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  • カテゴリ:一般
  • 発売日:2004/01/01
  • 出版社: 集英社
  • サイズ:20cm/124p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-08-774683-6

紙の本

蛇にピアス

著者 金原 ひとみ (著)

【芥川賞(130(2003下半期))】【すばる文学賞(第27回)】ピアスの拡張にハマっていたギャル系コンパニオンのルイは、「スプリットタン」という2つに分かれた舌を持つ男...

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蛇にピアス

税込 1,320 12pt

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商品説明

【芥川賞(130(2003下半期))】【すばる文学賞(第27回)】ピアスの拡張にハマっていたギャル系コンパニオンのルイは、「スプリットタン」という2つに分かれた舌を持つ男、アマと出会う。やがてアマが行方不明となり、死体で発見される。第27回すばる文学賞受賞作。【「TRC MARC」の商品解説】

著者紹介

金原 ひとみ

略歴
〈金原ひとみ〉1983年生まれ。東京都出身。

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みんなの評価3.2

評価内訳

紙の本

やはり芥川賞受賞作だ

2004/03/08 14:41

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:としりん - この投稿者のレビュー一覧を見る

 不思議な小説である。蛇舌、舌ピアス、刺青、セックス、暴力、SM…。
 思わず眉をひそめたくなりそうだ。しかし、読み進めていくと、なかなかどうして、面白い小説ではないか。
 私と著者とでは倍くらいの年齢差がある。性描写がややきつい点やオジサン世代には意味不明の語句があることなど、気になる点はある。
 しかし、読者を引きつけていく力、そして何とも言えない不思議で複雑な読後感を感じる。
 一読後、気に掛かるところがあり、読み返す…。また読み返す…。主人公の心情を推察する…。じっくり読むと味わい深いものがある。それが芥川賞として評価されたところなのだろう。
 実は、「よっちゃん」さんも書評で指摘されているが、文藝春秋3月特別号に掲載の「蛇にピアス」と、単行本の「蛇にピアス」とでは、エンディングなど内容がかなり異なっている。
 読み比べてみると、単行本のものがやや単調なのに対して、文藝春秋掲載のものは胸にずっしりと響いてくるものを感じるのだ。
 文藝春秋掲載「蛇にピアス」をお薦めしたい。

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紙の本

がんばれなどとは死んでも言えない

2004/03/07 20:46

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第130回芥川賞受賞作。ピアス、刺青、スプリットタンと、現代の若者風俗はかなり痛みの伴うものであるらしい。そういうものが生理的に合わない人がいるだろうから、この作品の賛否が分かれるのも仕方がない。特に冒頭の数行は表現がきつい。読了しても苦い(口腔の中にひろがる血の味のような)思いしか残らないかもしれない。でも、できれば、そんな人にこそもう一度読み直してもらいたい。風俗という衣装をまといながらも、この作品の根底にあるのが、あまりに古典的すぎるほどの純粋な愛の物語だということをわかってもらいたいから。二十歳の作者がそんな世界を描いたということが奇跡のような作品であるから。

 「きっと、私の未来にも、刺青にも、スプリットタンにも、意味なんてない」(80頁)

 芥川賞選考委員の一人宮本輝氏は、この作品の読後に残る何かとは<哀しみ>であると表現している。そして「作中の若者の世界が哀しいのではない。作品全体がある哀しみを抽象化している」と続けた。宮本氏がいう<哀しみ>は、青春期特有のどこにも行き場所のない感情の発露だ。もしかしたら、人生でたった一度だけ描ける宝石のしずくのようなものかもしれない。

 かつてドラッグとセックスに溺れる若者風俗を描いた『限りなく透明に近いブルー』で芥川賞の文学性を二分させた村上龍氏が、選考委員の一人として、この作品を絶賛したのも興味深い。村上氏はこの作品に反対意見が多いはずだと、事前に良い所を箇条書きにして選考会に臨んだほどの入れ込みようだったようだ(第83回の直木賞の時、選考委員の山口瞳氏が向田邦子の受賞に獅子奮闘したというエピソードを思い出した)。それほどまでに村上氏の心を揺さぶったのも、若さというものだけが持つ才能だろう。そんな村上氏がかつて自身の自選小説集の中でこんなことを書いている。「若い年下の世代には興味がない。常に無関心でいたい。悲惨な時期を生き延びようとしている人間に対しては、そっとしておくしかないのだ。言うべき言葉はない。がんばれなどとは死んでも言えない」(村上龍自選小説集1)

