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サントリー宣伝部に所属し、直木賞を受賞した山口 瞳と芥川賞を受賞した開高 健の二人によるサントリー社史なのですが・・・とにかく面白い!しょうもない小説より面白い!
創業者・鳥居信治郎と二代目・佐治敬三にまつわる様々なエピソード
を散りばめつつ、サントリーの歴史が綴られているのですが、抜け目なく目端が利き、突拍子もない様でいて合理的な発想、勘定高いかと思えば情に厚い。世間の企業イメージとは裏腹に、そこにあるのは何とも泥臭くも人間味溢れたナニワの商人(あきんど)の姿そのものです。
『やってみなはれ、やってみなわからしまへん』
その信治郎の口癖だったと云う言葉は、不思議なパワーがあるように
思えてなりません。
「そんなんしたって、たかが結果は知れてるし。」今まで何もしないうちから、そう勝手に決め付けていたことが何と多かった事でしょう。けれど・・・そうや、やってみな判らへん。どない転ぶか、そんなん誰にも判らへん。
・・・本を閉じた後、そんな思いがじんわりと胸に込み上げてくる、
そんな一冊です。
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サントリーの創業者鳥居信治郎と創業時の寿屋時代の社風について、山口瞳と開高健がそれぞれ書いたもの。このエッセイが書かれたのはおよそ30年前なのだが、その当時書かれた会社の勢いが、今なお継続していることがすごいと思う。サントリーの強みは、単なる企業としてではなく、文化・芸術の発信者としてのポジションも確立しているという相乗効果によるところが大きいと感じた。
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開高健と山口瞳。サントリー社員によるサントリー社史。
大会社としか思っていませんでしたが、こんなにも商人根性あふるる熱い企業だったのですねー。
たくさんの歴史や愛を感じて、ウィスキーが美味しく思え・・・ましたが、飲んでみるとやっぱり無理でした(笑)
プライドを捨てても向上・前進のためにがむしゃらに取り組む姿勢など、営業として学ぶべきところも多かったです。
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古き佳き日本の会社の時代。某広告会社や某石油会社もだが、大会社でありながら非上場を選んだ会社には、独特の熱さと自由闊達な空気がある。
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サントリーの創業者鳥居信治郎と二代目佐治敬三の伝記のような話。サントリー社史と言ってもいいものだから、会社とそのトップを褒めあげている。宣伝部の破茶滅茶ぶりには驚いた。でも会社の勃興なんて運も関係あると感じた。2019.8.13
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『最強のふたり』(北康利著)を読んで、作家であり社員であった山口瞳、開高健から見たサントリーという会社はどうだったのかと読んでみた。
70年社史として直木賞、芥川賞作家が執筆しているところがなんとも贅沢。山口瞳は戦前パート、開高は戦後パートを分担しているが、相前後するなど多少被る部分もある。
北康利が社外の第三者として書いたのと違って、現場の当事者二人が記すだけあって会話が臨場感溢れるのが特徴か。社長(鳥井信治郎)と大番頭(竹田耕三)との会話も活き活きとしている;
「大将、これからの時勢で役立つのは人だっせ。ええ人残そうやおまへんか」
「作田はん、そら、違いまっせ。人もそやけど、やっぱり、物だっせ」
「これ買い占めまひょ。いまやったら安いし、必ず値あがりしよりま」
「そんな阿呆なこと考えなはんな。金儲けの方法はなんぼでもあるけど、そんなことで儲けたかて仕様おまへんで」
先代鳥井信治郎から佐治敬三へ至る「やってみなはれ」に集約される挑戦の歴史、個人的なエピソードは、北本に述べられていることと大差ない。内容よりむしろ、北本で引用されていた開高の文章が、社史という体裁を採ったときどのようになるのか興味があった。どんな気の利いた言い回し、表現を駆使するのだろうかと。
盟友佐治敬三が若かりし頃親父の戦後の変わり身の早さ(軍にべったりだったのを、終戦後すぐGHQへウィスキーを売り込む大転換)に疑問を憶え、悩み、自分なりの解決を見出す様子の描写が見事だ。
部屋に寝ころび畳をむしりながら敬三はあれこれ思案する。親父のとった行動に納得がいかずモヤモヤする思いがこの”畳をむしる”という行為によく表れている。やがて考えがまとまると、「佐治敬三は畳をむしることをやめた。」とくくる。
敬三本人から聞いた話なのかもしれないが、さもありな。明瞭簡潔で分かりやすい上に印象的だ。こういう文章が開高らしいのだろうな。
あるいは、親子とウィスキーの関係を表現した文章も良い。
「ウィスキーはソロ(独奏)ではない。三年のモルト、五年のモルト、七年のモルト、たくさんのモルトを調合してつくりだされるものである。(中略)つまり、オーケストラであり、シンフォニーである。ウィスキーもコニャックも、その香りと味はシンフォニーである。あの襞。含み。内奥への深さ。しかも表層にひらいて踊る軽快な華麗さ。こうした多層的な性格はシンフォニーにのそれである。このとき密室で孤独にタクトをふって総指揮をするのが「ブレンダー」(調合者)である。(中略)鳥井信治郎は、いわば日本のウィスキーのフルトベングラーであった。佐治敬三は、いま、カラヤンである。」
ちょっと綺麗にまとまりすぎているけどね。
綺麗すぎるのでビロウな話も。鳥井信治郎の逸話の中で、
「ええ匂いいうもんは、やっぱりウンコの匂いが入ってんとあかんのや」
と主張する話が面白い(山口も開高どちらも触れているエピソードだ)。
