紙の本
ゆっくり積もるように
2005/02/03 19:52
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクヤマメグミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
7つの物語が収められた短編集。
ここ最近一気読みが多かった私だが、本書はそれが勿体無くて「一日一篇」と決めて読んだ。
それぞれの物語に優しさが潜んでいる。
物語の終盤でそれに気付き、ハッとさせられるのだ。
思いもよらない気遣いに泣けてしまったり、小さな優しさが傷ついた心を慰めたりする。その意外性が、より深い感動に変わるのだと思う。
表題作「余寒の雪」は主人公・知佐の心の動きが手に取るように分かる秀作。
少ないページ数で、ここまで細かく気持ちを語ることが出来るなんて著者に脱帽する。
女であることを悔やみ、かたくなに強さを求めていた知佐が江戸で生活するうちに本当の強さに気付いていく。
自分の中にちゃんと女が存在することを認めていくのだ。
ラストシーンが大好きだ。
紙の本
「余寒の雪」いちばん好きです。
2018/10/31 09:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:satonoaki - この投稿者のレビュー一覧を見る
宇江佐作品はほとんど読みましたし、繰り返し読んだ作品も多々ありますが、いちばん好きなのは、この本の最後に収められている「余寒の雪」です。知佐が俵四郎と幸せであるように…と、何度読んでも心温かい余韻を感じます。
松之丞は、ぎこちない二人を繋ぐ良い役目を果たしたと思います。
紙の本
完璧、宇江佐さん
2017/06/16 21:55
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題「余寒の雪」がことの外良かった。仙台育ち、男勝りで女剣士。彼女は一人の「侍」として人生を全うしたいと思っていた。が、まわりは放っておかない。年頃になれば縁談が舞い込む。その度にのらりくらりと躱してきたが、今回ばかりはちょっと趣きが違った。叔父夫妻に誘われ江戸まで行ってみましょう。から始まったのだから。まさか江戸で祝言が待っているともつゆ知らず、訪れてみたら、は!うそ!子持ち侍の後添い??さて、そこからどうなるか。少々軽く書いてはいるけれど、ラストシーンの情景、心情全てとても美しい。宇江佐さん、完璧。
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んーーー。んーーーー。私としては、宇江佐先生の良さがあまり出ていなかった気がする。実際の文献を題材にした短編小説が7編。物語の中で時代の説明が入るのだが、その説明の入り方がイマイチな気がする。最後の「余寒の雪」はとても良かった。宇江佐先生はこのように人情にぐぐっと迫った物語を書くのはとてもお上手だと思う。特に男と女の微妙な心模様を書くのがお上手で、ほろっとさせられる。
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短編集。
話のひとつひとつに江戸の息づかいが感じられました。
ただ、時代の生活感を表す描写を描かんとするあまり、主体が飛びすぎて
登場人物に脈絡のない感がありました。
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短編集。
平成7年にデビュー後、3年間連載したという初期のもの。
作者の地元・函館に近い松前藩の記録を元にしたものなど、かっちり描かれています。
松前藩は日本最北の藩だそう。
松前藩に忠誠を誓うアイヌ12人の「夷酋列像」という絵があり、見事な絵だが、実像とは違うという説もあり、いつか取り上げたいと思っていたとのこと。「蝦夷松前藩異聞」という作品にまとめた。
「藤尾の局」は商家の後妻になって、なさぬ仲の息子達の狼藉に悩まされる女性。
末娘がなぜ怒らないのかと話を聞くと、大奥奉公で苦労した経験があり、それに比べれば大したことはないから、と。その時一度だけやり返したが、実は後悔が残ったのだという。
妹に話を聞いた息子達は‥
表題作の雪は、富士山の雪。
男装で、剣の腕を磨いてきた娘・知佐。
剣の指導者としてお城に上がる夢を抱いていたが、なかなかそれは難しいこと。心配した両親や伯父が一計を案じ、縁談をまとめてしまう。
江戸見物に同行したら、明日は祝言と言われるのだ。
相手は一回り年上で、3年前に妻を亡くし、幼い子がある鶴見俵四郎。
驚愕して断る娘に、相手方もそれは無理があると同意、帰る算段がつくまで逗留するようにと言ってくれる。
俵四郎は仕事で帰りが遅く、約束した手合わせも出来ないまま日が過ぎる。
寂しげにしている子供・松之丞と遊んでやって懐かれて、男親ともいつしか惹かれ合うように。
落ちつく所は見えるが、心地良く引っ張っていってくれます。
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初期の頃の作品だそうな。全く違った主人公からなる7つの作品で、芸者あがりの大店の内儀、青春の熱に浮かれた若者などいろいろあったが、市井の物語が個人的に好きだ。
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江戸のさまざまな人々を描いた短編集。元遊女の内儀、若旦那、お庭番、元大奥老女、家老女剣士など、読んでいてじんわりしてスッキリするようなそれぞれの生き様が楽しめた。まだ宇江佐さんの初期の頃の作風を感じるけれど、やっぱり読んでいて心にグッとくる。
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時代モノ短編集。
人情話だけでなく、方向性が多岐にわたっております。
とくに史実をモチーフにした2編が、なかなか良かったです。
「時代小説」というフィールドで、いろんな試みをされておられますね。
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2011.12.22読了
短編集。
個人的に気に入ったのは、
藤尾の局
かかさまがカッコよすぎ!
