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第六大陸 1 (ハヤカワ文庫 JA)
第六大陸1
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書店員レビュー
この小説は、近未来の...
ジュンク堂書店三宮駅前店さん
この小説は、近未来の日本を舞台に、ある少女の依頼を受けて月に
「基地」を建設しようとする民間会社の奮闘を描いたものです。
また、この小説のポイントとして、現実の科学・法律・政治を
うまく小説内に取り込んでおり、それがストーリーに
「本当に実現しそう」と思わせる現実味を持たせています。
全二巻なので、SFに興味があって少し時間がある方は、
ぜひ読んでほしいと思う小説です。
コミック担当
紙の本
建設的
2003/12/03 22:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
連想したのは、やはりクラークの諸作品なのだけど(冒頭の潜水艦内でのトラブルで「渇きの砂」、作品全体からは「楽園の泉」)、たかが四半世紀くらいの時間で、こんなにいい方向に世の中全体が変わるかなあ、というのは、まず感じました。建築技術の発達により建物という建物が緑に覆われ、当然二酸化炭素の抑制はもちろん、ヒートアイランド現象も過去のものになっている。効率の良い太陽電池は普及し、砂漠の緑地化もかなり進んでいて、地球全体規模で人口の増大が原因となっている必要物資の需給関係からいえば、かなり改善されている時代。
まあ、「フロンティアの必要がない世界で、なぜ、少なからぬリスクを背負って宇宙へ行こうとするか?」というのが作品の大きな主題だから、あえてそういう設定にした、というのは解るんですが、選挙までが「地域の選挙区からではなく、ネット上のコミュニティから議員を選出する」みたいなシステムになっているのはちょっと疑問。政治的な機構は、ある意味でテクノロジーの進歩から一番取り残されがちだしな領域だしなぁ……。
そういうフロンティアの必要性がない世界だから、あえて膨大な資金を使って人類がわざわざ宇宙にでていく必要性というのは、ほとんどない。資源的には、宇宙に出てまで十手取ってこなくても、結構満ち足りているのである。だけど、そういう世界で、なんで人間が宇宙に出ていかなければないのか? というのがこの物語の重要なテーゼ。この辺のモチベーションは、ものすごく個人的な動機がでているのだが、小説としてもかなりの読みどころとなっているので、これで正解でしょう。こんな、リスクのあるお仕事、こういう動機というか強迫観念をもったお金持ちしかできませんし。
そして、実際に施工に当たる建設会社の視線から、月にある大規模な施設を作る話し流れも、大きな位置をしめる。このあたりは、「プロジェクトX」的なノリを思い浮かべていただければ、大きな相違はないかと。月の地質学的なデータからはじき出した、人間にとっては過酷すぎる環境、大きすぎる運送コストの削減、資材や原料の調達方法(打ち上げるのか、現地の物を使用するのか?)、法的な問題などなど、数々の困難を一つ一つクリアしていく様子が、非現実的な奇跡とかはほとんど抜きにして、かなり地に足がついた感じ描かれます。
余談ですが、作中で提示されたデブリの処理方法は、かなり妥当というか現実味のある掃除法だと思います。
酩酊亭亭主
紙の本
私が子供の頃にこんな本に会えたら良かった
2003/08/12 20:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:小笠原功雄 - この投稿者のレビュー一覧を見る
あの月に宇宙基地を作る。この一大プロジェクトに、小説の登場人物達と共に興奮し、涙しながら読み進んでいる。今の少年少女達にこそ読んでもらい、宇宙と科学への夢を育んでもらいたいのは当然だが、日々の生活に追われ、月や星を見上げることさえ忘れがちな私達のような大人が読んで、もう一度、夜空を見上げ、宇宙に想いをはせてほしい。