 村上氏が芥川賞の選考委員になって四年。初めて彼が認めた作品は、やはり彼のデビュー作のように賛否両論の渦中に巻き込まれている。しかし、それを跳ねのけていくのが作者だけであることを、村上氏自身が一番知っているはずだ。金原さんはまだ二十歳。悲惨であるその時期に、奇跡のような作品を書いた。作品を作者自身が乗り越えられるか、静かに見守ってあげたい。

 「がんばれなどとは死んでも言えない」(村上龍)

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紙の本

1時間半で読めました。

2004/10/27 01:52

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あいちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

『蛇にピアス』の前に同じ芥川賞を受賞した『蹴りたい背中』を読んだのですが、私はイマイチだなぁと感じたので、『蛇にピアス』に期待しようと思い、読んでみました。

感想としては、受賞した作品なだけあってか、引き込まれるのは事実ですが、中身はエロとグロって感じがしました。受賞作ってもっとすごいものかと思ってたぁっていうのが読み終わってすぐ思いました。

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紙の本

人は純愛から逃れたがるか

2004/08/08 12:18

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:祐樹一依 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 第130回芥川賞受賞作。しかし純文学賞の受賞作である、という先入観は禁物です。耳ピアス、脱色なんて当たり前、舌ピアスやタトゥーすらも当たり前の世界に生きる少女が主人公。スプリットタン…、つまり蛇のように先が割れた舌を持ちたい、という衝動が、「身体改造」を臨む語り手のルイを突き動かしていく…。可愛さに惹かれる男と、格好良さに憧れる男との三角関係までも繰り広げられて、精神的にも肉体的にもプラトニックな心情から離れよう離れようとしている作者の意図が窺えます。

 求める思いだけでなく、求められる思いまでもを描いたところがジレンマティックな要素を増すことに成功していますね。誰もが間違いなくアブノーマル、しかしその根底には真っ直ぐ過ぎるくらいに真っ直ぐな「想い」が秘められているのは明らかで…、しかし、本質的なところは、実はシンプルではないかと思います。冒頭1ページ目から読者を惹き込むのは、他者と同じであることを拒むが故に、己を表から「改造」してしまおうとする「普遍」から逃れようと願う思い(或いは欲求)。でもそれは、好意を向ける人がもたらした切っ掛けによる、「この人と同じでありたい」という思いが正体であるのではなかろうか、と僕は思うのです。

 そういう意味では、恋愛文学の新しい形だと言えなくもないと思うのですが、どうでしょうか。ただ惜しむらくは、ここまで徹底してダークネスな雰囲気を維持し続けていたのに、読後感は決して悪くないのです。いい意味で読者を突き放すのではと期待してしまいました。本書を誰かに読ませようとするときに心残りであるのは、ピアスとタトゥーの良き悪しを個々人がどう思うかを除けば、この点に尽きるように思います。

(初出:CANARYCAGE)

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紙の本

若い人たちの関係のあり方

2007/08/04 13:36

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:sanctusjanuaris - この投稿者のレビュー一覧を見る

この作品で注目すべき点は、ルイ、アマがお互いの本名をしらないで同棲していたことだ。ルイもアマもシバも、どのような生い立ちかなどのプロフィールはほとんどない。また、ルイやアマはそういったことを全く知ろうともしない。にじみ出る、間接提示される、他者の生き様・経験、それまでの人生。そういったものへの無頓着は若さゆえなのだろうか。私も以前そうだったが、今ではそうでなくなっている。あれは彼らなりの"プライベート"や"プライバシー"への配慮なのだろうか。若者の間の儀礼的無関心といったところか。

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紙の本

完成されてる

2004/06/23 15:35

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投稿者:ハチミツ - この投稿者のレビュー一覧を見る

すごく面白かった。
正直、あまり期待していなかったんだけど、のっけからその表現力にはうなった。著者本人が非常に興味を持ってる世界なのかもしれないけど、こういう世界をあまり知らない人間にも懇切わかりやすくそれでいてストーリーの邪魔にならない説明の仕方でうまくひきこんでいってくれる。
人間関係のあり方も非常に興味深くて、どうなるんだろうとドキドキハラハラしながら最後まで夢中で読みました。
ある意味、もう完成されている気がします。
他の作品も読もうと思える魅力ある作家さんだと思う。

