紙の本
日本人全員が英語ができるようになるなど夢想すること自体,馬鹿げている。
2010/10/24 01:52
9人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BCKT - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1章 入塾心得
第2章 音読―新渡戸稲造に学ぶ
第3章 素読―長崎通詞に学ぶ
第4章 文法解析―斎藤秀三郎に学ぶ
第5章 辞書活用法―岩崎民平に学ぶ
第6章 暗唱―幣原喜重郎と岩崎民平に学ぶ
第7章 多読―新渡戸稲造と斎藤秀三郎に学ぶ
第8章 丸暗記―西脇順三郎に学ぶ
第9章 作文―岡倉天心と西脇順三郎に学ぶ
第10章 視聴覚教材活用法
第11章 その他の独習法
第12章 英語教材の選び方
斎藤兆史(よしふみ)は58年(栃木県)生まれ。栃木県立宇都宮高等学校,東大(文)卒,大学院修士課程修了。インディアナ大学(M.A.),東大教養学部(専任講師,90年,32歳),ノッティンガム大学(Ph.D.,39歳)。東京大学総合文化研究科(教授,09年,52歳)。専門は英語文体論。私が読んだのは,『これが正しい!英語学習法』,『英語達人列伝』,『日本語力と英語力』(齋藤孝との対談)など。翻訳書も多い。
趣旨は,“英会話程度でギャーギャー騒ぐな,しっかり正統派の勉強せぇ”。この著者には『努力論』という題名の著作もあり,そのスタンスは旧来的という表現に価値判断があるとすれば,保守的と言うべきか。著者には全く同意する。2011年から小学校5・6年生に対して英語を導入するという教育制度に見られるように,私も英語教育がおかしな方向に進んでいるという危惧がある。小学校のうちは,英語学習なんてどうせ不完全にしかできないだろうし,漢字や九九なんかが完全にできればそれでいいよ。と私は思うが,読者の皆さんはどう思われますか?
この本の特徴は,読者を「読者」と呼ばず,「入塾生」と呼んでいること。また,塾長を自称する著者は,自分を爆弾処理班と位置付け,花火ができるくらいの素人に“近寄るな!”とか言っている(183頁)。う~~ん,自分でも認めている通り,こりゃエリート意識丸出しだわ。,
英語教育の在り方に関しては,古典的著作と言える平泉渉・渡部昇一(共著・対談)『英語教育大論争』を読むべきだと思う。小学校英語の導入に伴い,茂木『文科省が英語を壊す』,鳥飼『危うし!小学校英語』,市川『英語を子どもに教えるな』,果ては津田『英語下手のすすめ』などのような反対論が湧きでてきた。一方で,楽天やユニクロなどの新興企業は社内言語を英語にしたし,在来大手企業の代表格としてパナソニックなどは雇用対象を日本人に限定しなくなった。なんだか,中央公論編集部・鈴木義里(共編著)『論争・英語が公用語になる日』に現実味が増してきた。
要するに,知的思考力を備えた日本人が英語をしゃべるようになれればよいのだ。ということであれば,これは私の私見(卑見?)だが,英語がろくすっぽ話せない官僚どもを解雇するというのはどうだろうか? 日本人全員が英語ができるようになるなど夢想すること自体,馬鹿げている。そういう意味で,やっぱり爆弾は「爆破処理班」に任せた方がいいと僕なら思う。
(1175字)
紙の本
読み物としてはわるくないけど,実践にはイマイチ
2003/07/14 04:57
5人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヨネ - この投稿者のレビュー一覧を見る
文体論学者による英語指南書.
でも,フタをあけてみると,なんだか散漫.しかも権威主義くさいです.著名人や文学者から英語のよくできたひとを選び出してきて,「エライひとはこうやって英語ができるようになったんだ.見てみなよ,こんな英語,キミには言えも書けもしないでしょ.この人はこうやって英語をモノにしたの.だから,シンドくてもこのやり方をしなさいね」というトークをくりかえします.すすめているやり方のひとつひとつにはこれという異存はないけど,これじゃ指南にならないですよ.
とくに,「名文」を暗誦しなさいという第6章には首をかしげます.作家の文章をいくつか抜き出してきて和訳をつけて,チョロチョロっと豆知識を披露しておしまいです.断片的にはその「名文」の分析があるけれど,つぎの2つのことがないので,学習者にとっては実践的な価値がありません.
・第一に,どういう点で「名文」なのかわかりません.内容・修辞・音調がよい現代語の文章を基準にするというけれど,じっさいに引用している文章のどういうところがそうなのか.内容・修辞・音調の3点について,ちゃんと記述してほしいところです.例文のよしあしがひとつひとつわかるくらいのひとなら,もはや指南の必要はないわけです.文体論学者としてのウデはそこにふるうべきであって,
《間投詞(専門的に言うと談話標識)》(p.78)
とか
《(専門的に言うと認知的)隠喩》(p.74)
とか,ジャーゴンをムダにつかうのにふるうべきじゃないと思います.そして,
・第二に,自分で暗誦するのによい文章がどんなものなのか,指針をもてないってこと.結局,「名文」を選ぶ基準がわからないわけです.推奨する暗誦本のリストもあるけれど,こういうふうに「オレについてこい」しか言ってないのは,どうかと思います.