紙の本
「……わたし、特別な女の子ですから」
2003/07/11 12:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:成瀬 洋一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大雑把な話になるのだけれど、初期のSFで未知の宇宙へ飛び出していったのは、カーティス・ニュートンやリチャード・シートンのような冒険者の心を持った科学者たちでした。宇宙へ行くのは科学の力なのだとみんなが思っていたのです。
やがて現実の宇宙開発が始まると、SFにおいても宇宙開発は国家の事業となりました。宇宙へ行くのは国家の力、組織の力だと現実が教えてくれたのです。少なくとも天才科学者が個人で新たにロケットを建造して…という話はほとんど見なくなりました。そして人類が宇宙を飛び回るのが(あるいは飛び回っていたのが)当たり前の世界が多かったんじゃないでしょうか。少なくとも現実の宇宙開発の面白さに虚構の物語が太刀打ちするのは苦しかったと思います。
でも最近になって、宇宙開発を物語の主軸にした作品が目につくようになりました。佐藤大輔の『遙かなる星』だとか、コミックだけれど太田垣康男の『MOONLIGHT MILE』や幸村誠『プラネテス』とか、数は多くないけれど面白い作品が多いのです。そしてそうした作品で活躍するのは、軍人や科学者ではなく、ゼネコンであり現場作業員なんですね。考えるのは科学者かもしれない、最前線を走るのは軍人かもしれない。しかし実際に宇宙を創っていくのは現場の人間なんだという認識が見えてくるのです。
この話もそうした雰囲気が根底にある作品です。
主人公の青峰走也は、深海からヒマラヤまでどんなところにでも建設してしまうという日本の大手建設会社の若手社員。その会社が新規に受注した仕事は、月面に大型施設を建設するというもの。青峰はスポンサーの孫娘である桃園寺妙と共に現地調査に向かいますが、月面はいまだ民間人が何かやれるという場所ではありません。中国が国家をあげて、やっと3人規模の基地を維持しているという有様。果たして事業計画通り、期間10年、予算1500億円で50人規模の恒久施設は完成するのだろうか…という話。
物語の流れは2つ。1つは青峰らが、いかに必要な技術を確保し、予算の範囲で建設を進めていくのかというもの。いわばプロジェクトX的な宇宙土木建設の部分ですね。そしてもう1つが、もう一方の主人公である少女・妙の謎をめぐるもの。彼女はこの作品にSFの息吹を注ぎ込む人物です。計画の実質的な立案者である彼女が、月面に何を造りたいのか、何のために造りたいのかが、大きな鍵となりそうです。
個人的には、初期から現在までの「宇宙をめざす」SFの総括的な雰囲気を持った作品になるのではないかと思います。8月には2巻が出て完結予定とも聞いていますが、今から楽しみです。
紙の本
プロジェクトのはじまり
2003/07/21 18:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あさり - この投稿者のレビュー一覧を見る
10年で月に滞在型基地を1500億(円?)で建設する。
こんなプロジェクトが始まった。施主は桃園寺グループのエデン・レジャー・エンターテインメント社会長…と、というか本当はその孫の「一生のお願い」が発端。
このプロジェクトに、「子供みたいな連中」の御鳥羽総合建設と天竜ギャラクシートランス社が参加することになる。
物語の舞台は2025年で、色んな問題はある程度解消されていて、技術もさらに進んでいることになっている。とはいえ、まだまだ宇宙は遠い存在のようである。それは距離としてもそうだが、金銭面が最も遠くさせている要因のようだ。
しかし、このプロジェクトは、人を送り込むだけでなく、建設物を作らなければならない。そのための物資も送る必要がある。そのうえ、この建設物がまるで地球上に作る一流ホテルかのような条件をつけられているのだ!