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紙の本

すんげえ好き。大好き。すんげえ痛いけど。すんげえ気持ちがいい。これは私の世界だよ。

2004/01/28 22:40

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投稿者:アベイズミ - この投稿者のレビュー一覧を見る

連れ合いから携帯にメール「すんげえ好き。『蛇にピアス』電車で泣きそうになった。いけてもいけなくても。とにかく読んで。今日は余韻で仕事が出来ない」って。そうあった。

その夜、三時までかかって「蛇にピアス」を読み切った。眠かったけど、明日も早いんだけど、そんな事は本当にどうでもよくなって。最後までゼイゼイ言いながら読み切った。

私もこの本が、すんげえ好きになった。大好き。すんげえ痛いけど。すげえ気持ちがいい。

私にはこの世界がよく分かる。分かる。なんて言ったけど、ずうっと前ピアスを開けて、あっという間に塞げちゃった腰抜けの私。ピアスの拡張にも、身体改造にも、舌ピ(アス)にも、入れ墨にも、スブリットタンにも興味がない。っていうか、やってみたいなんてこれっぽっちも思わない私なのに。

私は「ルイ」って女の子が、とっても好きになった。「ルイ」はすごく素直。目の前にべろっと出された「スプリットタン」に本能のままに惹かれていく。「自分でも何でそんなに惹かれるのか興奮するのか分かんない」世界に、素直に踏み入っていく。きっと、そこに「スプリットタン」があったから。ってだけな所が好き。作者の「金原ひとみ」って子が、そこの所をとっても素直に書いてるんだと思う。「ルイ」のアタマで「ルイ」のまんまで書いてる。きっちり持った女の子として書いている。

彼女は美しい動物だ。「アマ」も「シバ」も、すんげえバカで可愛いくって、やっぱりただの美しい動物。私がなりたかったのって、これじゃなかった? だから、この本を前にすると、どうしようもなくメゲてもくる。私は年をとったのかもしれない。分別を知ったのかもしれない。バカなアタマで利口に立ち振る舞っているのかもしれない。

「私の血肉になれ。何もかも私になればいい。何もかもが私に溶ければいい」

「母性本能」や「愛情」が枯渇したような「ルイ」みたいな女の、底の底にある感情を突き付けられた時、私はひれ伏すしかない。低く低く頭を垂れて「負け」を認めるしかないってこと。

「今、この入れ墨には意味があると自負出来る。私自身が、命を持つために私の龍と麒麟に目を入れるんだ。そう、龍と麒麟と一緒に、私は命を持つ」

「ルイ」と「アマ」と「シバ」。その三人を想うとき、私はとても優しい目で眺めてることにも気付くんだ。俯瞰している。まるで「神の子」にでもなったみたいに、眺めてる。そのウロボロスの輪っこを、この手でそっと抱きしめてやりたいと思うんだ。

この輪っ子は、形を変えて続いていくかもしれない。「ルイ」が「アマ」になって、誰かの前でべろっと舌を出す日があるかもしれない。ないかもしれない。だけど、その後やそれからがどうでも良くなるぐらい。この物語は完結していて。本当の所もう、どうだっていい。この本があればいい。ただここにあればいい。この世界があればいい。そう思う。

みんなバカでみんないとしくてみんな好き。この世にバランスのとれた関係なんてありはしない。この世に生きやすい場所なんてありはしない。子供の笑い声や愛のセレナーデが届かない、そんな世界に届く光だってある。

この本を「いいから読んで」って言ってくれてありがとう。私が読み終わるまで、起きててくれてありがとう。泣いてるあたしの頭を撫でてくれて、ありがとう。一緒に泣いてくれて、ありがとう。ありがとう。ありがとう。

そして、何と言われようと、私はすげえよく分かるんだよ。

アナタがこの本を好きな事が。これはアタシの世界でもあるけれど、アナタの世界でもあるって事が。それがうれしくってうれしくってたまらない事が、アナタにも分かるといい。分かって下さい。それだけだよ。

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紙の本

たとえば「所有」への生理的嫌悪感のようなものだろうか。

2004/03/10 01:38

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投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る

