紙の本
目を擦る女は○○○の夢を見るか
2004/08/30 23:42
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投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作を描いた恐いカバーイラストの絵に喩えて言えば、目ん玉がぐるりと廻って、裏側にある世界を垣間見せてくれるような……そんな味わいのあるSF短編集である。軽いタッチの作品からハードなものまで、ヴァラエティに富んだ短篇が7つ。「仮想現実」をテーマに、「伸身の新月面」のようなひねりを効かせた短篇がいくつもあって、かなり楽しめた。
マイ・フェイバリット短篇ベスト3は、「目を擦る女」「未公開実験」「予め決定されている明日」。
「目を擦る女」——どっちが現実でどっちが夢なのか、だんだん分からなくなってくる不気味な話の展開に、ぞくぞくさせられた。
「未公開実験」——話が噛み合わない登場人物たちのコミカルな会話がおかしかった。
「予め決定されている明日」——そろばんの計算があることを決めているという話の設定が面白かったのと、幻想領域にのめり込んでいくエピローグの恐さ。そして最後に置かれたこの短篇と冒頭の「目を擦る女」がどこかで繋がっているような、作品配置の妙も感じた。
小林泰三(Kobayashi Yasumi)さんの作品では、『玩具修理者』収録の「酔歩する男」にやられた印象が強烈なんだけれど、この作品集の特に表題作「目を擦る女」のインパクトもかなりのもの。著者の新刊『ネフィリム 超吸血幻想譚』を読むのが楽しみになってきた。
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投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「全てはのび太君の夢だった」
どれくらい前のことか忘れたが、アニメ『ドラえもん』の
最終話が話題になったことがある。
のび太の夢説は、そのとき巷では大いに噂になった。
『目を擦る女』は、ミステリーでもホラーでもSFでもない、
不思議な感覚の短編集だ。
恐いかと言えば恐くない、笑えるかと言えば笑えない、それでは、
つまらないのかと言えば全くそんなことはない。
作者、小林泰三(こばやし やすみ)が描く独特のワールドが
展開されている。
例えるなら、自分が夢と気付いていない夢を見ている感覚だ。
表題の「目を擦る女」では、今この世界にいる自分は夢の中の自分で、
現実の自分は別の世界で眠っている最中だ、という女が登場する。
そして、現実の自分が置かれた状況は過酷だから、目を覚ましたくない、
と、窓に板を打ち付けた部屋で物音も立てずにひっそり暮らしている。
この話、傍から見れば単なる頭のおかしい女の話なのだが、
読み進むうちに読んでいる自分の頭がこんがらがってくる。
今、この瞬間が夢の世界ではないと、誰が証明できるだろうか。
他にも、天才探偵の話、地球のような地球ではない惑星の話、
タイムマシーンを開発した男の話、蚊に恋した男の話など、
映画『マトリックス』にも通じる、ありえないといえなくもない物語が
これでもかっ、と手薬煉を引いて待ち構えている。
のび太は「ドラえもん」の夢を見ていた。
この説は後にデマだという話になった。
ということは、のび太は現実に「ドラえもん」と冒険を
重ねていたことになる。
雑事に追われ、何というわけでもなく日々思い悩む
私やあなたの生活が、描かれたシナリオだとしたら
脚本家はどこの誰か、考えてみるのも暇つぶしにはいい。
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短編集なので、作品ごとにコメントしようかと思ったけど、敢えてまとめる。
理由は一つの作品にコメントすることよりも、この本全体について語る方が有益に思えるから。
なぜなら、全体的に醸し出す雰囲気こそが小林泰三であり、一つ一つの作品はどれもイマイチ。
期待してたんだけど少々残念だ。
収録作品は以下の通り。
◇「目を擦る女」
◇「超限探偵Σ」
◇「脳喰い」
◇「空からの風が止む時」
◇「刻印」
◇「未公開実験」
◇「予め予定されている明日」
個人的には「未公開実験」と「予め予定されてる明日」が良かったが、締めが弱い。
その作品も独創的な世界観は圧巻だが、それを伝えるに文章が弱い。
ドコまで現実世界とダブらせて読むべきなのか、それが非常に曖昧になっている。
ま、そこが面白さであり、常識を覆すのではなく、常識を歪めて見せる本作の面白さなのかも知れない。
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短編7作すべてにはずれがまったくなく、すべてが最高に面白い。
『目を擦る女』
ある女性が、引っ越してきた隣に住む女に、「この世界は自分が見ている夢だから、自分が目覚めると消えてしまう。現実の世界は酷い有様になっている。」とおかしなことを言われ、現実と夢との区別がつかなくなっていく。
女が現と夢の両方の世界に対して、感想を述べるような場面があるのだが、両方に共通した評価がひとつだけあった。これに気づいた瞬間、物凄く怖くなった。
『超限探偵Σ』
探偵の友人の視点で描かれるミステリー。
そして、読み終わるとこの話がミステリーではなかったことに気づく。
そんなのありか?とも思える話を非常に面白く描いてあってすばらしいと思った。
『脳喰い』
エイリアンとの接触を描いたSF。
最強のエイリアンに立ち向かう主人公たちの結末は、《心底恐ろしいと感じるハッピーエンド》
『空からの風が止む時』
前半が重力が減少し始めた土地でのファンタジー。
そして、後半はSFなのだが、このファンタジーとSFとの繋がりが非常に興味深く、よく考えられていた。
『刻印』
地球にやってきた体長2メートルの蚊型エイリアン(雌)と人間の男との純愛小説。
結末にはSFらしさが見られるが、これはあくまで純愛小説だと思う。
『未公開実験』
タイムトラベルを実現した男が友人に、〈ターイムマスィ〜ン〉を発案したことを理解させようとして、ある悲劇に見舞われてしまうコメディ。
この作品の会話は非常に面白い。その笑えるSFコメディの結末は恐ろしかった。
『予め決定されている明日』
読むと、私たちが生活している世界が3次元であることの理由として考えられるひとつの仮定を見出すことができるのではないだろうか。
通常はコンピュータを使う必要のある演算を算盤を用いて計算させられる理由は何なのか、、、
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小林泰三が意外にSFだったのは発見。ただ落ちがみんな仮想現実・・・みたいな感じはどうか?
