このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
著者紹介
恩田 陸
- 略歴
- 〈恩田陸〉1964年宮城県生まれ。早稲田大学卒業。著書に「六番目の小夜子」「ロミオとロミオは永遠に」「ねじの回転」など。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
川のほとりにあるものは
2003/10/03 20:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐倉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
秘密を守護する少女
秘密を忘却した少女
秘密を共有する少女
秘密を覗き見る少女
ただひとつの事実に対して、それぞれの真実がある
死とはその真実を深い海に沈めるということ
失われたおおきなものと残されたそれぞれの真実
一巻(一部)ごとに語り手の成長ステージが上がるポイントで、次の語り手に話が引き継がれていく構成
物語の佳境と見事にマッチしているのはさすがです
ひとが死んで謎がある
その謎に対して、登場人物はそれぞれ秘密を抱えています
謎解きとあやうく不安定な少女少年たち
恩田陸さんが好んで使われるお得意の設定
懐かしいような身近なような儚い世界へ誘ってくれます
真実はどこにあるのでしょう
それぞれの生命の中に無数にあるのです
紙の本
余韻の残る物語
2003/08/28 20:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エルフ - この投稿者のレビュー一覧を見る
あれだけ各章で余韻を残し惹き付けておいてラストはどうするのだろう?と少々不安もあったのですが文句ない最終章です。
二部の終わりの香澄の突然の死により物語の語り部は「真魚子」に代わります。
そして舞台は揃い、香澄の母の死の真相、暁臣の姉の死の真相が語られる事に・・・。
真魚子が加わることで物語に心の内部、憎しみ・嫉妬・愛情・憧憬など二部までにない深さが出てきます。
恩田さんの作品は文章を読んでいると川の流れる音や木漏れ日、少女達の風景などが驚く程鮮やかに浮かんできます。何となくこの「蛇行する川のほとり」と共に私の一夏も終わった感じ・・・。
恩田さんの作品で言えば「木曜組曲」と「ネバーランド」を合わせたような雰囲気。
紙の本
コスト・パファーマンスと言う点では、確実に★五つなんだけれどね、ちょっと真魚子の巻き込まれ方が、毅然としていないって言うか、で★4つ。え、何故かって?読めばわかります、はい
2003/11/02 19:53
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハンズ・ミケのDPTと、中央公論新社デザイン室の装幀がなんとも美しい、恩田陸の、小型で価格が破壊的にお手ごろな書き下ろしシリーズの最終巻。カボチャ色のカバーがとても上品で、前にも書いたけれど三冊並べたときの姿の美しいことといったら、まさに香澄、芳野、真魚子。
『上と外』のときとは違って、予定通りの時期に出版、読者を一安心させてくれた。ま、無いものねだりで言えば、『上と外』が、結局は予定内の分量で収まらないという、読む側にとっては本と付き合う時間が長くなるという幸せな結果に終わったのに反して、こちらの第三巻は、意外とあっさり。シリーズの中では最も薄い。とはいえ、それが内容の薄さにならないところが恩田陸。うーむ、もっと読みたい!
で、このシリーズは各巻で語り手が交代するけれど、今回の語り手は、今まで殆ど登場しなかった真魚子である。夏休み、香澄の家で、秋の学園祭の舞台背景造りに没頭する高校のカリスマ的美少女・香澄と芳野。彼女たちの取り巻きのような美少年の暁臣と月彦。そして何故か、自分が憧れてはいたものの付き合うことの無かった少女たちに家に誘われ、舞い上がる毬子。
少女たちに唆されるようにして毬子が作業場に呼ぶことにしたのが、彼女の友人で、香澄たちと全く別のグループに属する怜悧な美少女・真魚子である。彼女は毬子の誘いの電話に、いかにも冷静に対応し、逆に相手のことを心配するのだが。そして香澄の家では二人の少女を巻き込んだ事件が。
いやあ、こうしてみると何だか美少女、美少年ばかりで秘密の花園というか、変態的というか、やっぱり隠微。最近の女子高校生はミニはいてチャラチャラという印象だけれど、香澄の周囲だけは全く違う世界で、しかも根底に性的な匂いが幽かにではあるけれど流れてはいる。でも、私の予想に反してそれが表に出てくることは無い。
そう、これは昔、母親を何者かの手で殺された香澄の家に集う十代の若者が巻き込まれた、新たな死を巡る話である。新たな悲劇の後で、毬子に代わる形で悲劇の家に入った真魚子は、疑惑を抱きながら、吉野に暁臣に、そして月彦に惹きつけられていく。蛇行する川のほとりで起きた昔の死。真相が、この巻で明かされる。
この本、たとえばこのままの版形で、合本にして1000円くらいで再出版したらどうだろう。合本にして豪華本という手があるけれど、このブックデザインは、この大きさにこそ相応しい。しかも、一気に読みたい。この本のウリは、優れたデザインと、内容、そして値段の抜群のバランス。文庫に移行する前に、なんとか価格破壊的な合本を出して欲しいものだ。
いかにも恩田陸らしい作品として歓迎されること請け合いである。
紙の本
叙情的で、せつなく
2003/09/06 22:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:papanda - この投稿者のレビュー一覧を見る
叙情的で、せつなく、登場人物の主観的な記述をもとに物語は進んで行く。けれど、一歩離れた視点を感じるのは、語り手が変わるごとに物語が現す側面も変わり、その落差に物語の醍醐味を味わえる。そんな、作者の巧みな罠が張り巡らされているから。交代する語り手によって事件について、人間関係についての謎が明らかになって行く。それが恩田陸が得意とする一つの物語の紡ぎ方だと思うのだか、この物語は語り手によって、物語が見せる側面が変わるといった落差を楽しむよりは、叙情的でせつない、去り行く二度と戻れない時期を愛おしむ物語だ。