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コレクション化に抗いながら、つまり何かをコレクションすることはどうやら自分がコレクション化されることなのではないかと、それがイヤだと思うから、コレクション化などせずに、しかし「言葉を投げる」ことは一つの楔のようにして自分自身の生活に何かを刻み付ける。つまり、投げたければ投げてしまえばいいのだ。傷つくのは自分でしかないのだから。そんなふうにして、でも時に、誰かを傷つけてしまうことがある。自分ではない誰かを。バルトは言う、「傷つけることのおぞましさは、失うことの苦悩よりもなおいっそう強い」。そんなふうにしてしか「つながり」を実感できないとするなら、そもそも「つながりなどないのだ」と言ってしまいたい気もしないではない。つまり今の世の中にあるコミュニケーションと呼ばれるものの大半は「傷つけることでつながりを確認する」という類のものでしかないようにも思える。そうでなければ「愚痴」か「陰口」の類。(もちろん、それだけではないことはわかっているような気もするけれど、それは<語りえぬもの>かもしれないじゃないか、なんて駄々をこねるように……言ってはいけないんだろうな、たぶん。これが今の僕の限界だ、どうやら。)

そうではないものを、ひとりの大人として、(僕は、たとえば)子どもたちのために、どうにかして、ひとつの(不完全でもいいけど、できるだけ完全に近い)モデルのようなものとして、提出してみたいとも思う。「社会」とは厳しいものなのだから、あえて厳しいことを言うのだなどと、自己正当化を図ろうとしているにすぎないことに無自覚な人間(社会をたとえば「戦争」に類するものの比喩で語りたがるような人間)が言う。バカだなあ、と思う。そして嫌な気持ちになる。バカなのは、つまり俺じゃないか、と。

愛の錯覚はある。甘やかな物語に絡めとられたような。習慣化の罠にはまってしまったとしか、後から振り返るなら、そうとしか思えないような。たとえそれがどれほど貴重な思い出であるにしても、そうして傷つけることなしには、「つながり」を感じられないことの、つまりは少々『蛇にピアス』じみた世界(あるいは岡崎京子さんの『ヘルタースケルター』のような)。傷つけるという行為が、どこに向っているか、というただそれだけの問題。過去に向うというのは今を傷つけたくないからであり、自分に向うのは他者を傷つけたくないからである、というだけの話。だからといって、他者を傷つけたくはないし、そもそも誰かを傷つけねばならないとすれば自分を傷つけるつもりでしかないのだが、できることならば、そんなヤワな自分は消えてなくなってしまえばいいと思う。(どうやら、あらゆる「所有」を徹底的に放棄したところで、「自分」が残ってしまうように思える。「こんなもん、いらん」と口で言うのは容易いが……)

でも、そうもいかない。だから、どうすればいいのか、と考える。生活する。考え中である。生活中である。そんな気分にさせてくれたのが、『蛇にピアス』なのかもしれないと思えば、ずしりとした重みをもって、読了後2週間ほどが過ぎて、どこか奥のほうに残っているなあと感じたりもしている。

ところで丹生谷貴志さんは、こんなふうなことを言っている。(唐突だが)

「一番重要なのは、(…何もやることがないという状態からの脱出を夢見ること乃至はやることがない状態に人間は耐えられないのだと信じ込んでどうにかしようとすること、ではなくて…)やることがないという状態を引きうけるとは何か、ということです」(『死者の挨拶で夜がはじまる』)

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紙の本

私にとってのニュージャンル

2004/03/08 15:03

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投稿者:遊子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

現代を象徴した小説ではないだろうか。
この小説の登場人物、ピアスに刺青、スプリットタン。
外見こそキテレツだけど、今の若者を具現化したような性格。
面倒くさい、キレやすい、希望的観測で行動する。
悩み、日々の辛さを自分のなかで対処できずに、具現化したがる。
もしくは、具現化しようと思わなくても体の異常という形で表に出る。
自分を制御できない。こんなことを言う私も若者の部類に入るので、
いささかイタイなあと思う。が、これが現代の若者なのだ。
しかし、それでも生きている。ボロボロになってしまった主人公だけど
最後彼女は生きることを選んだ。

正直読み始めたとき、言い切り調の文体が幼稚に思えた。
芥川賞の選考委員の方で、歯切れよい文体と称した方がいたが
私にはつたないように思えたのだ。けれども、読んでいくごとにどんどんと
物語の世界に引っ張られる。文体なんて途中から気にならない。
ラストも結局どうなのかはっきりしないところが、この小説を
生きさせたと思う。読後は不思議な哀しさに満ちている。
誰に対する悲しみなのか、主人公ルイになのか、はたまた彼女を
とりまく男たちになのか。それはわからない。