これは自分のことだが、常々、”美味しいラーメンのスープの��こうには便所の匂いがする”と家人に語っているのだが、一向に理解されない。自分ではそれを”サンポール臭”と呼んでいるが、この匂いのするラーメンに不味いものはない。 当代一のブレンダーとして稀代の鼻の持ち主だったという鳥井信治郎のこのウンコへのコダワリは読んでいて嬉しくなった。
上記は山口の引用、開高はこう書く。
「みんなウンコや。誰も知らんけどな。ウンコでっせ。世間がイヤがったりかくしたがったりしてる物のなかにほんまにええ物がありまんのや。それを生かさんならん。ウンコですわ。」
いやー、すごい(笑)
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★★★2019年5月★★★
山口瞳と開高健による『サントリー社史』。
まず、この2人がサントリーに所属していた事を知らなかった。明治時代の寿屋創業時代から、昭和のビール市場参入までの社史を書けば、自然と内容は鳥居信治郎と佐治敬三の伝記になる。
鳥居信治郎。大阪商品を地で行く男。
こうと決めたら絶対にあきらめない執念の持ち主。名より実をとる事を徹底。怒りもまた凄まじかった。一方で弱者への労りの心も人一倍持っていた。
大会社の創業者らしい、エネルギーにあふれる人物だった。
佐治敬三。戦前から戦後にかけての父・信治郎の変わり身の早さに呆れつつも、事業を受け継ぐ。
サントリー美術館など、新しい取り組みをどんどん開始。その最たるものがビール市場への参入。
酒屋でサントリーを飲んでいる人に会えば、最敬礼でお礼をするような人物。
サントリーという会社は、決して現状に満足せず常に新しい挑戦を続けていく社風があるのだろう。
それはいい面でもある。しかし・・・・
ビール市場参入の過程で、武蔵野ビール工場建設で死者(過労死)が出たことを悲痛でもなさそうに、あたかも武勇のように書かれていた箇所にはぞっとした。(P277~278*山崎裕三氏)
このような負の面もあるが
「初心を忘れず」
という気概を持って、変化を恐れず頑張ろう!
そう思える一冊だった。
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サントリーのウイスキー工場に行った際に買ってみた。普段ガブガブ飲んでるウイスキー。こんなに手間暇どころか年月かかってるなんて知らなかった。今後はもっと味わって飲みます。それにサントリーが日本初のウイスキーを作ったこと、尊敬する開高健の苦労を知れて、仕事もやる気になったのでした。
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どれだけ本気で、不屈になれるのかということがその人間一生の仕事の価値を決めてしまう。本気で、不屈というものが何に対してなのか。そのプリンシプルな部分を定めることが大切。
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これは面白い!久々に本読んで笑ったわ。・・・しかも面白いだけでなく、生きるヒントが書いてあると思う。:
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サントリーの社史を,元社員の作家,開高健と山口瞳が書いたもの.
開髙には開髙の,山口には山口の語り口があり,味がある.
そして,これまたもとサントリー社員で,今でもアンクルとリスでおなじみの柳原良平の挿絵がいい.サントリーが良い会社であるということを存分に描けている.
サントリーという会社文化が持っている「やってみなはれ みとくんなはれ」という精神は,これまたこうやって受け継がれていくのだろうと,感心して仕方がない.
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1969年(昭和44年)、サントリーの70周年を期に発行された社史中に収載されたもの。山口瞳が「青雲の志について−小説・鳥井信治郎−」を開高健が「やってみなはれ−サントリーの七十年・戦後篇」を書いている。開高健、山口瞳がサントリーの宣伝部に籍を置いていたこと、現役の社員だった頃に、開高が芥川賞を、山口が直木賞を受賞したのは知られた話である。その二人が社史を書くというのだから、随分と贅沢な社史もあったものだと思う。かつ、二人がサントリーという会社のユニークさを本当に愛していたのだ、ということが伝わってくる、形ばかりのものではない内容の社史になっている。
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ヤンチャでハチャメチャで自由闊達で人間臭いオモロイ会社。開高健 昭和36年作。「人間」らしくやりたいナトリスを飲んで「人間」らしくやりたいナ「人間」なんだからナなんかいいんだ。今は世の中きぜわしくて窮屈で閉塞的で無機質でなんか失ってるもの多いでしょ。だからかな。「人間」らしくやりたいんだよね。もっと。ほんとは。
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サントリー社員だった芥川賞・直木賞作家による、サントリーの社史。社史だから内輪を褒めてるだけなんだけど、そこは作家の力によって、全くいやらしさ無く書かれている。
戦前・戦後にかけてのアツい商人魂。日本人が忘れかけているものが、ここにはあるかも。
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元々サントリー贔屓です。 NHKの朝ドラ「マッサン」を見て、堤真一のやってる鳥井信治郎さんに興味を持ちこの本を手に取りました。 著者お二方とも独特の語り口で読み易く、楽しく、一気によみました。 お二人とも作家でありながら、サントリーの社員を貫き通したとのこと。 それらエピソードを交えサントリーの特異性を愛情を込めて紹介しています。 この本を読んだおかげで、サントリーのウイスキーもビールもこれから益々おいしく飲めます。 サントリー贔屓の方はもちろん、そうでない方もオススメします。