英語力を高めたい人にハッパをかける本ではあるけれども,手ほどきにはあまりならない本です.
garden B
投稿元:
レビューを見る
昔の英語の達人と比べながら、
今は無視されつつある英語勉強を紹介していく本。
現在は暗記という事がなおざりにされているが、
この本の中で推奨されている勉強方法は基本的には暗記。
著者自らが言っている通り、英語に限らず外国語学習は
日々の地味な努力の上に成り立っている。
方法としては、英語のリズムを捉えていない場合は
名文と言われるものの暗記から始まる。
知らない単語は発音記号と意味だけならず、
用法や例文と共にノートに書き写し、オリジナルの単語帳を作って
覚えることが要求される。
リスニングやスピーキングは、聞き流しやシャドーイングなどをやりながら
時間を見つけて一人でも英語を話す訓練をすること。
基本的に正確な英文を要求するので、
記述文法ではなくて学校文法の文法書を通読することが推薦されている。
英語の力をつけるのに、最も必要と著者が述べるのは多読。
精読は英文の質にこだわり、多読はとにかくたくさん読むこと。
推薦できる文献リストも載っている。
投稿元:
レビューを見る
英語はどのように学ぶべきか、そして一つの語学を習得することがどれだけ大変かを説いている。基本努力の姿勢は賛同。母国語の大切さも説いている。
投稿元:
レビューを見る
安易な学習法ではなく、音読、素読、多読といった努力を惜しまず時間をかけて行う正統派の学習法が具体的に紹介されている。下記の文庫本『日本人に一番合った英語学習法』では、英語達人のエピソードや英語教育全体への提言に重きが置かれていたが、この本はそれらを現代の英語学習に具体的にどう活かせば良いか、といった点が中心。実際の本や教材についても紹介されている。実際に問題を解き、課題に取り組み、その学習法を実践しながら読み進めていく本なので、電車の中の立ち読みには適さない本かもしれない。中堅から上級への壁を乗り越えるための1冊で、相当の努力が必要であることを痛感させられる。
投稿元:
レビューを見る
この本は上級者向けに書かれたものです。改めて見ると「極めるための」になっています。上級者が極めるために読む本です。
ぼくは,中学生に英語を教えているし,中学生向けの英文法の学習書も書きました。中学英語だけをやっているうちに高校レベル以上の英語を忘れてしまいました。それで,またやり直しです。
それで,その初級者向けの同じ著者による
これが正しい! 英語学習法 (ちくまプリマー新書 51) [新書]
を注文しました。
いずれにしても,安易な学習法ではなく,文法,多読など,こつこつと勉強するやり方を提唱する斎藤 兆史氏に共感しています。
いくつか引用します。
英語の発音をよくするためのもっとも効果的な独習法は英文の音読である。(p16)
ぼくは音読はいままであまり重視してきませんでした。重視しなければと思っているところです。
どんなに時代が変わろうが,基礎的なことを何度も何度も繰り返して体のなかに練り込むという学習の基本は変わらない。その学習法の語学版が素読であり,暗唱なのである。(p34)
素読,暗唱に関しても軽視していました。最近,般若心経を覚えました。また,百人一首を覚えています。いま30首覚えました。
読んで覚えるってとても大切なことだと改めて感じています。
本棚に眠っていた,岩田一男著「英語・一日一言」を引っ張り出してきました。百人一首をすべて覚えたらこれに挑戦してみよう。
高度な英語力を身につけょうと思ったら、最低でも伝統的な学校英文法をきちんと勉強しておく必要がある。(p42)
ぼくも,これまで英文法を重視してきました。いま文法をおろそかにする人が多くなり,学校教育も文法軽視になってきているので,斎藤 兆史氏にがんばって英文法を重視する流れになって欲しい。
最近の英語教育では、学習者が文法を身につける前から文章の大意を理解する読み方を推奨する傾向にあるが、これは本末転倒もはなはだしい。文法を正確に読み解く訓練をしているうちに、しだいに文法が気にならなくなって文意がさっと頭に入るようになる。これが正しい学習の順序である。
(p49)
多読についてはmixiでも意見交換を行いました。多読は必要ですが,やはり文法を身につける必要があると思います。
英語達人たちは、修業時代のどこかで例外なく大量の英書を読んでいる。逆に言えば、英書の多読は英語の達人になるための必須条件だと言ってもいい。達人レベルを目指さないまでも、英書の多読なくして高度な英語力の養成はあり得ない。(p88)
同感です。一時期アガサクリスティをたくさん読みました。よかったです。「英語・一日一言」のあとは,また挑戦してみたいです。
投稿元:
レビューを見る
この手の本にはどうしても「決め付け」が多くなるので、そこらへんは読み飛ばしつつ、役に立ちそうな辺りを拾い読み。
まあ語学は学習に掛けた時間次第だよね、ってたしかに思います。
投稿元:
レビューを見る
あとがきの「Let him have it! の意味は?」は、表現と状況(文脈)の関係(語用論)を考えるのに好適の実例。
投稿元:
レビューを見る
「日本人が目指すべき英語のレベル」が,ハッキリと記されている.こういう示し方をしている学習本は珍しい.ある意味,目から鱗.推されている学習法は妥当.例文など,読み応えあり.