私が読んだ小説のなかで、ニュージャンルの小説だった。
未知の領域。怖いもの見たさで手にとってみたが、読んでみて
よかったと強く思う。

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紙の本

傷だらけの反社会

2004/02/28 23:02

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投稿者:perioclin21 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 先の不透明な現代社会において、人のもつ道徳、倫理、社会性に強く抵抗する意識が作者の文章やスト−リ−に感じられた。
 尋常でない現実、道徳の否定、倫理の拒否、反社会性を表現しているこの小説に我々読者は、否定と強い不快感を持つるだろう。しかしそれは現実に起こっているかもしれないものごとを直視し、その理由を考える機会でもある。
 反社会側のものは身も心もズタズタに傷ついている。そうして我々が否定する行為の中にさえ、純愛のような感情を垣間見れるように作者は書いている。そうして、作者はその尋常でない行為や純愛の理由、結末がどうして起こるのかを読者自身が考えられるようにスト−リ−をち密に組み立てている。それは小説を書く作者の技術ではなく生まれ持った才能から出て来たものだと思う。
傷だらけの反社会側からのメッセ−ジが今、現代社会に問われている。

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紙の本

アウトローの純愛

2004/02/22 18:45

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:はけの道 - この投稿者のレビュー一覧を見る

兎に角、十代の新進作家さんから珍しいスプリットタンやタトウ等の社会をかいま、見せて頂いた事に感謝したい。
普通の一般社会を拗ね、或いは追い出された一種のアウトローの者たちの社会。自分の身体を傷つけ、飾り、一般人には虚勢を張って生きている人たち。その中で咲いた純粋な「愛」。私はその純粋さに触れ、幾度か胸が熱くなった。セックス描写もいやらしくなく、食事とるのと同じ様に淡々と描かれている。日本古来からの「刺青」の光景もデザインの選び、発案、そして施術ワクワクするものであった。
恋をするにも、結婚するにも金、金かね…のいわゆる日の当たる現代の社会に本物の「愛」なんて、あるのだろうか? そしていのちを張ってする事ってあるのだろうか?

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紙の本

ピアス・タトゥーをしたことがない私には、刺激的な読み物だった。

2004/03/21 14:11

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投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る

 醒めた少女・ルイは蛇のように裂いた舌を持つ男・アマと知り合い、ピアスにはまり、タトゥーにも興味を抱いていく。ルイは子供のように加減を知らぬ熱い男と、アダルトムードなサディストのクールな男の両方から強く求愛されるが…。

 ルイがもててもてて困っちゃう、というお話。それぞれタイプの違う、可愛いオトコ・アマとカッコイイ男・シバさんの両方から特別なオンナとして求められるのだから、或る意味女の子の夢のような物語と言えよう。

 少女漫画でよくあるヒロインを中心とした三角関係に、ピアスやタトゥーなどヒップなエレメントで味付けをしたかのような印象だが、新しさがあるとすればルイのアンダーグラウンド指向だろうか。愛されるのには慣れているが、能動的に人を愛するのはどこか臆病で、ふてぶてしいのにナイーヴで、海千山千の強者なのに傷付きやすい純なところも持つ女の子。家族とは関係が希薄で、愛する男になら殺されちゃってもいいかなと思うけれど、強い希死念慮があるわけではない。そんなルイは、平凡に堕したくはないが天才ではありえないコンプレックスを抱え、現在を嫌悪しつつ未来に希望が持てないという我々の代表なのだ。闇に在りたい彼女の願いは私の願いでもあり、そこがたいへんに共感出来た。

 いまいちだと思ったところは、ルイの恋愛観。フィーリングさえあえば、すぐにセックスというのは物語ゆえか。それともこれが現代の若者の実情なのか。肉体関係は最後の最後、ゲームで言うならラスボスに位置する世代の私には、ルイの身軽さが理解出来なかった。最もわからないのは、同棲してセックスもする男と「付き合ってない」というルイ。それじゃあ何をもって「付き合ってる」ことになるのだろうか? 婚姻という紙切れ、それとも魂の問題?
 ルイと男たちとの濃厚なセックス描写よりも、ルイの内面の描写がもっと読みたかったな。
 大切なものは「青い鳥」みたいなものなんだとか、なくしてみなければありがたみがわからないとか、悲しくても人は生きていくのだなあとか考えさせられた。 

