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商品説明
これぞ妖怪。私は誰。此処は何処。小僧は彷徨う。小僧は進む。そして小僧、少し立ち止まりますな…。妖怪狂言。『週刊現代』連載に加筆・訂正して単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
京極 夏彦
- 略歴
- 〈京極夏彦〉1963年北海道生まれ。94年「姑獲鳥の夏」でデビュー。「魍魎の匣」で日本推理作家協会賞長編部門、「嗤う伊右衛門」で泉鏡花文学賞、「覘き小平次」で山本周五郎賞を受賞。
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紙の本
妖怪教養小説
2004/02/07 00:17
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アキノ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『妖怪馬鹿』で京極夏彦が取り上げるまで、豆腐小僧なんていう妖怪はまったく知らなかった。見るとただ豆腐を持っているだけの小僧である。怖くない。間抜けには見えても、もうぜんっぜんというほど怖くない。この怖くない妖怪に京極夏彦が注目する理由がぼくにはさっぱりわからなかった。
豆腐小僧が主役として登場する本書でも、その怖くなさと間抜けさはきわだっている。その間抜けで怖くない妖怪豆腐小僧が旅をするうち妖怪としての自分を発見するのが本書である。だから、まさに教養小説であるわけなのだけど、話はそれだけにとどまらず豆腐小僧が出会う鳴屋(やなり)や死に神などの妖怪というものの構造と成り立ちを明らかにしていく。つまり、妖怪というものがどのように成立し、どんな意味をもってきたのかもあわせて知ることができるようになっている。妖怪についての「教養」も同時に身に付くようになっているのだ。
さて、これだけでもさすが京極夏彦らしい小説というところなのだが、話はそれだけでは終わらない。実はそうした妖怪についての知識を知れば知るほど、豆腐小僧の不自然さ、不思議さがきわだってくるという構造になっている。先に進めば進むほど、むしろ謎は深まっていくのだ(もっとも豆腐小僧自身はバカで間抜けな鳥頭の持ち主なので、そのへんのところはあまり頓着しないのだけど)。そして、肝心の豆腐小僧の意味も意義もいっこうにわからないまま、それまで出てきた妖怪総出演、百鬼夜行の様相を呈してくるクライマックスを迎えるのだが——その阿鼻叫喚とドタバタの中、豆腐小僧はまるで頓悟するかのように、突如として己を知る(もちろんそうなるにはちゃんとワケがある)。そして同時に、読者は妖怪というものの成り立ちや構造を語ってきたのが、ただ単に作者の趣味だけではないことに気がつくことになる。さすが京極夏彦、無駄はないのだ。馬鹿で間抜けな豆腐小僧が見事に己の本分を果たすこのラストは見事見事。
紙の本
京極夏彦って、こんな語りが出来たんだ!読みながら顔の筋肉が緩みっぱなし、本当はこっちで直木賞を取っ手欲しかったな、遅ればせながら祝直木賞受賞!
2004/02/06 21:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ま、名は体を表すって考えれば、このちょっと大き目の豆腐のような大きさの変形本のデザインと言うのは、圧倒的ではある。ともかく小さいながらも、書店で平積みになったときの存在感が違うのだ。もちろん、宮部みゆき『ぼんくら』を髣髴とさせるような頭でっかちの臍だし小僧の姿も愛らしい。それにしても、こいつ、何で臍だけならともかく、するめみたいなものを口から出して、手にお盆なんぞを麗々しく捧げ持っているのだろう。
とまあ、カバー一つでここまで感心させれば、つかみは完全にオッケーってやつだろうね、夏彦くん。で、その装画を描いたのが石黒亜矢子、装丁が坂野公一(welle design)。ついでに触れておけば、見返しと巻頭頁を利用したカラー図版が、その色合いのビミョーさも含めて上手いし、まして目次のデザイン、頁の振り方なんざぁ、脱帽ものである。
しかもだ、この主人公?である豆腐小僧がいいのである。いやいや、出てくる妖怪、全てが愛らしい。しかも彼らが交す会話の奥の深いこと。それが、小難しい文章にならないところも、まさに京極屋!である。いやあ、直木賞はこっちでとって欲しかったぞ、と言いたくなるのだ。そうすれば、日本の文学史に新しい幕開けが、そう登場人物の会話で言えば「夜明けは近かった」はずなのである(書いてて、混乱してきたぞ)。
で、やはり、この本は京極堂の軽妙洒脱な語りを楽しみながら、物事の本質に触れていくという極めて高尚なユーモア哲学小説?ではないかと思うのだが、それはこういった文章を読んで貰えば分るだろう。
「しかし、小僧が小僧を産むと云うのもどうかと思いますし、小僧のメスと云うのもこれまたどうかと思います。つまりは豆腐小僧と云うのは種ではなく固体としての特性なのか と、小僧は頭を悩めるのでございます。