憧れるわ、大人の女の人…。
あとは、心が温まるお話、
余寒の雪。
これまたカッコ良い主人公の女剣士が、お嫁に行くまでのお話。
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L
紫陽花)元振袖新造が大店のお内儀となり、昔の同僚を見送る話。
あさきゆめみし)
藤尾の局)
梅匂う)
出奔)
蝦夷松前藩異聞)
余寒の雪)
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中山義秀文学賞受賞の短編時代小説。解説にいう「追っかけもの」と史実を土台にした武家もの、そして表題作の、少しテーマが混在した短編集といえるか。その中でも、表題作の「余寒の雪」が特に、作者の持ち味が出ている作品か。女剣士として身を立てる夢を見ている主人公が、行く末を心配した両親の思惑(町方役人に嫁がせる)に抵抗しながら、相手の幼子との交情から、大人の女へと成長し、味のあるエンディングへと収斂してゆく。ほろっとし、そして心が温かくなる。
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しっとりした美しい作品が多く、ほろりとしました。
女性たちが、身の振りを自分で選べないながらも、芯を持ってうまくその場に収まっていく強さ、しなやかさが感じられました。
「紫陽花」と「余寒の雪」が好きです。
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時代小説短編集。
特に巻末に収録の表題作は、東北の藩から江戸にやってきた
剣を生きがいに生きてきた女性の顛末譚で、現代の趣味に生き過ぎて、年齢の通過儀礼に出遅れた現代女性の戸惑いにも通じるような心境が描かれていて、このような女性視点での時代小説の作品作りが巧みだと感じる。
作者初期の頃の作品ということもあって、少し情感描写が硬い部分もあるように感じるが、それでも、いち読者としては、函館出身の作者がここまで時代小説モノを描けるというのは素直に感心しながら読んだ。
簡素でじっとりした語り口じゃないのも、この作者のいいところ。
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【本の内容】
男髷を結い、女剣士として身を立てることを夢見る知佐。
行く末を心配した両親が強引に子持ちの町方役人と祝言を挙げさせようとするが―。
幼子とのぎこちない交流を通じ次第に大人の女へと成長する主人公を描いた表題作他、市井の人びとの姿を細やかに写し取る六篇。
中山義秀文学賞受賞の傑作時代小説集。
[ 目次 ]
[ POP ]
浅草や両国を舞台にした、江戸の人々のあたたかさを描いた人情話の短編集。
精一杯に生きて、恋をして、人に対する思いやりを忘れない、人生に真摯に取り組む主人公たちの姿を想像するだけで幸せな気持ちに満たされる。
主人公たちの職業も小間物屋、両替商、染物屋、遊女屋などすぐにイメージできる定番のもので、感情移入しやすい。
必ずハッピーエンドになるのも、読後感が良くて好感が持てます。
中でも私のお気に入りは「あさきゆめみし」。
女浄瑠璃、京駒の追っかけをしている染物屋の正太郎は仲間からも軽んじられている情けない男。
しかし、その友達に京駒を盗られ、持参金のためだけに正太郎の姉と祝言をあげるということを聞き、とうとう堪忍袋の緒が切れた!
正太郎が段々と成長してゆく姿が微笑ましい。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]