なんかちょっと雰囲気的にも古くさい。
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短編集。
といっても、小林泰三の作品のほとんどは短編にカテゴリ作品が属すけどね。
本作品には7つもの短編が収録されていて、そのそれぞれの作品にただただ魅了された。
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どれもこれも、小林泰三色が濃く出てて、ファンとしては美味しい一冊。
あぁっ、もう大好きなんです。小林ワールド。
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ホラー短編集で七作収録。全体的に実はこの世界は外からシュミレートされていて…みたいな仮想現実オチが多くてちょっと、微妙…。「刻印」だけはもう素晴らしいですね。最初ギャグかと思ったけど。「脳喰い」のグロい描写は待ってましたって感じでしたw
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あまり好みではなかったです。。
でも「蚊」の話は、エビボクサーみたいな
オモシロ実写映画にして欲しいなと思いました☆
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「わたしが目を覚まさないように気をつけて」隣室に棲む土気色の肌の女は言った。指の付け根で目を擦りながら――この世界すべてを夢見ているという女の恐怖を描いた表題作、物理的に実行不可能な密室殺人を解明する驚天動地の推理劇「超限探偵?煤v、無数の算盤計算によって構築された仮想世界の陥そう「予め決定されている明日」ほか、冷徹な論理と呪われた奇想が時空間に仕掛ける邪悪な七つの罠。(裏表紙より)
宇宙船クラーク号乗組員・西山下腕彦はドッキングした有人基地A3の内部で頭部を切り離された五人の男女の死体を見つける。その中には喧嘩別れしたままの頭角河子がいたのだ。「脳食い」
空から吹く風の正体に興味を馳せていたオトは、計算の結果、自分の世界の重力が衰退していっていることに気付く。「空からの風が止む時」
日本にエイリアンが現れたというニュースを見た直後、トイレのドアを開けると、そこには等身大の蚊がいた。言葉の通じない“彼女”を蚊子と名付けてみたものの……。「刻印」
古くからの友人・丸鋸遁吉に呼び出され、向かった“わたし”と鰒(あわび)と碇の三人は、丸鋸に発明品を見せられる。その名もターイムマスィーーン。丸鋸は両手で奇妙なポーズをとった。「未公開実験」
・「目を擦る女」
夢と現実が混在する作品は多数見受けられるが、慄然と逆転させているのが新鮮だった。
・「超限探偵?煤v
内容的に前編後編に分かれている。核シェルターの事件で、〇オチを使っておいて、地中の棺の事件では〇想〇実とは。笑かしてくれる。
・「脳食い」
異形コレクション『夢魔』収録作。夢を食うのは獏だが、こちらは脳を食う猿と蛙の中間形である。『ソラリス』を彷彿とさせる、ただのファーストコンタクトあるいは宇宙パニックものではないところが憎いし、怖い。
・「空からの風が止む時」
本作では、浮いた感じのSF作品。ホラーではないが、あっさりとしたラストの反転に出る作者の人の悪さが胸に残る。
・「刻印」
個人的ベスト。
蚊=〇〇鬼のリンクは奇抜ではないが、映画『タイムマシン』の切なさを思わせる純愛が重なれば、仰天せざるを得ない。
・「未公開実験」
ネタは珍しくない。白眉はターイムマスィーーンに尽きる。わたしはポーズを(ry
・「予め決定されている明日」
算盤計算で構築された仮想世界て(笑)
なんとなく藤子不二雄の世界観を想起させた。しかし、ラストは(苦笑)
作者は天才。
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「邪悪な7つの罠」……とは言いえて妙。たしかに邪悪だ。
やはり表題作が印象深いな。非常に怖い一作。「目を擦る女」というタイトルだけで充分すぎるほどに怖い。そして曖昧になる現実と非現実の狭間に漂う狂気にぞくぞくさせられる。
一方で「刻印」も印象深かったけれど、こちらには爆笑。いや、だってこれは……ねえ? でもこのオチには「なるほど!」と妙に感心してしまった。そうかそういうことだったのか(笑)。
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SFとホラーとが絶妙に融合した短篇集。大半が〇〇ネタではあるものの、それぞれを異なった手法で料理してみせるのはさすが。次から次へと登場するアレなキャラクターたちのイカレっぷりも愉しい。
お気に入りは表題作、「未公開実験」「予め決定された明日」かな。
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似たようなネタでありながらも、多種多様なキチガイ味付けにより楽しく読めてしまう。よくこんなのをアンソロにだしたな、と感動すら覚える「刻印」が一番好き。蚊カワイ…いややっぱ可愛くない。
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ひんまがったSF小説。
今回は日常の中の非日常じゃなくて、そもそも非日常が前提の世界で起こる非条理の物語。
「未公開実験」はもはやコメディだわ。
タイムマシィーーーンには笑った!んで、次の一節「どうでもいいけど、仮想世界ネタばっかりだと、そのうちに飽きられるぞ」…自嘲かよ!
でも「予め決定されている明日」の結末が悲惨すぎて、寒気した。
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仮想現実オチがおおくて、”そんなん。。。何だってこじつけられちゃうじゃん。。。”と少し引いてしまいました。刻印と空からの風が止む時は面白かったです。