投稿元:
レビューを見る
今あるもので、英語力はつけられるんだなと思った。
昔からの自分なりの勉強方法ってダメなのかな?って思ってたけど、勇気づけられた!
投稿元:
レビューを見る
本気の人向けの英語独習方法。リスニングに関しては、今ではインターネットやiPhoneを活用してもっと学習しやすくなっていると思いました。齋藤先生自身も、ときには「何でこんなに一生懸命英語を勉強しているんだとう」と疑問に思うことがあるという一文が印象に残りました。
投稿元:
レビューを見る
直前に読んだ「村上式~」が、とりあえずコミュニケーション取れればいいやというスタンスなのに対し、こちらは英語を本格的に使いこなそうというスタンス。
好みとしては断然こちら。厳格さを求めたか、古式ゆかしさを好む正確さゆえか、高い山を示されると喜ぶM的な性向が出ただけなのか、どれに由来するかは不明。「きちんとした」英語を修めたいという自分の意思に合致したというのが一番大きいのだろうとは思う。
ただ結局これも経験則の集まりになってるのは残念。結局のところ、習うより慣れろ・走りながら考えろ、が正解なのだろう。それでも何かしらの科学的裏付けが欲しいと思ってしまう。そういう本ないかしら
学習法として目新しい物は特になし
・アクセントの位置で意味の変わる単語
・
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
英語力は会話力にあらず。
文法無視で、「ペラペラ」しゃべる癖がついてしまうと、そこで学習が頭打ちになる。
何ごとも、基本をおろそかにした我流では伸びない。
本書は、日本が誇る英語達人も実践し、効果が実証されている学習法を、実例を交えて紹介するものである。
[ 目次 ]
入塾心得
音読-新渡戸稲造に学ぶ
素読-長崎通詞に学ぶ
文法解析-斎藤秀三郎に学ぶ
辞書活用法-岩崎民平に学ぶ
暗唱-幣原喜重郎と岩崎民平に学ぶ
多読-新渡戸稲造と斎藤秀三郎に学ぶ
丸暗記-西脇順三郎に学ぶ
作文-岡倉天心と西脇順三郎に学ぶ
視聴覚教材活用法〔ほか〕
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
硬派な本。でも、書いてあることを数年くいしばって続ければ必ずや力になると思う。旅行や生活で必要な英語ではなく、原書を読みたい人や、しっかりした英語を骨から身につけたい人なら、この本は役に立つと思う。利用図書館には未所蔵。
投稿元:
レビューを見る
▼本書は『英語達人伝』でお馴染、斎藤兆史氏による英語・独習法の指南書である。まず、手にとって気が付くのは、本書が左開きであるという点(つまり、新書では珍しい横書きである)。英文が扱われているため、その方が読みやすいは読みやすい。しかし、豊富な情報量がコンパクトにまとまられているので、読み通すには根気が必要だろう。
▼内容としては、英文の「素読」が、特にその独習法の中心に推されている。意味が分からなくとも(名)英文を口に出して読んでみる――「暗唱」なんて非・生産的、と、長らく毛嫌ってきた自分ではあったが、シャドーイングのできなささを実感した今なら、その有用性も身にしみる。確かに、多読も含め“英語らしさ”は、多く触れることでしか身につかないのだと思う。
▼もっとも、「本気で使えば辞書はすり減る」とか、「覚えた単語帳は破って捨てる」とか、地道な作業がいつかは花開くのだ、と思えた半面、発音記号なんて見たところで(十分には)分からないし、実際にしゃべって、ネイティヴに直してもらった方が効率がいいんじゃないか、と感じた場面があったのも事実である。
▼そういった意味では、今やっている英語独習法が正しいのか――と真剣に悩んでいる人には本書を勧めるが、とりあえず「英語頑張ろう」くらいの気持ちの人には、もっととっつきやすい本を勧めたい。ただし、「日本語がまともにできないのに(日本人が)英語を習得できるようになるはずがない」という、筆者の言葉は、現代日本人への訓戒であるようにも思えてならない。