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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2003.8
- 出版社: 文芸春秋
- サイズ:20cm/154p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-16-359700-X
紙の本
神々の食
食べ物を作る仕事は、本当は、神様の仕事に近いのかも知れない−。沖縄に移住した著者が訪ね歩いた食の現場から、食の伝統を支える人々と南国ならではの味覚の数々を豊富な写真入りで...
神々の食
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商品説明
食べ物を作る仕事は、本当は、神様の仕事に近いのかも知れない−。沖縄に移住した著者が訪ね歩いた食の現場から、食の伝統を支える人々と南国ならではの味覚の数々を豊富な写真入りで紹介する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
池沢 夏樹
- 略歴
- 〈池沢夏樹〉1945年北海道生まれ。「スティル・ライフ」で中央公論新人賞・第98回芥川賞受賞、「マシアス・ギリの失脚」で谷崎潤一郎賞受賞、「花を運ぶ妹」で毎日出版文化賞受賞。
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紙の本
本を作るって難しい
2003/08/25 15:07
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投稿者:1969 - この投稿者のレビュー一覧を見る
雑誌の連載が書籍化される。
毎月毎月楽しみに読んできた記事が一冊の本になるのは嬉しいものだ。
まとめて一気に読めるし、保存形態として雑誌より本のほうが断然安定感がある。また、活字も読み易いし、本になった触感を楽しむ人もいるだろう。あるいは、改稿、追加原稿が入ったり、変化を楽しむこともまた面白い。
しかし、連載作品を本にするのは、そんなに簡単なことではない。むしろ難しいし、編集者の技量とセンスが一番試されるのもこのケースだ。
つまり、作家が執筆に至った経過を知り、作家の書籍化に対する意欲や熱意を汲み取り、用紙・装丁・文字組み・レアウトを考えて、どのジャンルで販売ルートに乗せるか、を考えていかなければならない。
最も大切なのは、連載時の作品が放っていた輝きを損なわないこと。あるいは、連載時からの読者の期待を裏切らないこと。「書籍化は、連載時の作品とは全く別物」と考える著者もいるが、そういう考え方は本来有り得ない。既にその作品には読者がいるのだから。
はっきりいうと本書は連載当時のものが良かった。期待していただけにがっかりした。
JAT(日本トランスオーシャン航空)の機内誌「コーラルウェイ」(「サンゴの道」という意味)は、沖縄県民もこよなく愛する空飛ぶ雑誌だ。JATの航路は主に沖縄の本島・離島間を結ぶものだから長くて1時間。水平飛行時間も10〜30分だから機内誌を読んでいる間もなく目的地に到着してしまう。おまけに機外のきれいな海に眼を奪われている時間も多い。それでも、この雑誌が多くのファンを持つのは、記事内容が優れているのもさることながら、テキスト自体が機内で読む質量としてちょうど良いからだろう。気楽に、楽しく、ためになり、且つ量も適当。池澤自身も当然このことを意識していると思うし、連載ごとに現地取材を行って思い入れはかなりあるが、けっして内容は「重くない」。
本書の編集者は、当然このことを知りながら、「文芸書」として本書を発刊してしまった。池澤は小説家である訳だし、販売ルートに乗せるにも書店の棚に陳列するのにも文芸書のジャンルと考えるのは当然である。しかし、手にとってみてまず違和感がある。版型は文芸書王道の四六版、上製本より軽いイメージのあるフランス装にした意図は、作品内容がコラム・エッセイであり「柔らかい読物」としての印象を与えるためだろう。でもわざわざそうするくらいなら、思い切って文芸書の道を捨て、もう少し大型の版型で本書を編めなかったかのか?
この連載の読みどころは池澤の文章であるが、垂水健吾の素晴らしい写真にもあった。原色のあでやかな食材と、それを作る生産者の誇らしげな姿が印象的な写真をもっと活かす版型にするべきだろう。おまけに、マット系の用紙を使っているために発色が悪いし、写真の大半が死んでしまっている。一部連載時の写真とは別のものに差し替えられているものもあったが、連載時の写真の方が断然インパクトがあった。
「諸般の事情により」というところだろうが、どうも発想が単純すぎる感がある。読者にどう読んで欲しいのかがまるで見えてこない。素材を活かす努力をする余地はあっただろうに。連載が素晴らしかっただけに残念でならない。