頭を悩めたところで、豆腐を持っております手前、その頭を抱える訳にも参りません。片手で持っても良さそうなものではございますけれど、そこはそれ、もしものことを考えますと、少々怖いのでございます。
こう頑なですと、例えば鼻の頭が痒くなったりしたらいったいどうするのだろうと、要らぬ心配もしてしまいますな。」
これである。この名調子が延々と繰り返されるのだが、これが全くダレないのである。凡百の学者先生方には是非襟を正して見習ってほしいくらいのものだが、もう少し紹介しておこう。
「「いいか、俺はな、家がぎいぎい鳴るてェ現象そのものなんだよ。家がぎいぎいガタガタ鳴るのはいつだって俺の所為だ。つまり俺は、家鳴り現象の説明としてこの世に居るんだ。だから鳴家なんて名前なんだよ。けどよ、お前は何の説明もしてねェだろ」
「してません」
「お前が体言していることと云やァ」
鳴家は十個の目玉でじろじろと小僧を見回しますな。」」
「「そこでな、山猫妖怪は、分割してだな」
「民営化ですか」
「違うよ。なんだその妙な合いの手は。あのな、山猫の性質の一部は川獺や河童に割り振られてたんだな。そしてやな猫を表す狸という文字のほうは 貉に割り当てられたのだ、そもそも山野におって化けるものだから、町や家におる猫には割り当てられなかった」」
いやあ、もう読んでいてニコニコしっぱなしである。これが全11章。その一「豆腐小僧、情事を目撃する」から、その五「豆腐小僧、禅問答をする」、その七「豆腐小僧、江戸を出る」を経て、その十「豆腐小僧、義憤に駆られる」ことから、その十一「豆腐小僧、人間を懲らしめる」に至るまで、650頁も読むことができるのである。これを至福と云わずして何とする、である。
いやあ、完全脱帽の一冊でありました。紙の柔らかさも、自然に頁が開く感じで手に優しくて、見事ですぞ。ちなみにこの本を読み始めた長女は、通っている中学で「キャー、こんな本書いて、私、京極さんと結婚したい!」と叫んだそうな。
紙の本
これぞ和製ファンタジー
2004/01/10 20:46
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:元インド - この投稿者のレビュー一覧を見る
さて、物語の主人公といえば、ましてやファンタジーともなると、自分で運命を切り開き、あれよあれよと、まぁ難解な事件を解決していくのが相場でありますが、何にも増してこの主人公、いかんせん自分と言うものがありません。
まぁ、妖怪なんですから「そんなものあるかい」と言われればそれまでなんでございますが、次から次へと、なんともまぁ、厄介ごとに巻き込まれるわけでございます。
しかも、どうにも首を突っ込むワリに、なにがどうのと理解しているわけではございませんから、ただ、闇雲にドタバタする限りでございます。それが滑稽さを嫌でも増しているわけです。
これはファンタジーでありますが、なにしろ、そんな主人公でありますから、笑いが絶えません。読む場所に注意しないと、とんでもない場所で笑い出してしまいます。笑い上戸は気をつけたほうがよろしいかと存じます。
さて、私はこの作者の作品をはじめて読みました。「何を今更!」とお思いでしょうが、私はどちらかというと外国文学っていうか、まぁファンタジー、児童書を主に読むもので、なかなか手に取ることは無いんでございます。
しかし、これは傑作でした。海外のファンタジーにも負けてやしません。難しい言い回しもありますが、基本的に非常に読みやすく、あっという間に読み終えてしまいました。
何しろ語り口調が面白いのでございます。登場人物も、まぁ妖怪でありますから、変な連中ばかり。それにも増して主人公である豆腐小僧はマヌケで滑稽で、ちょっと愛らしくもあるのですが…。
とにかく、とことん面白い。それでいて、自分発見、なるテーマらしきものもある。これを傑作といわずしてなんといいましょう。
惜しむらくは、全員プレゼントの冊子をもらうためには本を切り取れ!という横暴な方法が提示されているところでしょうか? ここに作家の意思が入っているとは思えないので評価は落としませんが、さすがに絶句いたしました。
せめて、そのぐらいコピー可でもいいでしょうに。本を切り取る、とはいったいどういうことか、もう少し考えて欲しかったように思います。
紙の本
ほのぼの
2016/05/31 00:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:師走 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まさかこんなにかわいいものが出てくるなんて・・・・・・
この著者にびっくりです。
(でも分厚いのは変わらない♪
豆腐小僧はもちろん、滑稽達磨、家鳴、袖引き、姐さん、もうみんなかわいい・・・・・・
そのくせ豆腐小僧は意外にもサラブレッド(笑
のんびりでやさしくて間抜けなあの子が、最後まとめた!ってびっくり。
(成長、するのか!