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商品説明
進化論の登場によって、人文・社会科学も大変革を迫られた。「種の起原」以来1世紀半、そのインパクトはなお今日まで及んでいる。初期の論争から現代に至るまで、ダーウィニズムの軌跡を検証する。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
ダーウィニズムと人文・社会科学 | 阪上孝 著 | 3-45 |
---|---|---|
ダーウィンを消した女 | 北垣徹 著 | 46-88 |
カプセルのなかの科学 | 小林博行 著 | 89-126 |
著者紹介
阪上 孝
- 略歴
- 〈阪上孝〉1939年神戸市生まれ。京都大学大学院経済学研究科修士課程修了。中部大学中部高等学術研究所教授・京都大学名誉教授。社会思想史専攻。著書に「フランス社会主義」などがある。
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紙の本
〈黒船〉がやってきた!——覗き穴から見たダーウィニズムの上陸
2003/11/11 20:45
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投稿者:三中信宏 - この投稿者のレビュー一覧を見る
チャールズ・ダーウィンに発する進化思想は自然科学のみならず,周辺の人文・社会科学にもさまざまな光と影を残してきた.「人文・社会科学にとってダーウィニズムとは何だったのか」を問うことは,今後の両者のあり方への示唆を得る上で興味深い.本論文集は京都大学人文科学研究所における共同研究を踏まえて出版された報告書で,650ページを越える大部の本だが,進化学と人文系諸学問との関係について考察できる場を久しぶりに与えてくれるものと期待された.
第I部ではダーウィニズムの伝播の過程で生じた科学史的エピソードが取り上げられる.進化学が周辺諸科学に及ぼしてきた影響の浸透度は学問分野によって異なり,またその受容に際してはさまざまな理論的・概念的な変容が伴っていたことがわかる.第II部では,進化思想を一般社会のあり方に反映させようとしたいくつかの試みが科学史的に回顧される.ダーウィニズムが上陸した国ごとにみられる特徴ある受容は印象的だ.第III部は,多くの社会問題を派生した優生学と優生運動を思想的に支えたバックボーンを検証する.第IV部は,進化思想のもたらす現代的諸問題を論じる.
個々の章には十分なページが割かれており,情報量も多く,教えられる箇所が多々あった(人名索引だけでなく事項索引もほしかった).しかし,全体としての出来がイマイチであると言わざるをえないのは,多くの章が個々の研究テーマを掘り下げることに終始していて,グローバルな視点が根本的に欠如しているからだと思われる.編者は「ダーウィニズムと社会という問題はけっして過ぎ去った歴史ではなく,現代の問題なのである」(p.iv)と言う.にもかかわらず,本書全体を通読したとき,ダーウィニズムの現代的問題への接続を意識させるものがあまりにも希薄であることに驚かされる.現代へのつながりが強調されていたならば,きっと本書を手にする読者層の幅がもっと広がっただけでなく,最後まで読んでみようとする意欲が持続したのではないかと思う.
(三中信宏/農業環境技術研究所主任研究官)
【目次】
はしがき i
ダーウィニズムと人文・社会科学(阪上孝)3
I 概念と論争
ダーウィンを消した女 ——クレマンス・ロワイエと仏訳『種の起源』(北垣透) 46
カプセルのなかの科学 ——スペンサー=ヴァイスマン論争(小林博行) 89
「変質」と「解体」 ——精神医学と進化論(大東祥孝) 127
親族研究に置ける進化概念の受容 ——進化から変容へ(田中雅一) 159
II 進化論から見た社会
闘争する社会 ——ルドヴィク・ダンプロヴィチの社会学大系(小山哲) 192
『動物社会』と進化論 ——アルフレッド・エスピナスをめぐって(白鳥義彦) 237
加藤弘之の進化学事始(武田時昌) 265
群体としての社会 ——丘浅次郎における「社会」の発見をめぐって(上野成利) 318
個体としての生物、個体としての社会——石川千代松における進化と人間社会(斎藤光)360
III 人種と優生学
人口とその徴候 ——優生学批判のために(宇城輝人)410
アメリカ人類学に見る進化論と人種(竹沢泰子) 452
人種主義と優生学 ——進化の科学と人間の「改造」(アメリカの場合)(小林清一) 490
IV ダーウィニズムの現在
「ダーウィン革命」とは何であったか(横山輝雄) 534
必然としての「進化の操作」——現代社会における人と自然の行方を考える (加藤和人)559
進化経済学の現在(八木紀一郎) 588
ダーウィニズムの展開 関連年表 631
人名索引 [650-640]
執筆者一覧 652