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紙の本

今という時代の一部分

2004/02/28 16:25

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投稿者:karasu - この投稿者のレビュー一覧を見る

 人は千差万別であるけれど、この作品は、今の時代の千差万別の一部分を切り取った作品だと思う。この作品で表現されている世界観が全てでは無いが、確かに今という時代が反映されている。
 スプリットタンや刺青という題材が突出してしまっているが、実は人の内面がメインであるように感じた。メインだと思うのだが、それが丁寧に描かれているかは微妙なところだと思う。明確に表現されている事が多く、明確すぎて、さらりと軽く流れて行ってしまうように感じたところもある。
 主人公ルイの根拠の無い自信や、居なくなってからはっきり気付いた同棲相手のアマへの思い。そんなルイを痛々しく思いながらも、最後までつらつらと読めてしまった。ラストは、突然終わってしまった感が残るが、次回作への期待を感じる作品だった。

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紙の本

飢えと抵抗。

2004/02/28 15:52

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:川内イオ - この投稿者のレビュー一覧を見る

刺青を入れた体を持つ友人がいる。
私はその刺青を見たとき、無性に寂しくなった。
それは、同じ地平に立っているのに違う風景を見ているような、
近くて遠い距離を感じたからだ。


『蛇にピアス』は、スプリットタンや刺青、
拡張ピアスで「武装」した、こっち側の論理でいう
「はぐれ者」達の青春が描かれた物語だ。

主人公の「私」は何かを拒絶するように
無気力に無感動に無目的に生きる。
そして、蛇の舌を持つ男に出会い、彼女の中に変化が起きる。
その何かに対抗する力を手に入れるために、
身体改造に惹かれていくのだ。

主人公が付き合う男は、闇雲な優しさと抱えきれない不安を
持て余す。そして、その因果から逃れるために、強者への
「変身」を望み、割いた舌と赤い髪で人工の異形の者と化す。

主人公に刺青を施す男は、「私」が恐れる何かへの抵抗に
絶望し、自分へ向かうはずの溢れるほどの殺意に倒錯した
官能を見出す。その官能は、男を新たな地平に導き出す。

『蛇にピアス』に漂うのは、「痛み」への飢えだ。
「痛み」を求めることで、彼らは「生」を実感する。
具体的な「痛み」は彼らの実存を証明するが、
当然のように一度味わった「痛み」は時を経て薄れ、
麻薬の禁断症状のように彼らは更なる刺激を求めて加速する。


舌を割き、刺青を背負う者とそうでない者の違いは何だろう。
私はきっと彼らはそうでない者より繊細で敏感なのだ、と思う。
どこかの少年が自らを「透明」だと表した。
彼らはその「透明」な自分と、それを促す既存の
システムや価値観に、無自覚に、無意識に抵抗しているのだ。

しかし、身体改造でいくら生を実感し、現実を拒否しても
当たり前だが、彼らを取り巻く環境は変わらない。
だから彼らは寄り添う。孤独を紛らわせ、自分の身を守るために。

私が感じた距離は、国家が異民族を隔離するために建設した
「分離壁」のようだ。「こっち側」の私と「あっち側」の彼を
鮮明に浮かび上がらせる。
それでは、私は「あっち側」で彼らと同じように
抵抗したかったのだろうか。

そうではないと思う。
私は、誰かに手を加えられた人工的な実存を信用しない。
私は、自分の手で自分の意志で、実存を獲得したい。

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紙の本

ピアスというより、刺青の話かな?

2004/02/17 10:37

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投稿者:レノン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 芥川賞を受賞した話題作の一つだ。受賞者の二人が女性で年齢が低いことから話題になったが、小説の内容も面白い。
 ただひとつ気になったのは、ある男性の舌(ピアス)に惹かれる話なのに、舌の魅力がいまいち伝わってこないことだ。後半では背中に刺青を入れるのだが、もうピアス(舌)のことはどうでもいいように感じてしまった。
 結局、ピアスや刺青というのは、生きにくい若者たちが行う一つの自傷行為であるのだろう。著者は、そのことを分かりやすく示している。そうした小説としては、とても興味深い内容だ。

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