続けて幕軍を退け続けるも疲弊していく楠木陣営。足利が京に入るまではドキドキしながら読む手が止まらなかった。悪党・赤松円心に惚れた。
投稿元:
レビューを見る
悪党のお話。旧制を終わらせた功労者は、次の時代の人柱になる。彼もまた歴史の礎としてその身を捧げた。
バトル編突入で盛り上がってまいりました!
冴えわたる正成の軍略。武士のように頭の固い戦法に囚われないから、泥臭く生きて闘い続けられる。
人生をかけた籠城戦。冷静な正成が寝不足で狂行策に出たところが面白い。それでも耐えきったのが悪党の意地だね。
そんな泥臭く生きて闘ってきた正成も、投遣りになってしまう。それほど朝廷の内部は腐っていたんだろう。
それでも大塔宮とともに身命を賭けた朝廷に最期まで尽したのは、悪党とか武士とか関係なく、人としてなんとも誇り高い。
足利尊氏が登場したが、やはり英雄扱い。かっこいい演出してもらって、天国で喜んでいるだろう。
逆に新田義貞は愚か者扱い。これは一般的な歴史解釈の通りなんだが、新田次郎の『新田義貞』を読んでからこの本に取り掛かったので、なんか可哀想に思えてきた。新田義貞はたしかに愚直だったかもしれない。天皇の勅旨を律儀に守って…。けれど、天皇の周りにいるのは腐りきった愚かな延臣である。義貞も彼らに振り回されたから、結果的に愚かな行動をとってしまったのではないだろうか。それに歴史の常として逆賊は悪く書かれるものだしね。
__
これを読んで悪党とは何か考えた。
時代の権力に従がわない者。しかし、解釈を変えれば時代に革新をもたらす者になりうるのである。正成はまさにそうであった。
本文で尊氏に「~50年、いや100年早かった」と言われているが、その100年後のために命を捧げたということなんだろう。「政治家はその真価を10年、100年後に認められ本物である。」なんて言葉を聞いたことがあるが、正成こそ本物の政治家だったんだな。
正成が命を落とす湊川までは敢えて描かず、正成・正季の兄弟のなんでもないやりとりで終わらせるところがニクイ。
あと、世阿弥(観世丸)のことが気になっちゃうところがこの本の一つのポイントだと思いました。
投稿元:
レビューを見る
いやー、後半から最後にかけてが良い。終わり方が良い。
足利尊氏とのからみが特に良い。
上巻は「あれ?」と思ったけど、下巻できっちり良作に仕上げるところは、さすが御大である。
投稿元:
レビューを見る
赤坂城、千早城の攻防は、なんといっても激アツ。赤坂城は水脈の確保がキーポイントとか、戦闘だけにフォーカスせずにリアリティーを出しており、またそういった部分が悪党の戦というゲリラ的な戦いの面白さを際立たせている。
また、足利尊氏がいい味を出している。迷い、酔った挙句に正成に本音を吐いてしまったり、酔いつぶれて正成の家で寝ようとしたり。とても人間味があり、正成よりもむしろ魅力的かもしれない。正成は「俺も怖いさ」とか言いつつほぼ完璧に物事を進めていくハードボイルドヒーローにどうしてもなってしまっているので。むしろ自分の弱さを受け入れている点でより完璧になってしまっているかも。
投稿元:
レビューを見る
従来自分が楠木正成に対して持っていたイメージは天皇家に最後まで忠義を尽くした忠臣という典型的なものだったが、朝廷との関わりが強いわけでもない楠木家の出でそこまで忠義を尽くした理由は腑に落ちず疑問も感じていた。それに対して、この作品で描かれている正成は、初めから忠臣であったのではなく、流通経済の発展の中で成長し始めた「悪党」(注:必ずしも悪事を働く輩ではない)の類であった楠木家の生きる道を、武士の力による支配を脱した後の天皇/朝廷の世に見出そうとした人物として描いている。その夢は空虚な理想に過ぎず、儚く散る運命が待っていたわけだが、一人の漢の生き様としてはこちらの方が現実味があり、悲哀と共に共感を覚えた。
朝廷から鎌倉へ一旦は移った中央集権による統治が瓦解して、南北朝争乱~応仁の乱~戦国へ時代が流れて行った原動力は、武士にしろ商人や寺社にしろ地域に根差した勢力の台頭であったと認識しているが、この作品はその萌芽を体感させてくれる点でも面白かった。
投稿元:
レビューを見る
北方謙三の他の室町期の時代小説に比べて、こじんまりとしている。面白くないわけではないが、比較すると、この評価になる。
悪党としてどう生きるか、後醍醐、大塔宮、尊氏、円心、正成の生き様が提示されている。