この1巻では、事前準備から資機材搬入・造成まで。
限られた予算、厳しい現実、知恵と工夫が常に要求される各場面を、臨場感のある文章でつづられている。
まあかなり設定にご都合主義の感があるようだが、それも仕方ないという気にさせられるのは、やはり目的が月面基地建設ということのせいだろうか。
紙の本
月面開発の超ハードSF
2005/09/23 22:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルの、第六大陸とは月のことです。
月面開発の超ハードSFです。
面白いというか、着眼点のしっかりしている所は、
この開発を請け負う業社が、
御鳥羽総建と、いうのですが、
高い山の山頂や、海底で、施工に実績がある会社
なのです。
つまり、超低温や、超低圧条件、または
超高圧条件下での、過酷な自然条件での実績のある、
総合建築会社なのです。
で、その技術を応用して、もっとも過酷な自然環境
(自然環境といえるか、どうか疑問のあるところで
ですが、、、)
の月面での開発を、行うと、いったところです。
途中で、既に月面にたどり着いて、長期月面滞在をしている
中国チームに、その実情を聞いたり、
最も強敵のNASAが、乗り出してきたりします。
そして、企業訴訟まで起こったりするのですが、
これは、月面開発というものを、
民間企業が、リアルに行うと、どうなるか、
と、いうものを、きっちり書き上げてやると、言う著者の
決意表明みたいなものと、私は受け取りました。
紙の本
やっと来た、新宇宙時代
2003/07/11 13:33
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:san - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近の日本の若手SF作家に、リアルな宇宙への旅立ち・宇宙開発を書ける作家が
増えてきている。笹本祐一の「星のパイロット」シリーズしかり、本作も同様の
流れと言って良いのではないだろうか。
ジュブナイルSFとして、ハイラインやアジモフ、クラークがデビュー当時に書いて
きた、今は懐かしい初期のSFの、あのなんとなく照れくさいばかりの明るさと
将来への希望がこんなところに、また花を付けたのかと。
#「宇宙島へ行く少年」や「宇宙船ガリレオ」…涙がでそう。
日本のSFといえば小松左京氏に代表されるように、純文学崩れの精神性を追いかけ
るものが多かったし、その精神的な部分を物語る事が日本のSFの特徴とまで云
われていた時期もあった。
他の作家の作品の多くも、欧米のプロットを借り、精神性や物語性を拡張した
作品や「神」といった精神性の概念にもぐっていく作家が非常に多かったよう
に感じられる。
また、この世代の“いにしえの親爺族”が書いた宇宙開発系のSFも、どこか
リアリティや面白みに欠ける物が多かったと思う。
#さようなら、「さよならジュピター」という感じ。
その超親爺族の影から、多分、米のゴールデン世代と同様の、底抜けに明るく、
馬鹿みたいに真正直に宇宙を見た、まさにジュブナイルなSFが出てきたという感じ
です。
本当に小学生から高校生に向けて、これだぁ!というSFです。さらに元気の無くなったSF好きな親爺族にもお勧めの1冊です。
紙の本
内容紹介
2003/07/03 12:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
次世代型作家のリアル・フィクション
建設地は月、予算1500億
民間企業による月面基地開発プロジェクト始動
西暦2025年。サハラ、南極、ヒマラヤ・・極限環境下での建設事業で、類例のない実績を誇る後鳥羽総合建設は、新たな計画を受注した。依頼主は巨大レジャー企業会長・桃園寺閃之助、工期は10年、予算1500億、そして建設地は月。機動建設部の青峰は、桃園寺の孫娘・妙を伴い、月面の中国基地へ現場調査に赴く。だが彼が目にしたのは、想像を絶する苛酷な環境だった・・民間企業による月面開発計画「第六大陸」全2巻着工!
小川一水
1975年岐阜県生まれ。1993年、中篇「リトルスター」が集英社ジャンプノベル小説・ノンフィクション大賞佳作に入賞してデビュー。1996年、同賞大賞受賞作『まずは一報ポプラパレスより』で単行本デビュー(河出智紀名義)。以後、『こちら郵政省特配課』『群青神殿』『導きの星』など、丹念な取材に裏付けられた斬新なテーマのジュヴナイルSFで好評を博している。宇宙作家クラブ会員。ホームページは、小川遊水池。